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フリーランスが独立時に顧客を引き抜くのは違法?訴えられる際の判断基準とトラブル回避ポイントを紹介

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はじめに

フリーランスとして独立を考えているものの、会社員時代に担当していた顧客との取引を続けたいと悩む方は少なくありません。

しかし、「顧客を引き抜く行為」が法律に触れる可能性や、元の会社から訴えられるリスクについて不安を抱える方も多いでしょう。特に競業避止義務や秘密保持義務の観点から、どのような行為が適切で、どこからが違法となるのかを知ることは、独立後のトラブル回避にとって非常に大切です。

そこで今回の記事では、フリーランスとして独立する際の、顧客引き抜きに関する法律上の判断基準や、元の会社とのトラブルを避けるためのポイントについて紹介します。

フリーランスが独立時に知っておきたい法律とは?

フリーランスとして成功するためには、スキルや人脈はもちろん、法的な知識も欠かせません。中でも会社員時代に築いた取引先やノウハウを活用しようとする場合、注意すべき法律があります。知らずに法に触れる行為をしてしまうと、元の勤務先から訴えられるリスクも生じるでしょう。

ここでは、フリーランスが独立時に押さえておくべき「競業避止義務」と「不正競争防止法」という2種類の法律について詳しく解説します。

競業避止義務

競業避止義務は、元の勤務先(または、在職中の勤務先)と競合する業務を一定期間行わないようにする義務です。競業避止義務に違反すると、損害賠償請求や業務差止めなどの法的措置を受ける可能性があります。

具体的には、以下の場合が挙げられます。

自分が勤めている会社(A社)と競争する会社(B社)でも働く場合:A社の社員がB社でも働くと、A社の秘密情報がB社に漏れるリスクや、A社のお客様をB社に取られてしまう可能性があり、A社の利益が損なわれるため問題になります。

他社の社員を雇う場合:例えば、A社がB社の社員を自社で働かせると、そのB社の社員がB社の競業避止義務を破ることになるかもしれません。その場合、A社も巻き込まれてトラブルになる可能性があります。

企業の中は、自社のノウハウや顧客情報が競合他社に流出するのを防ぐために、雇用契約や就業規則に競業避止義務を盛り込んでいる場合が多い傾向にあります。

しかし、競業避止義務が常に有効とは限りません。労働者の職業選択の自由を過度に制限することは法律で認められていないため、この義務が有効となるためには以下の条件が必要です。

例えば、競業を禁止する範囲や期間が合理的であることが求められます。禁止される業務の範囲が広すぎたり、期間が長すぎたりすると、無効と判断される場合もあるでしょう。

フリーランスとして独立する際にも、自身が競業避止義務の対象となっていないか、雇用契約書や就業規則をしっかり確認する必要があります。

不正競争防止法

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を促進した上で、健全な経済発展を目指すための法律です。企業が不正な手段で他社の利益を損なう行為を防止し、正当なビジネス活動を守ることを目的としています。

退職後に元の勤務先の営業秘密を利用して事業を行うと、この法律に違反する可能性があります。営業秘密とは、非公開で有用性があり、適切に管理されている情報を指します。具体的には、技術情報や販売戦略、顧客リストなどが該当します。

不正競争防止法に違反すると、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。最悪の場合、10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金が科せられることもあり、非常に重いリスクを伴います(営業秘密の侵害等)。そのため、退職時には営業秘密に該当する情報を持ち出さないよう細心の注意が必要です。

フリーランスとして独立する際、自身のスキルや経験を活かすことは問題ありませんが、元の勤務先の営業秘密を利用することは避けなければなりません。

独立前に取るべき準備と手続き

フリーランスとして安心してスタートを切るためには、事前の準備が欠かせません。先述したような法的トラブルを防ぎ、安定したビジネスを構築するためには、計画を立て、契約内容を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが重要です。

ここでは、独立前に行うべき具体的な準備と手続きについて解説します。

退職前の計画立案

フリーランスとして成功するためには、綿密な計画を立てることが必要です。独立後の事業モデルや収益構造を明確にすることで、退職後に起こりうる不安やリスク軽減につながります。

具体的には、提供するサービスの範囲やターゲットとなる顧客層を明確にし、それに応じた価格設定やマーケティング戦略を検討しましょう。

また、独立後に予想される収入や支出を把握するため、キャッシュフロー計画を作成することも重要です。初期費用や生活費、業務で必要な設備やツールの購入費用などを洗い出し、資金が不足しないよう準備しましょう。さらに、独立直後は収益が不安定になりがちです。数カ月分の生活費を蓄えておくことで、初期段階のリスクを軽減できます。

なお、退職後すぐに稼働できるよう、独立前に名刺やポートフォリオを作成し、SNSやウェブサイトを通じて自己PRを始めることも効果的です。事前に知人や業界のネットワークに独立の計画を共有しておくことで、最初の取引先を確保するきっかけが生まれることもあります。

独立前の計画を立てる段階で具体的な目標を設定し、着実に準備を進めておきましょう。

契約内容の確認

独立前に、自身が元の会社と交わした契約内容を確認することも重要です。先述したように、秘密保持義務や競業避止義務に関する条項が含まれている場合、どのような内容で契約したのかをしっかり把握しておく必要があります。

契約内容を疎かにしてしまい、独立後に条項に違反してしまうと、損害賠償請求や差止請求といった法的措置を受けるリスクがあります。例えば、「退職後1年間、同業他社での業務を禁止する」といった競業避止義務が課されている場合、その期間中に競合する業務を行うと契約違反となります。また、顧客リストや取引条件、技術資料などの情報を持ち出すことは秘密保持義務の違反に該当する可能性があるため、注意が必要です。

契約内容が曖昧で理解しづらい場合や、自分の行動が違反に当たるかどうか不安がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。また、退職前には退職届の提出期限や引き継ぎのスケジュールを確認し、円滑に手続きを進めるための準備を怠らないことも大切です。

専門家への相談

独立前には、法的リスクを正しく理解し回避するために、弁護士や社労士といった専門家に相談することをお勧めします。独立に伴う法律的な義務や注意点について、専門家の意見を聞くことで、より安全かつ効率的に準備を進められます。

例えば、競業避止義務や秘密保持義務の有効性を確認する際、契約書の解釈がポイントとなります。専門家に相談することで、契約内容が適法かどうかを判断し、自分の行動が違反に当たらないよう助言を受けられます。また、独立後のトラブルが懸念される場合には、リスクマネジメントの方法について具体的なアドバイスを得られます。

さらに、税理士に相談して独立後の経理や税務の手続きについて事前に把握しておくことも重要です。青色申告の届出や必要な経費の整理方法を学ぶことで、税務リスクを軽減し、事業運営に集中できる環境を整えられます。

専門家に相談する際には、現在の状況や懸念点を整理して伝えることで、適切なアドバイスを得られやすくなります。

フリーランスが独立時に顧客を引き抜くのは違法?

フリーランスとして独立する際、会社員時代に築いた顧客との取引を続けたいと考える方は少なくありません。しかし、この行為が「引き抜き」とみなされると、元の勤務先から法的措置を取られるリスクがあるため注意が必要です。引き抜き行為が適法か違法かは、具体的な状況や契約内容によって異なります。

ここでは、自由競争の範囲内で引き抜きが許される場合と、在職中に引き抜きを行った場合の違法性について解説します。

自由競争の範囲内で引き抜きはできる

独立後に顧客との取引を継続すること自体は、原則として自由競争の範囲内で認められています。

日本の法律では、職業選択の自由が憲法で保障されており、フリーランスとして新たな取引先を開拓することや、過去に担当していた顧客に営業活動を行うこと自体は違法ではありません。特に、顧客側が自発的に取引を継続したいと考えた場合、元の会社が制限することは難しいでしょう。

ただし、注意すべき点は「競業避止義務」や「不正競争防止法」に違反しないかどうかです。例えば、元の勤務先の営業秘密に該当する情報(顧客リストや価格表など)を利用して新規取引を行った場合、違法行為とみなされる可能性があります。また、顧客に対して元の会社の悪評を広めたり、不当な価格競争を仕掛けたりする行為は、自由競争の範囲を逸脱するため避けるべきです。

そのことを踏まえた上で、顧客に営業をかける際には、誠実な対応が求められます。元の勤務先と顧客の間に信頼関係が存在する場合、その関係を壊さないよう配慮することが重要です。適切な方法でアプローチすれば、法的リスクの回避が可能です。

在職中に顧客を引き抜きした場合

在職中に顧客を引き抜く行為は、法律上の問題が生じる可能性が非常に高く、注意が必要です。このような行為は「背信的行為」として、元の会社から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

民法では、雇用関係にある従業員は会社に対して「信義誠実の原則」を負っています。信義誠実の原則を一言でいうと、「お互いに信頼し、誠実に行動することを求める法律上のルール」です。そのため、在職中に個人的な利益を優先して顧客を引き抜く行為は、信義誠実の原則に反する行為とされます。

具体例として、在職中に自身の独立準備として顧客に営業活動を行ったり、元の会社の機密情報を使用して取引を持ちかけたりする行為が挙げられます。先述の通り、競業避止義務や不正競争防止法にも違反する可能性があり、特に顧客リストや契約条件の詳細を無断で利用した場合には、刑事罰の対象となることもあります。

また、在職中に引き抜きを行った場合、元の会社だけでなく顧客との関係性も損なう恐れがあります。顧客側からすれば、信頼を損ねる行為とみなされる可能性があるため、独立後の取引にも悪影響を及ぼしかねません。そのため、独立を計画している場合は、在職中の行動に細心の注意を払い、退職後に正当な形で営業活動を行うことが求められます。

フリーランスによる顧客の引き抜きが違法となる場合

フリーランスとして独立後に顧客を引き抜く行為は、自由競争の範囲内であれば違法とされることはありません。しかし、特定の条件においては法的問題が生じる場合があります。元の会社との契約内容や引き抜きの方法によっては、損害賠償請求や刑事罰の対象となるリスクがあるため注意が必要です。

ここでは、3つの具体例を挙げ、それぞれの違法性について詳しく解説します。

退職時に競業避止義務を定めた誓約書にサインをしていた場合

退職時に競業避止義務を含む誓約書に署名していた場合、その内容に従わない引き抜き行為は違法となる可能性があります。

競業避止義務とは、「元の会社と競合する業務を一定期間行わないよう制限する契約条項」のことです。有効とみなされるためには、対象業務や期間が合理的であること、そして代償措置があることが必要です。

例えば、誓約書に「退職後2年間、元の会社の顧客に直接取引を持ちかけない」と明記されている場合、違反する引き抜き行為は契約違反とされ、損害賠償請求を受ける可能性があります。また、内容が不明確であったり、不合理な範囲を設定していた場合でも、裁判所が契約の一部を有効と認めるケースがあるため、安易に無視することは危険です。

競業避止義務の誓約書に署名した場合、退職後の事業活動を慎重に計画することが重要です。専門家に相談し、契約内容の合法性やリスクを確認することで、不必要なトラブルを回避できるでしょう。

一斉かつ大量に顧客を引き抜いた場合

一斉かつ大量に顧客を引き抜く行為は、自由競争の範囲を逸脱し、不正競争防止法や背信行為として違法と判断される可能性があります。特に、元の会社がこの行為により重大な損害を受けた場合、訴訟や差止請求が起こされるリスクが高まります。

一度に多くの顧客を引き抜く行為は、元の会社の営業基盤を意図的に崩壊させる目的とみなされることがあり、「信義則違反」とされることもあります。

また、引き抜きの過程で、元の会社の顧客リストや価格設定などの営業秘密を利用していた場合、不正競争防止法の違反となり、さらに重い責任が問われる可能性があります。

このような行為を避けるためには、独立後の営業活動において顧客を個別に誠実にアプローチし、適切な手順を踏むことが求められます。

営業秘密の持ち出しを伴う引き抜きである場合

元の会社の営業秘密を持ち出し、それを利用した顧客引き抜き行為は、不正競争防止法違反として重い法的責任を負う可能性があります。営業秘密とは、非公開性、有用性、管理性の3つの条件を満たす情報を指し、顧客リストや取引条件、価格表などが該当します。

例えば、退職時に元の会社の顧客リストを無断でコピーし、それを基に新たな取引を開始した場合、営業秘密の不正使用とされます。この行為は民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事罰の対象にもなる可能性があります。刑事罰としては、10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金が科される場合もあり、非常にリスクの高い行為です。

独立後の事業活動では、元の会社から得た情報に頼らず、自分自身の経験やネットワークを基に顧客を開拓することが安全策といえます。

フリーランスが独立時に顧客引き抜きで訴えられる際の判断基準

フリーランスとして独立後、元の会社から顧客引き抜き行為で訴えられる場合、さまざまな判断基準が適用されます。訴訟が起こされるかどうか、またその結果、責任を問われるかは、具体的な契約内容や行動に基づいて決定されます。

ここでは、秘密保持義務や競業避止義務、期間制限に焦点を当て、それぞれがどのように影響を及ぼすかを解説していきます。

秘密保持義務にあたるかどうか

フリーランスとして独立後の行動が秘密保持義務に抵触するかどうかは、顧客引き抜きの違法性を判断する上で重要なポイントです。先述したように、秘密保持義務とは、元の会社の営業秘密を無断で使用したり第三者に漏洩しないことを求める義務を指します。

元の会社の顧客リストや契約条件、価格情報などが営業秘密とみなされる場合、それらを利用して顧客にアプローチする行為は秘密保持義務の違反となるでしょう。

ただし、顧客情報が公にアクセス可能である場合や、フリーランス自身が独自に構築した関係性を基に営業活動を行う場合は、この義務に違反しないとされることがあります。

重要なのは、情報の出所が正当であることを証明できるようにすることです。独立後の営業活動では、元の会社の情報に依存せず、自分自身の知識や経験を活用することが、安全かつ合法的な方法です。

競業避止義務に違反していないかどうか

競業避止義務は、顧客引き抜きの違法性を判断する上で欠かせません。

先述したように、競業避止義務は元の会社との競合を防ぐために課される契約条項であり、違反した場合には損害賠償請求や差止請求のリスクがあります。

中でも、引き抜き行為が競業避止義務で制限された業務の範囲に該当する場合、法的な問題に発展する可能性が高まります。たとえば、「退職後1年間は元の会社の顧客に営業活動を行わない」という契約が有効である場合、その期間内に該当顧客との取引を開始する行為は違反となります。

フリーランスとして独立する際には、自分の契約内容を事前に確認し、その範囲内で活動を行うことが求められます。曖昧な契約条項については、専門家の意見を求めることで、適切な対応策を講じることができます。

競業避止義務が課せられる期間かどうか

競業避止義務が課せられる期間内であるかどうかも、訴訟の判断基準となります。

期間については、契約書で明確に規定されており、一般的に数ヶ月〜数年に限定されます。期間が過ぎた後は、競業避止義務は効力を失い、それ以降の行動は問題とされることはありません。

ただし、期間の計算方法や開始時期については、契約内容によって異なる場合があります。例えば、「退職日から1年間」と規定されている場合もあれば、「退職後の補償金支払いが終了する日から1年間」とされる場合もあります。こうした細かな違いを把握することが、法的トラブルを回避する鍵となります。

競業避止義務の期間が過ぎた後であっても、元の会社との関係性や新たな取引先との信頼を考慮し、倫理的な行動を心がけることが重要です。また、義務の期間が適切かどうか疑問がある場合は、契約内容を見直し、必要に応じて専門家に法的なアドバイスを受けることをおすすめします。

訴えられたらどうなる?

フリーランスとして独立後に、元の会社から顧客の引き抜きで訴えられた場合、具体的にどのような法的な影響や責任が生じるのでしょうか。訴訟が提起されると、時間的・経済的な負担だけでなく、ビジネス活動にも大きな支障をきたす可能性があります。

ここでは、考えられる主な法的措置として「損害賠償請求」、「差止請求」、そして「退職金の返還請求」について、それぞれ詳しく解説します。

損害賠償請求

損害賠償請求とは、あなたの行為によって元の会社が被った損害を金銭的に補填するよう求める法的手段です。

具体的には、以下のような状況で損害賠償請求が行われる可能性があります。

  • 秘密保持義務の違反:在職中に知り得た顧客リストや営業戦略などの機密情報を無断で利用し、独立後の営業活動に活用した場合。
  • 競業避止義務の違反:契約で定められた競業避止義務に反し、元の会社と直接競合するビジネスを行った場合。

また、損害賠償請求が認められるためには、元の会社が以下の要件を立証する必要があります。

  • 違法行為の存在:自身の行為が法的に違反していること。
  • 損害の発生:元の会社が実際に経済的損害を被ったこと。
  • 因果関係:自身の違法行為と元の会社の損害との間に、直接的な関係があること。
  • 過失または故意:自身が故意、または過失により違法行為を行ったこと。

賠償額は、元の会社が失った利益や追加で負担した費用などを基に算定されます。高額な賠償金を請求されるケースもあり、フリーランスとしての経済的基盤に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、裁判手続が長期化すると、時間的な負担や精神的なストレスも増大します。

対策として、事前に元の会社との契約内容を確認し、違法行為に該当しないよう慎重に行動することが重要です。不明な点があれば、法律の専門家に相談しましょう。

競業避止義務に違反した場合は差止請求

競業避止義務に違反している場合、元の会社は差止請求を行うことがあります。差止請求とは、裁判所を通じて特定の行為を中止する命令を求めるものであり、違反行為が確認されれば、裁判所から業務停止命令が下される可能性があります。

差止請求が出されると、進行中のプロジェクトや取引を直ちに中断せざるを得なくなり、ビジネスの停滞や収益の減少といった大きな影響を受けることになります。

差止請求が認められるかどうかは、競業避止義務が法的に有効であるかにかかっています。有効とされるには、制限範囲や期間が合理的であり、かつ代償措置が提供されている必要があります。

しかし、一度命令が下されると、違反行為を継続することはできず、さらなる制裁を受けるリスクも生じます。そのため、元の会社との契約を事前に確認し、義務範囲を正しく理解した上で慎重に行動しましょう。

退職金の返還請求

退職時の契約や誓約書に違反した場合、返還が求められることもあります。

例えば、秘密保持義務や競業避止義務に違反した場合、契約書に基づく退職金の返還条項と関連していれば、受け取った退職金の一部または全額を返還しなければなりません。

返還請求が行われると、すでに受け取った退職金を一括で返還する必要があり、経済的な負担が増加するだけでなく、元の会社との関係がさらに悪化する恐れもあります。

また、返還を拒否した場合には、追加的な法的措置が取られるリスクも伴います。退職金の返還を避けるためには、退職時に交わした契約内容を事前に確認し、法律違反に該当しないように行動することが必要です。

トラブルを回避するために心がけるポイント

フリーランスとして独立する際、法的なトラブルを未然に防ぐためには、さまざまなポイントを押さえておく必要があります。

ここでは、具体的な回避策について、詳しく解説します。

顧客情報を持ち出さない

顧客情報は企業にとって貴重な資産であり、持ち出すことは重大な法的リスクを伴います。

先述したように、秘密保持義務に違反する行為は訴訟の対象となる可能性が高いため、顧客情報を持ち出さないことが最も重要です。

具体的には、顧客リストや連絡先、契約内容などの情報を無断でコピーしたり、他の媒体に保存したりする行為は厳禁です。また、顧客とのコミュニケーションにおいても、元の会社の情報を参照せず、自身の経験や知識を基に対応することが求められます。

さらに、電子データの管理にも注意が必要で、個人のデバイスに企業の情報を保存しないよう徹底することが大切です。万が一、顧客情報を持ち出してしまった場合には、速やかに元の会社に報告し、適切な対応を取ることが求められます。こうした注意を払うことで、法的トラブルを回避し、信頼性の高いフリーランスとしての活動を続けることが可能となります。

企業独自の技術やノウハウを持ち出さない

企業独自の技術やノウハウは、その企業の競争力を支える重要な資産です。

先述したように、営業秘密として保護されている技術やノウハウを無断で利用することは、訴訟の原因となるため、絶対に避けなければなりません。具体的には、製品開発の手法やマーケティング戦略、特許未取得の技術情報などが該当します。

前職と同じフィールドで独立後にもビジネスを展開する場合、自身で新たに開発した技術や公開されている知識のみを基に事業を行うことが重要です。また、企業から提供された資料や内部文書を持ち出さないようにし、必要な情報は企業の許可を得て利用するよう心掛けましょう。

さらに、独立前に企業からの技術移転や知識共有の範囲を明確にし、法的に問題のない範囲でスキルを活用しましょう。

同業種での独立を考える場合は、考えている事業内容が競業避止義務に抵触していないかを確認

同業種での独立を計画する際には、事前に競業避止義務に抵触しないかを慎重に確認しましょう。

先述した競業避止義務とは、退職後一定期間、元の会社と直接競合する業務を行わないという契約上の制約を指します。競業避止義務に違反すると、差止請求や損害賠償請求のリスクが高まります。そのため、独立を検討する際には、まず自身が締結した契約書や誓約書を詳細に確認し、競業避止義務の範囲や期間を明確に理解することが重要です。

また、競業避止義務が適用される業務内容についても、具体的にどの範囲までが制限されているのかを把握する必要があります。さらに、同業種での事業内容が競業避止義務に抵触しないよう、異なる市場やニッチな分野を選択することでリスクを軽減する方法もあります。

なお、法律の専門家に相談し、競業避止義務を遵守しつつ独立できるビジネスプランを策定することもよい方法です。

法的トラブルが発生した場合の対処法

フリーランスとして独立後に法的トラブルが発生した場合、冷静かつ迅速に対応することが事態を悪化させないために必要です。特に、適切な専門家の力を借りたり、必要な証拠を確保するなどの具体的な対処が重要です。

ここでは、法的トラブルに直面した際に取るべき行動について、3つのステップに分けて解説します。

迅速に専門家へ相談する

法的トラブルが発生した場合、最初に行うべきことは専門家への相談です。特に弁護士や社労士といった法律の専門家は、状況を正確に把握し、適切なアドバイスを提供してくれます。トラブルの内容が競業避止義務や秘密保持義務に関連する場合、契約書の解釈や違反の有無を的確に判断してもらうえます。

相談を行う際には、できるだけ早く動くことが重要です。法的問題は放置するほど状況が悪化し、後から対応するのが難しくなることが多い傾向にあります。また、初回の相談時には、トラブルの経緯や関連する書類(契約書、メール、メモなど)を準備しておくことで、専門家がスムーズに状況を理解し、適切なアドバイスを行いやすくなります。

さらに、専門家の選定も慎重に行う必要があります。可能であれば、フリーランスや企業間トラブルに詳しい弁護士や、実務経験の豊富な社労士に依頼すると安心です。初回相談が無料の専門家も多いため、気軽に相談を始めてみることをお勧めします。早期対応により、トラブルの拡大を防ぎ、最適な解決方法を見つけられるでしょう。

証拠を収集し整理する

トラブルを適切に解決するためには、客観的な証拠の収集が欠かせません。証拠がなければ、法的な主張を裏付けることが難しくなるため、発生した問題に関連するすべての資料を集め、整理しておく必要があります。

証拠として有用なものには、契約書、取引に関するメールやメッセージ、請求書、業務日報などがあります。また、口頭でのやり取りが問題となっている場合は、その内容を記録に残すことも重要です。例えば、会話内容を日時や場所とともにメモしておくと、後にそのメモが補足的な証拠として活用できる場合があります。

証拠の整理は、タイムラインに沿ってまとめると分かりやすくなります。時系列で問題の経緯を整理し、それぞれのポイントに関連する資料を添付すると、弁護士や関係者に状況を説明する際に役立ちます。さらに、証拠の保存には注意を払い、原本やデジタルデータのバックアップを確保しておくことも重要です。

適切な証拠を確保することで、自分の主張を法的に正当化しやすくなります。逆に、証拠が不十分な場合、状況が不利になることもあるため、トラブルが発生した時点で迅速に証拠の収集と整理を始めることが肝心です。

和解や交渉の可能性を探る

法的トラブルが発生した場合、裁判に至る前に和解や交渉の可能性を模索することが重要です。裁判は時間も費用もかかるため、双方が納得できる解決策を見つけることで、トラブルを早期に収束させられます。

交渉を始める際には、冷静な態度を保ち、感情的にならないことが大切です。特に、相手に対する批判や攻撃的な発言は避け、建設的な対話を心がけましょう。自分の主張を伝える際には、証拠に基づいた具体的な説明を行い、相手が納得しやすいような形で提案をすることが効果的です。

また、弁護士を通じて交渉を行うことで、専門的な視点から解決策を導き出せる場合もあります。弁護士が間に入ることで、感情的な対立が抑えられ、公正な合意に達する可能性が高まります。

和解の条件を話し合う際には、将来的なビジネス関係を考慮することも重要です。たとえトラブルが解決したとしても、その後の取引や評判に影響を及ぼさないよう、誠実に対応することが求められます。和解が成立した場合には、合意内容を文書化しておくことで、再度トラブルが発生するリスクを防げます。

裁判に進む前に交渉や和解を試みることで、法的負担を軽減し、トラブルを円満に解決する可能性が広がります。

まとめ

今回は、フリーランスが会社員から独立する際に顧客を引き抜くことの法的リスクやトラブル回避のポイントについて解説してきました。

独立を成功させるためには、競業避止義務や秘密保持義務、不正競争防止法などの関連法律を正しく理解し、適切な準備と行動を取ることが重要です。事前の計画立案や契約内容の確認、専門家への相談を通じて、リスクを最小限に抑えられます。

また、合法的な方法で顧客を獲得し、トラブルが発生した場合には迅速に対応することで、長期的な信頼関係を築くことが可能です。法令を遵守し、倫理的なビジネスを心がけることで、独立後のキャリアを安定させられるでしょう。

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