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業務委託に安全配慮義務は適用される?安全配慮義務の具体的な内容や違反した場合の罰則

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はじめに

近年、フリーランスとして働く人が増える中で、業務委託契約における「安全配慮義務」の重要性が注目されています。

安全配慮義務とは、使用者が労働者の心身の健康と安全を守るために負う法的な責任です。

雇用契約だけでなく、委託契約や請負契約でも適用される可能性があります。

本記事では、業務委託における安全配慮義務がどのように適用されるのか、また違反した場合の罰則や具体的な対応策について詳しく解説します。

<この記事を読むメリット>

  • 安全配慮義務の基本的な理解が深まる
  • 業務委託契約における法的リスクについて知識が得られる
  • フリーランスとしての権利や義務を理解できる
  • 具体的な裁判例から、リスク回避のポイントが学べる

最後までお読みいただければ、安全配慮義務の法的背景や、業務委託でも発注者が負う義務についての理解が深まります。

安全配慮義務を怠って不要な損失を被らないためにも、本記事を参考にぜひ時代に合った労働環境の構築に努めましょう。

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは1

建築業や製造業などの一部業種では業務中に怪我をするリスクがあり、企業は安全配慮義務を果たさなければなりません。

しかし、最近ではほぼ全ての業種において「パワハラ」や「セクハラ」などで精神的な疾患を患うケースも増えてきました。

そのため、安全配慮義務は現代においてほぼ全ての企業が対象となる責務と言えるかもしれません。

ここからは、そんな「安全配慮義務」について詳しく解説していきます。

使用者が労働者の心身の健康と安全を守るための義務

「安全配慮義務」とは、事業者や雇用主が労働者の身体的・精神的健康と安全を守るために負う法的義務のことです。

労働契約を結ぶ際に使用者が当然に負うべきものであり、労働者が業務中に危険にさらされないようにすることや、適切な労働環境を提供することが含まれます。

具体的には、物理的な労働環境の安全確保(機械設備の点検や安全装置の設置)、過剰な残業を避けるための労働時間の管理、ハラスメント防止対策などが主な内容です。

近年では、精神的なストレスによる健康被害も問題となっており、特にパワハラやセクハラに対する対策を講じることが使用者の重要な責務となっています。

安全配慮義務を怠った場合、使用者は法的責任を問われ、損害賠償請求を受ける可能性があります。

安全配慮義務は、従業員の保護だけでなく企業の信用やブランドを守るためにも重要な役割を果たすものです。

安全配慮義務の法的背景

安全配慮義務は現代企業が必ず守るべき義務ではありますが、「安全配慮義務」という法律があるわけではないです。

正しくは、「労働契約法」と「労働安全衛生法」という法律の中に含まれている条項によって義務付けられています。

ここでは、労働契約法と労働安全衛生法における安全配慮義務についての記載を詳しく見ていきましょう。

労働契約法

労働契約法は、労働者と使用者の間の契約における基本的な権利と義務を規定しており、労働環境の適正化を目的とした法律です。

労働者の安全や健康を守るために、使用者が一定の配慮を行うことを義務付けています。

特に第5条において、使用者の安全配慮義務が明確に定められています。

労働契約法第5条

労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に基づき、労働者の生命、身体、健康を保護するために必要な配慮をしなければならない」と規定しています。

この条文が安全配慮義務の法的根拠となっており、企業はこれに基づき、適切な安全対策や健康管理を行う必要があります。

例えば、過重労働やハラスメントの防止、物理的な作業環境の整備などが、この義務に該当します。

安全配慮義務を負う

「安全配慮義務」を怠った場合、使用者は労働者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

例えば、過去の裁判例では企業がハラスメント対策を怠り、労働者が精神的な疾患を患った場合、企業側に賠償責任が課されたケースもあります。

このように、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務は、労働者の健康と安全を守るための重要な基盤となっています。

労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働者が健康で安全に働くための環境を整えることを目的とした法律です。

主に事業者に対して労働者の安全と健康を確保するための様々な措置を義務付けています。

労働契約法が労働者との契約に基づいた義務を規定しているのに対し、労働安全衛生法は職場環境全般に関する具体的な安全基準を定めるものです。

特に、第3条において安全配慮義務について規定されています。

労働衛生安全法第3条

労働安全衛生法第3条は、事業者に対し、労働者の安全と健康を確保するために必要な措置を講じる義務を課しています。

労働安全衛生法第3条の主なポイントは次の通りです。

内容 具体例
事業者の義務 労働者の安全と健康を確保するため、適切な措置を講じる義務がある。 安全装置の設置、危険作業の手順管理など。
労働災害防止計画の策定 労働災害を防止するための計画を策定し、実施する義務。 工場の設備安全点検計画の作成、災害防止マニュアルの導入。
労働者への安全衛生教育 労働者が安全に作業できるよう、教育や訓練を行う義務がある。 新人労働者や業務変更時の安全教育、危険物取扱者への特別教育。
労働環境の整備 職場環境を安全かつ快適に保つため、物理的環境や作業環境の整備が必要。 空調設備の点検、換気装置の整備、作業環境の清潔維持。
リスクアセスメントの実施 作業場のリスクを評価し、危険性や有害性を低減する措置を講じる義務。 化学工場での有害物質管理、建設現場での高所作業リスクの評価と対策。

このように、労働安全衛生法第3条は事業者が労働者の安全と健康を守るための責任を負い、その実現のためにさまざまな対策を講じることを義務化しています。

労働者の安全と健康に配慮する

労働安全衛生法では、特に労働者の安全と健康に配慮することが多く義務化されています。

例えば、事業者は定期的な健康診断を労働者に実施し、異常が発見された場合には早期の対策を講じなければなりません。

特に、有害物質を扱う作業や高リスクの職場に従事する労働者に対しては、特別な健康診断や追加の安全措置が義務付けられています。

また、従業員が50人以上の事業場ではストレスチェックが義務化されており、メンタルヘルスに関する問題を早期に発見し、適切な対処を行うことが求められます。

これに加え、事業者はストレスチェックの結果を分析し、必要に応じて職場環境の改善を実施することが必要です。

さらに、事業者は労働者が安全に作業できるよう、安全衛生教育を定期的に実施しなければなりません。

特に、危険な機械や有害物質を取り扱う労働者には、これらに関する特別な教育や訓練を行うことが義務付けられています。

安全配慮義務の具体的な内容

では、安全配慮義務で義務付けられている内容は具体的にどのようなものなのでしょうか?

ここからは、安全配慮義務で定められている「職場環境の安全確保」と「心身の健康に対する配慮義務」について詳しく解説します。

職場環境の安全確保

安全配慮義務の一環として、企業は労働者が安心して働ける環境を提供し、職場での安全を確保する責任があります。

特に物理的な作業環境や使用する機器の安全性を保つことは、労働者の身体的な安全を守るための基本的な対策です。

また、ハラスメント対策も重要な要素となっており、精神的な安全を確保するために企業は様々な措置を講じなければなりません。

作業場所の安全管理

企業は労働者が作業する場所の安全を確保するために、適切な設備や環境を整備する義務があります。

具体的には、転倒や挟まれ事故を防ぐための設備の整備、作業場の温度や照明の適切な管理が求められます。

例えば、工場の現場では定期的な設備点検や修理を行い、労働者が危険にさらされないようにすることが必要です。

また、危険物の除去や保護具の提供も含まれます。

作業機器についての安全管理

使用する機械や道具も安全に管理されなければなりません。

企業は機械が正しく機能するように定期的な点検や整備を行い、故障や不具合による事故を防ぐ必要があります。

さらに、機械の操作に関する教育を労働者に施し、安全な作業手順を徹底させることが求められます。

例えば、重機を扱う建設現場では作業員に対して安全装置の使用方法を教え、適切な操作を指導することが不可欠です。

ハラスメント対策

職場におけるハラスメントは、労働者の精神的な健康に大きな影響を与えるため、企業はその防止策を講じる義務があります。

セクハラやパワハラの防止に向けた研修や相談窓口の設置、ハラスメントを行った者への厳正な対応が必要です。

例えば、定期的にハラスメント防止の研修を行い、従業員に対して相談しやすい環境を整えることが、職場環境の改善に役立ちます。

心身の健康に配慮する義務

企業には従業員が心身ともに健康を保ちながら働ける環境を整備する義務があります。

これは、長時間労働やメンタルヘルス問題などが増加している現代において、特に重要な課題です。

労働者の健康を守るために、労働時間の管理や定期的な健康診断、ストレスチェックの実施、さらには安全衛生委員会の開催が義務付けられています。

労働時間の管理

過労死やメンタルヘルスの悪化を防ぐために、企業は労働時間を適切に管理する必要があります。

労働基準法に基づき、時間外労働の制限や休憩時間の確保が義務化されており、企業は従業員の労働時間を適切に把握し、過剰な労働を未然に防がなければなりません。

例えば、残業時間を制限するためのシステム導入や、出退勤の記録を正確に管理することが重要です。

健康診断の実施

企業は、従業員に対して定期的に健康診断を実施する義務があります。

特に、50人以上の労働者を雇用する企業は年1回の定期健康診断が必須とされており、異常が見つかった場合には産業医と連携して必要な対応をしなければなりません。

例えば、異常が発見された従業員に対しては、職務の変更や労働時間の短縮などの措置を取ることが必要です。

ストレスチェック

2015年12月より、従業員50人以上の事業場では毎年1回、ストレスチェックの実施が義務付けられました。

これは、従業員が自分のストレス状態を確認し、必要に応じて産業医と面談することで、メンタルヘルスの問題を早期に発見・対処することを目的としています。

ストレスチェックの結果は職場環境の改善にも活用され、労働者のストレス軽減に繋がります。

安全衛生委員会の開催

従業員50人以上の事業所では、安全衛生委員会を毎月1回以上開催することが義務付けられています。

委員会の主な議題は、労災防止や健康診断の結果に基づいた健康管理の対策、職場環境の改善などです。

例えば、委員会で議論された労災事例や改善案は職場全体に周知され、実際の改善策が迅速に実行されるよう取り組まなければなりません。

これらの取り組みを通じて企業は労働者の健康を守り、快適な職場環境を構築することが求められています。

安全配慮義務に違反した場合の罰則

安全配慮義務を怠った場合、使用者は法的責任を問われる可能性があります。

ただし、具体的な罰則については法律ごとに異なる扱いがなされています。

以下では、安全配慮義務に違反した場合の法的な罰則について見ていきましょう。

労働契約法に罰則はない

まず、労働契約法第5条では使用者が安全配慮義務を負うことが明記されていますが、労働契約法そのものには違反した場合の具体的な罰則は設けられていません。

これは、労働契約法が主に契約関係を規定しており、罰則を目的としたものではないためです。

しかし、罰則がなくとも、義務違反によって労働者に損害が発生した場合、使用者には法的な責任が問われることになります。

そのため、労働契約法自体に罰則規定がないからといって、使用者が義務を怠ることが許されるわけではありません。

民法における債務不履行となる

安全配慮義務に違反した場合、労働契約法には直接的な罰則規定がないものの、民法の債務不履行として責任を追及されることがあります。

具体的には、民法第415条の「債務不履行」に該当し、使用者が契約上負っている安全配慮義務を果たさなかった場合、労働者は損害賠償を請求することができます。

例えば、労働者が危険な作業環境で健康を害した場合、使用者がその環境改善や安全策を講じなかったことが債務不履行にあたると認定される可能性はゼロではありません。

また、長時間労働やハラスメントによって精神的・身体的な健康被害が発生した場合も、この規定に基づき責任を追及されることもあります。

損害賠償を請求される可能性がある

安全配慮義務に違反した場合、使用者は民法の債務不履行に基づき、損害賠償を請求される可能性があります。

過去の判例では、過労自殺や職場でのハラスメントが原因で労働者が深刻な精神疾患を抱えたケースがあり、その際には企業が多額の賠償金を支払うことになりました。

特に、長時間労働や不適切な管理が原因で労働者に損害が生じた場合、企業側の責任は大きく問われることがほとんどです。

このように、安全配慮義務を怠ることによって企業は法的責任を問われるだけでなく、財務的にも大きな影響を受けるリスクがあるのです。

業務委託に安全配慮義務は適用される?

昨今では柔軟な働き方が強く求められた結果、フリーランス人口が増加しています。

フリーランスは主に「業務委託契約」に基づいて業務を遂行する事が多いですが、こういった場合でも安全配慮義務は適用されるのでしょうか?

安全配慮義務は雇用契約に限られるものではない

安全配慮義務は、元々は雇用契約に基づく義務です。

先述したように、使用者が労働者の生命や健康を守るために必要な配慮を行う責任を負うもので、労働契約法第5条などに基づいています。

しかし、安全配慮義務は雇用契約に限定されるものではなく、契約当事者が実質的な指揮監督関係にある場合、雇用関係がない委託契約や請負契約でも適用されます。

つまり、契約の形態が委託や請負であっても、業務の遂行方法や安全管理が発注者の指揮下に置かれている場合には、発注者は安全配慮義務を負うのです。

委託契約や請負契約などにも適用される

業務委託契約や請負契約では、発注者が労働環境を管理し、労働者の安全を確保する責任を負うことが認められる場合があります。

例えば、作業環境の危険性や過重労働が発生し、委託されたフリーランスが健康被害を受けた場合、発注者がその環境を管理している限り、安全配慮義務違反として損害賠償請求の対象となる可能性もゼロではありません。

このように、委託契約や請負契約においても、特に実質的な指揮監督が行われている場合には、発注者には安全配慮義務が生じることがあるため、労働者の安全を十分に配慮することが求められます。

フリーランスへの安全配慮義務違反が認められた裁判

フリーランスに対する安全配慮義務違反が認められた代表的な裁判例として、アムール事件(東京地裁、令和4年5月25日判決)があります。

この事件では、エステ会社がフリーランスのライターに対して業務委託契約を結び、ウェブサイトの運営や記事執筆を依頼しましたが、同社の代表者がフリーランスに対してセクシャルハラスメントを行ったことが問題となりました。

裁判所はこのフリーランスが実質的にエステ会社の指揮監督下にあったと認定し、エステ会社にはフリーランスに対する安全配慮義務が存在すると判断しました。

結果として、エステ会社はセクハラによる損害賠償責任を負うことになったのです。

この判例では業務委託契約の下であっても、発注者側がフリーランスに対して安全配慮義務を負うことがあることを示しており、実質的な指揮監督関係がある場合には安全管理の責任が生じることが確認されています。

つまり、実質的な判例が既に存在しているので、業務委託契約であっても安全配慮義務を前提に仕事を委託しなけれなならない、ということです。

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まとめ

本記事では、業務委託契約における安全配慮義務の適用範囲や、違反時の法的リスクについて詳しく解説しました。

安全配慮義務は雇用契約に限らず、業務委託や請負契約にも適用され、発注者はフリーランスや委託先の労働者の安全と健康に配慮する責任を負います。

また、違反が認められた場合、民法上の債務不履行として損害賠償を請求されるリスクもあります。

今後、フリーランス人口が増加する中で、業務委託における安全配慮義務の重要性はさらに高まっていくでしょう。

企業は、委託者としての責任を認識し、適切な労働環境を構築することでトラブルを未然に防がなければなりません。

エンジニアスタイルマガジン」では、今後もこういったフリーランスエンジニアにとって役立つ最新情報を随時お届けいたします。

それでは、また別の記事でお会いしましょう。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

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