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海外リモートで働くフリーランスエンジニアが使う英文契約書のポイント

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はじめに

グローバルなビジネス環境が進む今、フリーランスエンジニアにとって海外クライアントとのリモート契約は大きなチャンスになっています。高報酬や最先端プロジェクトへの参画など多くのメリットがある一方、英文での契約書に不慣れだとリスクやトラブルを抱え込んでしまうことにもなりかねません。専門用語や法律的側面を正しく理解しないまま署名すれば、不利な条件を受け入れている可能性もあります。ここでは、英文契約書を交わす前に押さえておきたい基本的な条項の解説や、トラブルを避けるためのポイント、そして海外企業とのリモート案件をスムーズに進めるためのヒントを詳しく紹介していきます。

海外案件とリモート契約の現状

英語スキルとリモートワークの普及

グローバル案件を狙う背景

近年、リモートワークがIT業界で一般化し、物理的な距離を問わず高スキルのエンジニアを確保したい企業が増えています。日本からでも海外のスタートアップや大手企業の開発に参加できる機会が広がっており、英語が得意なフリーランスエンジニアにとって大きな収入アップやキャリア拡張のチャンスとなっています。欧米の技術トレンドをいち早く取り入れたプロジェクトに関わることで、新しい技術スタックや開発手法を学べる点もメリットです。

一方、クライアントとのコミュニケーションや契約が英語で進むことがほとんどのため、英語力が課題になる場合が多いです。技術コミュニケーションだけでなく、契約書に書かれた条文を理解し、自分の権利と責任をしっかり把握することが欠かせません。ここでの英語スキルとは単なる会話力だけでなく、法律用語や契約書特有の表現を読み解く力も含まれます。

リモートワークの高度化

リモートワーク自体はパンデミックを経て世界中で定着しており、オンライン会議ツールや共同作業ツールの充実によって、海外チームと実質的に時差くらいしか障害がない状況になっています。フリーランスエンジニアが時差を考慮しながら、クライアントと適切なスケジュールを共有できれば円滑にプロジェクトを進められるでしょう。むしろ時差を上手く利用して「日本側の夜中に作業する→海外の朝に成果が受け取れる」などのパターンを好む企業も存在します。

海外企業との契約で見られる特徴

請負と準委任の概念

日本国内では「請負契約」や「準委任契約」が主流ですが、海外では「Service Agreement」や「Consulting Agreement」など多様な名称の契約書が使われ、細かい法的概念も国や州によって異なります。必ずしも日本の民法における請負や準委任に対応しない場合が多く、「Deliverables(納品物)」「Scope of Work」「Payment Terms」などが中心に記載されていることが多いです。

フリーランスエンジニアとしては、どこまでが成果物の責任範囲で、どの程度の改修や追加要望に応じる必要があるかを明確にしておかないと、終わりのない修正要求に追われるリスクがあります。英文契約書では言葉の定義が曖昧だと後々問題になるため、納品や検収に相当するステップを具体的に合意しておくと安心です。

法律の準拠と裁判管轄

海外契約の大きな特徴は、準拠法や裁判管轄がどの国や地域に設定されているかがポイントとなることです。もしトラブルが起きたときにどの国の法律で解決を図るか、裁判所はどこになるかが契約書で定められるのが一般的で、「Governing Law and Jurisdiction」などの条項に記載されます。
場合によってはクライアント側が「自国の法律に従う」ことを要求し、フリーランスエンジニアが海外の法廷に呼び出されるリスクもゼロではありません。ほとんどのケースでは実際に訴訟になる可能性は低いですが、条文として目を通しておかないと危険です。

英文契約書で押さえるべき重要条項

Scope of Work(業務範囲)

明確な業務内容の記載

「Scope of Work」とは、どのようなサービスや開発作業をエンジニアが提供するかを定義する部分です。これが曖昧だと、追加機能や仕様変更を無償で対応しなければならない事態にもなりかねません。「This includes development of X feature, maintenance of Y system, bug fixes only related to Z module」など、具体的に書いてあるか確認しましょう。

また、クライアントが期待する成果物の形態(ドキュメント、ソースコード、テストケースなど)やリリース頻度、スプリント単位の進捗報告などもScope of Workに含める場合があります。フリーランスエンジニアとしては細かく書きすぎると融通が利きにくくなりますが、大枠としてどこまで対応するかは必ず明文化しておくと安全です。

追加要件と修正の扱い

海外の契約書でも、追加要件(Change Request)や修正については別途費用が発生する旨が定められることがあります。特に「Any changes or new features requested by the Client that are outside the original Scope of Work will be subject to additional fees and an updated timeline.」などの文言が一般的です。これが書かれていないと、クライアントが「この機能も最初から想定していた」と主張してタダ働きになってしまう可能性もあるため要注意です。

Payment Terms(支払い条件)

報酬形態とタイミング

英文契約書にはPayment Termsというセクションがあり、「月末締め翌月末払い」や「着手金○%、納品後○%」などの支払い方法が書かれます。海外の場合、時給制(Hourly Rate)か固定報酬か、あるいはマイルストーンごとの分割払いかなどバリエーションがあります。
特に海外企業だと、銀行振込の手数料や為替リスクを考慮する必要があります。PayPalやWiseといったオンライン送金サービスを使うことも多いですが、手数料や送金限度額などの細部を検討しておくと良いでしょう。契約書に「All transfer fees will be borne by the Client/Engineer」といった取り決めがあるのかチェックが必要です。

Late Payment(遅延支払い)の規定

万が一クライアントが支払いを遅延したときに、どのくらいの金利やペナルティが発生するかを明示しておくことは重要です。「If payment is not received within X days, a late fee of Y% per month will apply.」などの文言があると、相手に支払いを催促する際に合法的根拠を示しやすくなります。
とはいえ、実際に遅延金を徴収する流れになるのは稀かもしれませんが、契約書に記載があるだけで抑止力となり、支払いサイトを守ってもらいやすくなります。

Confidentiality(機密保持)

NDA(Non-Disclosure Agreement)の条項

多くの場合、英文契約書には機密保持条項が含まれ、プロジェクトで得た情報を第三者に漏らさないよう義務付けられます。特に海外案件ではビジネスモデルやコードの独自性が強いケースも多く、NDA違反が重大な損害をもたらす可能性があります。
「The Contractor shall not disclose any confidential information acquired in the performance of this agreement to any third party without prior written consent of the Company.」などの定型文があるか確認し、具体的にどこからどこまでが機密なのかを把握することが大切です。

契約終了後も継続するか

機密保持期間については「契約期間中のみ」なのか「契約終了後も○年間続く」のかが契約書で異なります。中には「無期限で機密保持を続ける」という条文もありますが、その場合フリーランスエンジニアがポートフォリオや実績としてプロジェクト内容を公開できなくなるリスクもあります。ポートフォリオとして公開したい場合は、クライアントの許可を取る必要があるのかどうか、契約前に話し合うとよいでしょう。

スムーズに契約を結ぶためのヒント

法律専門家や翻訳者の活用

自己判断だけで署名しない

英文契約書は一見すると定型のようでも、細かな表現に意外な落とし穴が隠されていることがあります。もし高額報酬や長期間の契約を交わすなら、数万円〜十数万円ほどの費用をかけて弁護士や英語に詳しいコンサルタントにレビューしてもらうのが賢明です。短期的には経費が増えますが、後々のリスクを回避できるので結果的に安上がりです。

運用に即した翻訳ドキュメント

契約書をそのまま英語で読むのが厳しい場合は、プロの翻訳者に日本語ドキュメントを作ってもらう方法もあります。そこに法律用語の注釈や背景説明を加えておくと、スコープ外の要件が追加されたときなどに素早く条文を参照できます。クライアントとのコミュニケーションでも、「条文の○○項に基づき、この対応は追加費用が必要です」などと根拠を示して説明できるため安心です。

コミュニケーションと確認プロセス

要求や期待のすり合わせ

英文契約書であっても、実際にはシステム開発やデザインの要件を別のドキュメントで定義しているケースが多いです。SOW(Statement of Work)や提案書などが付随する場合、それらをちゃんと読み込み、契約書との食い違いがないか確かめましょう。認識相違があれば契約前に指摘して修正してもらうべきです。
また、クライアントが慣れていない場合、契約書の文言が実際の開発フローと合わないことも少なくありません。円滑に進めるためには、納期や変更管理フローなどの運用面についても事前に「こうするとスムーズに作業できます」と提案し、理解を得ることが必要です。

リモート会議やメールで痕跡を残す

契約前後の交渉や変更依頼については、できるだけリモート会議(Zoomなど)の録画や、メール・チャットでのやり取りを記録として残すことがおすすめです。後から「そんな話はしていない」「口約束だ」と言われるリスクを回避でき、万が一紛争になっても交渉の経緯を証拠として提示しやすくなります。簡単なことであっても必ず文書(英語のメールなど)で確認を取る習慣を持つと、トラブルを最小化できるでしょう。

実際の英文化例と注目フレーズ

典型的な条文の例

Scope of Work:
The Engineer shall develop, maintain, and update the web application features as specified in the attached Statement of Work (SOW). Any additional features or changes requested by the Client beyond the SOW will require a separate Change Order and may incur additional fees and timeline adjustments.

このように「SOWに記載された機能だけを対象とし、追加は別料金」という姿勢が明記されている例です。フリーランスエンジニアがドキュメントを細かく詰めるほど、後で想定外の作業を強いられる可能性が減ります。

Payment Termsサンプル

Payment Terms:
Hourly Rate: USD XX.00 per hour
Billing Cycle: Invoices shall be submitted bi-weekly, with payment due within 14 days of receipt. Late payments are subject to a 1.5% monthly interest.

時間単価を明示し、請求サイクルや遅延金まで設定してある例です。遅延金に関してはパーセンテージが高すぎるとクライアントが難色を示すかもしれませんが、設定がないと支払い遅れのリスクが高まる可能性があります。

意味を取り違えやすいフレーズ

“Best Efforts”と“Commercially Reasonable Efforts”

“Best Efforts”と書かれると「可能な限り最善を尽くす義務」が生まれるため、ほぼ無制限に対応しなければならない危険があるかもしれません。より一般的なのは“Commercially Reasonable Efforts”で、「商業的に妥当な範囲で努力する」という表現です。フリーランスエンジニアが無理な追加対応を迫られないためにも、言葉の違いを注意深く確認しましょう。

“Indemnification”の扱い

“Indemnification(損害賠償責任)”は契約書の中で非常に重要な条項です。クライアントがエンジニアに対して、第三者への損害賠償や特許侵害などの請求が発生した場合に賠償を求める内容が含まれるかどうかを確認しなければなりません。どの範囲まで責任を負うのか、上限額はあるのかなどが書かれていないと、非常にリスクが高い契約となります。

まとめ

海外リモートの案件を受注するフリーランスエンジニアにとって、英文契約書をしっかり読み解き、条文の意味を正確に把握することは非常に重要です。Scope of WorkやPayment Terms、Confidentialityなどの主要項目を確認し、納品範囲や支払い条件、セキュリティ・機密保持のルールをクリアにしておかなければ、後々トラブルに直面するリスクが高まります。
一方で、英文契約書の正確な理解があれば適切な交渉が可能になり、報酬アップやリスク回避、継続的な海外案件へのアクセスといった多くのメリットを享受できます。必要に応じて専門家や翻訳者の力を借りたり、社内チームやクライアントと入念にディスカッションし、プロジェクト内容と合致した契約を結ぶことが、グローバルに活躍するフリーランスエンジニアとしての第一歩と言えるでしょう。

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この記事を書いた人

CHIHARU
CHIHARU /ライター

1992年生まれ、北海道出身。トレンドスポットとグルメ情報が大好きなフリーライター。 衣・食・住、暮らしに関する執筆をメインに活動している。 最近のマイブームは代々木上原のカフェ巡り。

この記事を監修した人

草島亜久斗
草島亜久斗 /監修者

大学在学中、FinTech領域、恋愛系マッチングサービス運営会社でインターンを実施。その後、人材会社でのインターンを経て、 インターン先の人材会社にマーケティング、メディア事業の採用枠として新卒入社し、オウンドメディアの立ち上げ業務に携わる。独立後、 フリーランスとしてマーケティング、SEO、メディア運営業務を行っている。

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