【業務委託の責任範囲とは?】よくあるトラブルやその対策もご紹介!
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目次
はじめに
「業務委託で仕事を受けているけれど、責任の範囲が曖昧だと後々トラブルに発展しないか不安…」と感じたことはありませんか?
業務委託契約は、クライアントとの信頼関係の上に成り立っていますが、契約内容が不十分だと、後から「どこまで責任を負うべきか」といったトラブルが発生することもあり得ます。納期の遅れや成果物の修正など、思わぬ問題に巻き込まれることがあるでしょう。
本記事では、業務委託契約における責任範囲を明確にする方法や、よくあるトラブルの対策について解説します。責任の範囲についてしっかり理解した上で、トラブルを未然に防ぐためのポイントを押さえておきましょう。
業務委託契約とは
業務委託契約とは、特定の業務を依頼する側(発注者)と受ける側(受託者)との間で結ばれる契約で、成果物やサービスの提供に基づいて報酬が支払われる契約の形を指します。正社員のような雇用契約とは異なり、労働基準法の適用を受けません。
業務委託契約では、仕事の進め方や働く場所、時間については受託者に自由があり、クライアントの指揮命令を受けないことが原則です。この契約は、成果に対して報酬を受けるため、仕事の成果物が契約の中心となります。
業務委託契約には大きく分けて「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」の2つの種類があります。それぞれの契約形態において、受託者の義務や責任範囲が異なり、契約の性質に応じて適切な形を選ぶことが重要です。
次に、それぞれの契約の特徴について詳しく説明します。
業務委託契約の種類
業務委託契約は、大きく2種類に分類されます。それが「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」です。それぞれ、依頼する業務の性質や成果に応じて使い分けられます。
請負契約と委任契約(準委任契約)の義務の違い
「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」は、業務委託契約の2つの主な形態ですが、それぞれの性質や義務は大きく異なります。
請負契約では、受託者が一定の成果物を作り上げることを約束し、その成果に対して報酬が支払われる契約です。
成果物の完成が求められるため、結果に対して責任を負う必要があり、もし納品した成果物に欠陥があれば、修正や再納品などの対応が必要です。具体的にいうと、製品開発やウェブサイト制作などが請負契約に該当します。請負契約は、成果が確認されない限り報酬が支払われないのが特徴です。
一方、委任契約(準委任契約)では、受託者が一定の業務を遂行することが条件であり、結果よりも業務を遂行した事実に対して報酬が支払われる契約です。例えば、コンサルティングや弁護士の法律業務、経理の業務代行などが該当します。
成果物の納品が必須ではなく、業務を誠実に遂行すれば契約義務が果たされたとみなされるため、結果に対する保証はなく、業務自体が報酬対象となるのが特徴です。
責任範囲や内容を契約書で合意する
業務委託契約では、請負契約や委任契約(準委任契約)のどちらに該当するか、また、責任範囲や義務内容についても契約書で明確に合意することが求められます。
契約書には、業務の内容から報酬の支払い条件、納期、成果物の有無、トラブルが発生した場合の対応に至るまで、詳細に記載しておくことが基本です。特に、納品物の修正や再作成が必要な場合の条件や、業務の遂行状況をどのように評価するかといった点は事前に明確にしておくと、双方が安心できるでしょう。
また、責任の範囲も契約書で合意しておくことで、後々のトラブルを防げます。
例えば、請負契約では成果物の品質や納期に対して厳しい責任が発生しますが、委任契約では業務遂行自体が重視されるため、その違いを十分に理解し、契約書に反映させる必要があります。
つまり、契約書を通じて、双方が納得できる業務内容と責任範囲を明示することが、業務委託契約において重要です。
業務委託契約でよくあるトラブルとは?対策もご紹介
業務委託契約において、よく見られるトラブルには納期や修正対応、支払いに関する認識違いなどが挙げられます。こういったトラブルは、契約時に細部まで取り決めをしていないことが原因で発生しやすく、特にIT系の職業では複雑な業務内容やスケジュール管理の不備が大きなリスクとなります。
ここでは、IT系の具体例とともに、よくあるトラブルとその対策について詳しく説明します。
納期に関する認識違い
システム開発やウェブサイト制作のプロジェクトで、クライアントと受託者が納期の認識にズレが生じることはよく発生するトラブルです。
例えば、クライアントは「機能がすべて完成した状態」を納品と捉えているのに対し、受託者は「基本的な動作が可能なプロトタイプ」の段階で納品と考えるなど、認識の違いが原因でトラブルが発生します。
対策:発注ごとに発注書を作成する
納期トラブルを防ぐためには、毎回の発注時に発注書を作成し、業務の内容や具体的な納期を明記しておきましょう。
発注書には、プロジェクトの進行状況に応じた納品の段階を詳細に記載し、クライアントと受託者の間で納期に対する認識を揃えておくことで、後から「完成度」や「進行状況」に対する不満が出ないようにします。
双方が明確な納期目標を共有することで、納期に関する認識違いというトラブルを回避できます。
修正対応における責任の所在
ウェブアプリケーションやソフトウェアの開発プロジェクトでは、納品後にクライアントから追加の修正依頼が発生することがよくあります。
その際、どこまでが「契約内の修正」で、どこからが「追加料金が必要な修正」なのかが不明確だと、トラブルが起こりやすくなります。
対策:修正内容について事前に取り決めておく
修正対応における責任の所在を明確にするため、契約書に修正内容の範囲や回数、追加料金が発生する条件を明記しておくことが大切です。
例えば、「納品後の修正は3回まで無料」「大規模な仕様変更の場合は追加費用が発生する」といった具体的な取り決めをしておくと、予期しないトラブルを防げます。
また、クライアントと事前に修正範囲を話し合い、双方が納得した上で契約を結ぶことで、納品後のやり取りがスムーズになるでしょう。
支払い内容・方法に関する認識違い
フリーランスエンジニアやデザイナーがプロジェクトを進める中で、報酬の支払い時期や方法に関する認識が異なることで、支払いトラブルが発生することもあり得ます。
例えば、エンジニアは「案件完了後すぐに報酬が支払われる」と思っているのに対し、クライアントは「次の月末に一括支払い」と考えている場合などが挙げられます。
対策:下請法を遵守しつつ事前の明示を徹底する
支払い内容や方法についてのトラブルを防ぐために、契約書で報酬の額から支払い方法、支払い時期まで明確に定めておきましょう。
下請法の遵守も重要で、報酬は原則として成果物を受け取ってから60日以内に支払うことが義務付けられています。
支払い方法に関しても、振込手数料の負担者や支払いの段階(前払い、後払いなど)を契約時に明示することで、支払いに関する認識のズレを防げます。
委託先の契約不履行
システム開発プロジェクトで、受託者が約束通りに成果物を納品しない、納期に大幅に遅れるなどの「契約不履行」が発生する事態も考えられます。
クライアント側としては、依頼した業務が期待通りに進まないことで、事業運営に支障をきたす場合もあります。
対策:「4つの対処法」に則って対応する→追完による完全な履行の請求、強制履行、契約解除、損害賠償請求
契約不履行が発生した場合、クライアントは「追完による完全な履行の請求」「強制履行」「契約解除」「損害賠償請求」の4つの対処法を適用することが可能です。
まず、履行の請求を行い、それが不可能な場合は、強制的に履行を求めるか、契約を解除するという方法が取れます。
また、不履行によって損害が発生した場合は、損害賠償を請求することもできるため、契約書にその旨を明確に記載しておくとよいでしょう。
機密情報の漏えい
システム開発やウェブサービスの運営など、IT系のプロジェクトでは、クライアントの機密情報を扱う場面が多く存在します。
例えば、クライアントの顧客情報やビジネス戦略に関わるデータが外部に漏えいした場合、クライアント側に大きな被害が及ぶ可能性があります。
対策:情報の管理を徹底する
機密情報漏えいを防ぐためには、契約書で情報管理に関するルールを明確に定め、受託者に対してその遵守を義務付けることが必要です。
また、データ管理やアクセス制限、暗号化などのセキュリティ対策を強化し、外部に機密情報が漏れないような環境を整備します。
さらに、機密情報に触れる従業員や外部関係者にも適切なセキュリティ教育を行い、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
契約書締結時の注意ポイント
業務委託契約書を締結する際には、細部にわたって十分に注意しましょう。
特に、委託業務の内容や報酬、契約解除の条件などが不明瞭な場合、後々トラブルに発展するリスクがあります。IT系職種では、プロジェクトの内容が複雑なことが多いため、契約書に明確な項目を記載し、双方の理解を統一しておくことが重要です。
ここでは、契約書締結時の注意点について、IT系の具体例とともに解説していきます。
業務委託契約書に項目をきちんと記載する
システム開発やウェブ制作を業務委託で受ける際、契約書に委託業務の内容や報酬、支払い条件などの詳細を記載しないと、後から業務範囲や報酬額を巡ってトラブルになることがあります。
例えば、開発案件で「基本機能の実装」と曖昧に記載されていると、クライアントが期待している以上の機能追加が求められ、追加報酬を請求できない状況に陥ることがあります。
委託業務の内容、委託料(報酬額)、支払条件、支払時期、支払方法など
契約書には、委託業務の内容を具体的に記載し、何が「完了」とみなされるかを明確にします。
また、報酬額、支払い条件、支払期日、支払方法も明確に定め、後から「報酬が低い」「支払いが遅い」といったトラブルを防ぎます。
IT業務では、成果物の権利に関しても重要な項目であり、システムやソフトウェアの所有権を誰が持つのか、再利用が可能かどうかも明記する必要があります。
成果物の権利、再委託の可否、秘密保持に関する条項、反社会的勢力の排除
ソフトウェア開発やアプリ制作では、納品したシステムやプログラムの権利が誰に帰属するかを契約書で明確にすることが必要です。権利が曖昧だと、クライアント側がシステムを第三者に再販するなど、受託者に不利な状況になることがあります。
また、IT案件では秘密保持条項も非常に重要で、クライアントのデータやノウハウを漏洩しないことを義務づける必要があります。
契約書には、成果物の権利が誰に属するかを明確に定めておきます。例えば、納品後もソースコードの所有権は受託者が保持するのか、クライアントが完全に所有するのかを具体的に示しておくとよいでしょう。
さらに、受託者が業務を他のフリーランスや業者に再委託する場合の可否や条件を記載し、許可なく他者に業務を委託できないようにすることも重要です。加えて、反社会的勢力の排除条項も盛り込み、クライアントと受託者が健全な契約を結べるような契約書にしましょう。
禁止事項の詳細、契約解除の条件、損害賠償、契約期間、所轄の裁判所、その他の事項
システム開発の途中でプロジェクトが中断された場合や、クライアントからの指示が不明確な場合、契約解除や損害賠償の条項が不明だとトラブルに発展しやすい傾向にあります。
特に、開発途中で一方的に契約解除されると、受託者は報酬を受け取れないだけでなく、損害を被ることもあるでしょう。
契約書には、契約解除の条件を具体的に記載し、どのような場合に解除が許されるかを明確にします。例えば、「受託者が契約不履行の場合は解除可能だが、クライアントが一方的に解除した場合は違約金が発生する」などの取り決めが必要です。
また、損害賠償条項も明記し、受託者が開発途中に被った損害を請求できる条件を設定します。IT系プロジェクトでは契約期間も重要で、プロジェクトが長期にわたる場合は途中経過を確認するための定期的なミーティング等を設けておくとよいでしょう。
所轄裁判所に関しては、万一トラブルが発生した場合、どの裁判所で法的手続きを行うかを明記しておくと、スムーズに解決できます。
契約締結する前に内容を細部まで確認
ウェブ開発の契約締結前に、クライアントが急いで契約を進めようとし、受託者が契約内容を詳細に確認せずに合意してしまうこともあるでしょう。その結果、業務範囲が不明瞭で追加作業が発生し、最終的に報酬が見合わないというトラブルが発生してしまうこともあります。
このようなトラブルを避けるためには、契約を締結する前に内容を細部まで確認し、不明点があればクライアントに相談することが重要です。IT系の業務は複雑であるため、契約書のすべての条項を確認し、自分に不利な条件が含まれていないかを慎重に見極めましょう。
また、内容を確認する際には、弁護士に相談することも一つの対策です。契約書の中に曖昧な表現や条件がある場合、それが後に大きなトラブルを招く可能性があるため、必ず具体的で明確な契約内容であるかを確認しましょう。
契約書作成時のチェックリスト
業務委託契約書を作成する際は、トラブルを未然に防ぐために、契約書の内容をしっかりと定めることが重要です。委託する業務の内容や報酬の支払い条件、納期、修正対応の範囲など、双方の期待を明確にしておかないと、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。
以下に、業務委託契約書作成時に確認すべきチェックリストを解説します。必要に応じて、マネーフォワードが無料で提供している契約書テンプレートを使用することもおすすめです。
委託業務の内容の明確化
業務内容が不明確だと、どこまでが依頼範囲で、どこからが追加作業なのかが曖昧になり、トラブルの原因となります。
業務範囲の詳細を定義する
委託業務の具体的な内容を細かく定義します。例えば、システム開発の場合は、機能の仕様や提供するサービス内容を詳細に書きます。
成果物の定義と納品基準
成果物がどの段階で納品とみなされるか、またその品質基準を明確にします。例えば、ウェブサイト制作なら、動作確認済みの状態で納品されるのか、プロトタイプの段階で納品されるのかを合意します。
業務の完了条件
業務がどのような条件で完了とみなされるのかを具体的に決めます。例えば、納品後のテストや承認を完了することで業務が終了すると定めると、トラブルを避けられます。
報酬と支払い条件
報酬の支払いに関して、曖昧な契約はトラブルの元になります。特にフリーランスや個人事業主にとって報酬の支払いは重要なので、明確にしておきましょう。
支払いタイミングと方法の設定
報酬の支払い時期を具体的に定めます。例えば、納品後すぐに支払うのか、月末にまとめて支払うのかなど、支払いスケジュールを記載します。
前払い・後払いの条件
一部前払いがあるのか、全額後払いなのかも明示しておきます。大規模なプロジェクトの場合、段階ごとの支払いが発生する場合もあります。
振込手数料の負担者
報酬の支払い時にかかる振込手数料がどちらの負担かを契約書に明記しておきましょう。
追加作業の報酬について
委託範囲外の追加作業が発生した場合の報酬条件も記載しておきましょう。追加作業が発生した際に、双方で確認し合うプロセスも定めておくことをおすすめします。
納期とスケジュール
納期に関するトラブルは、業務委託契約において非常に多い問題です。
納期の設定方法
納期を厳格に定め、具体的な期日を契約書に記載します。どのような条件で納品が遅れる可能性があるかも含めて合意しておくことが大切です。
納期遅延時の対応策
納期が遅れた場合のペナルティや、その際の対応についても取り決めておくことで、双方が安心して業務を進められます。
修正対応の範囲
納品後の修正対応については、契約書に明確に定めることが重要です。
修正回数と範囲の取り決め
無制限の修正対応はコストが増加するため、修正回数や範囲を契約書に明記します。例えば、無料修正は2回まで、以降は有料などの取り決めが一般的です。
追加修正時の費用負担
大幅な変更や仕様の追加が必要な場合、別途料金が発生することを契約書に記載しておきましょう。
納品後のサポート期間
納品後の一定期間、無償でサポートを行うのか、有償なのかを事前に決めておくとトラブルを防げます。
契約の解除条件
契約解除の条件も明確にしておくことで、双方が安心して業務に取り組めます。
双方による解除条件の合意
契約を途中で解除する場合、どのような条件で解除できるかを合意します。
一方的な契約解除が発生した場合の違約金やペナルティについても明記しておくと、トラブル回避につながるでしょう。
不履行時の対応方法
受託者が契約を履行しなかった場合、追完による完全履行を求めるのか、損害賠償請求を行うのか、対応方法に至るまで契約書に盛り込んでおくとよいでしょう。
機密保持条項
機密情報の漏えいは重大なトラブルを引き起こしますので、対策をしっかりと講じる必要があります。
扱うデータや情報の範囲
機密保持の対象となる情報を具体的に定義し、どこまでを守るべきかを明示します。エンジニアであれば、業務でアクセスする顧客データや取引先情報、ソースコード、設計仕様書などが挙げられます。
漏えい防止策と対策
機密情報の取り扱いに関する具体的な管理方法や、漏えいが発生した場合の対処方法を契約書に明記します。
NDA(秘密保持契約)との関連
NDA(Non-Disclosure Agreement:秘密保持契約)が必要な場合は、業務委託契約とは別に結ぶことも検討しておきましょう。
再委託の可否
再委託とは、契約の受託者(業務を依頼された側)が、その業務の一部または全部を第三者にさらに委託する行為を指します。業務委託契約では、受託者が自らの責任で業務を遂行することが基本であるものの、再委託を行うことで、受託者が他の事業者や個人にその業務を任せることが可能です。
業務の再委託を許可するかどうかも、業務委託契約書において重要です。
再委託の条件と許可
再委託を行う際の条件を明確にし、再委託先の選定基準を定めておくと安心です。
再委託時の責任の所在
再委託された場合、責任は誰が負うのかを契約書に明記し、トラブルの際の対応を明確にします。
再委託先の選定基準
再委託する業者の選定基準を設定し、質の低下やトラブルの回避を図ります。
損害賠償責任
万が一のトラブルに備えて、損害賠償責任の範囲を明確にしておくことが必要です。
賠償の対象と範囲
損害賠償が発生した場合、どの範囲までが賠償対象となるのかを定義します。
損害発生時の手続き
損害が発生した場合の対応手順を明記し、解決に向けたプロセスを定めます。
過失の割合による負担調整
双方の過失割合に応じて、賠償額の調整を行う取り決めも契約書に盛り込んでおきましょう。
所轄裁判所の指定
トラブル発生時にどの裁判所で法的手続きを行うか、所轄裁判所を指定します。
業務委託契約のトラブルや作業負担を軽減する方法
業務委託契約を結ぶ際、発注書や請求書のやり取り、納期や品質に関するトラブルなど、管理作業が煩雑になりがちです。特にIT業界では、プロジェクトの進行において作業負担が大きくなることがあります。
また、委託先とのトラブルが深刻化すると、損害賠償請求に発展するリスクもあります。こうしたリスクを軽減するためには、契約内容やプロセスの管理を効率化するツールの導入がおすすめです。
次に、具体的なトラブルとその対策について詳しく解説していきます。
業務委託契約によるデメリット
以下に、業務委託契約によるデメリットと、対策の具体例について紹介します。
発注書、請求書、納品書などの発行・管理やメッセージのやり取りなどにかかる時間や労力が大きい
IT業界では、業務委託に伴う書類のやり取りやメッセージの管理は、時間の浪費につながります。
例えば、システム開発の発注を受けたフリーランスエンジニアの場合、発注書の確認や請求書の発行、納品書の作成に多くの時間を割かなければなりません。これに対処するためには、クラウドベースの管理ツールを活用するのが有効です。
例えば、BacklogやTrelloといったプロジェクト管理ツールを導入すれば、進行状況や納品物に関するやり取りを効率化でき、重複作業を減らせます。また、請求書の発行には、freee請求書やマネーフォワードクラウドといった会計ソフトを使うことで、自動的に書類を作成でき、時間と労力を大幅に削減できます。
委託先から送られてくる請求書やその他の書類に不備が多い→作業負担増
委託先から送られてくる請求書や書類に不備が多い場合、確認や修正作業が追加され、作業負担が増すことがあります。
例えば、システム保守を委託しているIT企業が、請求書の記載ミスや不完全な納品書を送ってきた場合、確認や修正のために多くの時間が奪われます。このような状況に対処するためには、最初からテンプレートを提供し、請求書や納品書の形式を統一しておくと効果的です。
また、契約書に「書類不備時の対応ルール」を明記しておくことで、双方の役割や責任が明確になり、無駄な時間を削減できます。自動化ツールを使って請求書の整合性をチェックすることも、確認作業の効率化に役立つのでおすすめです。
希望する納期や品質で成果物が上がってこない
業務委託契約において、希望する納期や品質で成果物が得られないことは、特にITプロジェクトでよく発生する問題です。
例えば、ウェブサイトの制作を依頼した際に、予定通りに納品されなかったり、品質が期待に達しなかった場合、修正作業が必要となり、スケジュールが崩れる可能性があります。これを防ぐためには、契約段階で納期や品質の基準を具体的に設定し、定期的に進捗確認を行うことが重要です。
また、リアルタイムでの進捗管理やコードレビューによって、問題の早期発見と修正が可能となり、最終的な品質向上につながります。
委託先との口論や損害賠償請求沙汰に発展する
委託先とのトラブルが口論や損害賠償請求にまで発展するケースもあるでしょう。
ITエンジニアが委託されたプロジェクトにおいて、納品物の不具合やスケジュールの遅延が原因で、契約違反を問われることがあります。
こうした事態を避けるためには、最初にリスクマネジメントを徹底し、契約書で万が一のトラブル発生時の対応を明確にしておくことが大切です。また、第三者による仲裁や調停をすぐに行えるようにしておくことで、長引く口論や裁判を避け、関係を修復する手段として有効です。
損害賠償請求を受けないためにも、成果物の確認やテストを怠らず、納品前に不具合を解決することが大切です。
業務委託契約を適切に管理できるシステム・ツールの導入がおすすめ
業務委託契約の管理を効率化するには、適切なシステムやツールの導入が欠かせません。特にIT業界では、契約の取り交わしや発注書・請求書の発行など、手動の作業が多くなることで、確認作業に多大な時間がかかり、ミスが発生するリスクが高まります。
クラウドベースの業務委託管理ツールを導入することで、手間を大幅に減らし、スムーズな業務が可能です。
freee業務委託管理
freee業務委託管理は、業務委託契約で役立つクラウドベースのツールです。
例えば、フリーランスのプログラマーやデザイナーを委託している企業では、発注書や請求書の管理が煩雑になりがちですが、freee業務委託管理を導入すれば、契約の締結から発注書作成、請求書の回収と支払い管理まで、一つのプラットフォームで管理できます。
また、法令にも対応しており、下請法やフリーランス保護新法、インボイス制度などにも対応しています。特に、2024年11月に施行されるフリーランス保護法に備え、適切な契約管理が求められる企業にとっては、freee業務委託管理の導入は大きな助けとなるでしょう。
また、freee業務委託管理では、LINEやSlack、Salesforceなどの他の業務ツールとの連携も可能であるため、日常業務の効率化も可能です。
個人事業主・フリーランスとの業務委託契約で注意したい2つの法律違反
個人事業主やフリーランスとの業務委託契約を行う際、注意すべき法律違反があり、中でも特に「偽装請負」と「二重派遣」は、企業にとって大きなリスクとなります。
違反行為は、業務委託契約の形式が正しくない場合に発生し、最悪の場合、法的制裁や罰金が課される可能性があるため、注意しましょう。
ここでは、それぞれの違反について、以下で詳しく解説します。
「偽装請負」
「偽装請負」とは、業務委託契約に基づく請負契約の形を取りながら、実際には労働者派遣に近い形態で仕事が行われている状況を指します。つまり、企業が個人事業主やフリーランスを形式上は「請負」として契約するものの、実際には企業側が直接業務指示を出したり、フリーランスが企業の指示のもとで作業を行うケースです。労働者派遣に必要な許可を取得していない企業が、違法な労働者派遣行為を行っていることになります。
例えば、ソフトウェア開発を請け負ったフリーランスのエンジニアが、企業側のプロジェクトマネージャーの直接指示を受けながら日々の作業を行う場合、偽装請負の可能性が生じます。
偽装請負が発覚すると、労働者派遣法違反として、企業は法的制裁や罰金を受ける可能性があります。また、フリーランス側も、実質的には企業の従業員としての立場が強調されることになり、労働条件の問題が発生する可能性があります。
偽装請負を回避するためには、業務委託契約の内容を明確にし、フリーランスに対して企業が直接指示を出すことなく、契約に基づいて自主的に作業を行える体制を整えることが必要です。
業務の進行状況や納品物の確認を行うことは問題ありませんが、フリーランスが企業の社員と同じ指揮命令系統に入ることがないよう注意が必要です。
「二重派遣」
「二重派遣」とは、派遣元企業から派遣された労働者が、さらに別の企業に再派遣される違法行為を指します。二重派遣は、労働者派遣法において厳しく規制されている行為であり、フリーランスや個人事業主との契約においても注意が必要です。例えば、システム開発を委託されたフリーランスエンジニアが、別の企業に業務をさらに委託するような形になると、二重派遣に該当する可能性があります。
このようなケースでは、企業が直接雇用していない労働者が別の企業の指揮命令下で働くことになり、派遣法違反となります。二重派遣が発覚した場合、関係する企業すべてに法的な責任が問われることがあり、違反に対して罰金や業務停止命令が科される可能性があります。
二重派遣を避けるためには、フリーランスや個人事業主との契約内容を明確にし、契約範囲を厳格に守ることが重要です。再委託が発生する場合、その契約が派遣法に違反しない形で進められているかを確認しなければなりません。
例えば、フリーランスエンジニアが別のエンジニアに作業を再委託する場合、それが合法的な下請け契約であることを確認し、指揮命令がどの範囲で行われるかを契約書で明示することが求められます。
まとめ
業務委託契約を締結する際は、責任範囲を明確にし、トラブルを未然に防ぐことが大切です。
特に、納期や品質に関する合意や書類管理の効率化、法的な遵守事項の確認を怠らないようにしましょう。また、偽装請負や二重派遣など、違法行為に該当しないよう、契約書の内容や業務の進め方を慎重に検討しましょう。
必要に応じてクラウドツールを活用して契約管理や請求書発行の手間を削減することで、作業効率が上がり、トラブルのリスクも低減できます。
事前の対策を徹底することで、発注者・受注者の双方が信頼できる関係構築につながるでしょう。
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