SIerの年収は低いのか。年収を上げる3つの方法も紹介

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分類別で見るSlerの年収

SIer（エスアイヤー）はIT技術の専門企業のことで、顧客に対してシステムの企画や設計、構築、運用まで提供します。また、SIerは顧客の要望に応じて、既存のシステムをカスタマイズしたり、新しいシステムを導入したりする役割も果たしています。情報系の企業への就職・転職を目指す方の中には、SIerへの就職を視野に入れている方も多いでしょう。

この記事では、SIerの年収について分野・企業に着目して紹介します。また、Slerの社員として年収を上げるためのコツについても併せて紹介します。

まずは分野別でみたSIerの特徴や年収について説明します。Slerは分野によって、以下の3種類に分類できます。

• メーカー系
• ユーザー系
• 独立系

メーカー系SIerで年収が高い企業

メーカー系のSIerは、製造業などの製品を提供する企業が、自社製品の導入や関連システムの構築を得意としています。製造業に特化した知識と経験を持ち、顧客の要件に合った効果的なソリューションを提供しています。また、製造業のプロセスにも詳しく、製品の開発から製造、販売まで担当しています。

日本国内で有名なSIerとして、NTTデータ・富士通・三菱電機情報システムズが挙げられます。それぞれ新卒採用の初任給や待遇をもとに、年収を算出しています。

NTTデータ

NTTデータは大手通信会社であるNTTのグループ企業であり、幅広い情報サービスを提供しています。

NTTデータ公式HPによると、大卒で入社した場合の初任給は約22万円です。ボーナスをはじめ、住宅補助や自立支援一時金なども支給されるのを考慮すると、年収は350〜400万円と予想されます。

富士通

富士通は情報通信技術を中心に、ハードウェアやシステムソリューションを提供するメーカー系SIerです。

富士通公式HPによると、大卒で入社した場合の初任給は約25万円、ボーナスを含んだ年収は約443万円です。

三菱電機情報システムズ

三菱電機情報システムズは三菱電機グループの一員で、製造業を中心に幅広いSIサービスを提供しています。

三菱電機情報システムズ公式HPによると、大卒で入社した場合の初任給は約23万円です。ボーナスや住宅手当を含めると、年収は約400万円と予想されます。

ユーザー系SIerで年収が高い企業

ユーザー系のSIerは、主に親会社の業務システムの要件定義から開発・導入・運用までを行う企業です。

現場のニーズを把握しながら最適なシステムを提供するため、密なコミュニケーションが重視されます。また、ユーザー系SIerでは長期的なパートナーシップを築けるのがメリットです。導入後のカスタマイズや保守サポートなど、納品先のシステムに対して安全に運用できるよう、長期的なサポートを提供しています。

日本国内で有名なユーザー系SIerには、以下のような企業があります。

日立システムズ

日立システムズでは、製造業や公共機関向けに幅広いITソリューションを提供しています。

日立グループの一員として、高度な技術力とグローバルな展望を持ち合わせ、大規模・複雑なプロジェクトにも対応可能なユーザー系Slerです。

日立システムズ公式HPによると、大卒で入社した場合の初任給は約23万円、ボーナスを含んだ年収は約350〜400万円です。

ソフトバンクテクノロジー

ソフトバンクテクノロジーは通信・エネルギー分野を中心に、多様な業界へのソリューションを展開しているユーザー系Slerです。ソフトバンクグループの一員として、革新的なテクノロジーを積極的に活用し、IoTやAIなどの先進技術を導入した新しいソリューションを展開しています。

ソフトバンクテクノロジー公式HPによると、大卒で入社した場合の初任給は25万円であるため、ボーナスを考慮すると年収は約400万円です。また、在学中の実績などで専門的な知識を有していると認められた応募者は、早い段階で活躍できる代わりに高収入を得られる「グレードスキップ制度」を導入しています。

独立系SIerで年収が高い企業

独立系SIerは、他の大手IT企業に所属せず、独立してシステム開発やITコンサルティングなどのサービスを提供する企業のことを指します。独立系SIerの具体例として、大塚商会やオービックが挙げられます。

独立系SIerは、個別のニーズに応じた専門的なサービスを提供することで、多様な業界や企業に貢献しています。

大塚商会の大卒の初任給は、公式HPによると固定給で26万円です。住宅手当や超過勤務手当（全額支給）、地域手当が充実しており、年収にすると約400万円です。

オービックの初任給は、公式HPによると諸手当を含んで30〜31万円であるため、年収にすると約450万円です。オービックは独立系Slerの中でも年収が高い企業に位置しており、2022年3月期の有価証券報告書によると社員全体の平均年収は959万円にのぼります。

年収順で見る具体的なSIer企業

次に社員全体の年収について、各社の有価証券報告の情報をもとに調査しました。

年収順に1〜5位のSIer企業を紹介します。

1位　野村総合研究所（NRI）　1,242万円

野村総合研究所（NRI）の平均年収は、2023年3月期（第58期）の有価証券報告書によると、約1,242万円です。2022年度の平均年収は約1,232万円であったため、2023年の平均年収は微増しています。

野村総合研究所の年収が高いのは、ビジネスコンサル・ITコンサルなどで上流コンサル（クライアントのビジネス戦略や課題の診断・立案などの初期段階）を担当しているのが主な理由です。

コンサルティング業界において上流ほど利益率が高くなる理由は、クライアントのビジネス全体に関わる重要な決定や戦略の策定に関与することが多いため、高度な専門知識と深い洞察力が求められるからです。

クライアントのビジネスの方向性を左右する重要な判断を行うことが多く、リスクと責任も高くなります。コンサルティングファームは、これらのリスクを背負ってクライアントに対して価値を提供しますが、その代償として高い報酬を求めることがあります。

2位　三菱総合研究所（MRI）　1,024万円

三菱総合研究所は三菱グループに属しており、金融、エネルギー、製造、公共、ICTなど幅広い産業分野でプロジェクトを展開しています。

三菱総合研究所（MRI）の平均年収は、2022年9月期（第53期）の有価証券報告書によると約1,024万円です。2021年度の平均年収は約1,111万円であったため、2022年の平均年収は微減しています。

3位　SRAホールディングス　1,125万円

SRAホールディングスではITコンサルティングやシステム開発、インフラ構築、クラウドサービス、セキュリティ対策、データ分析など多彩なサービスを提供しています。SRAは「Science Research Associates」の略称です。

SRAホールディングスは金融業界をはじめ公共、製造、通信など様々な業界に向けて幅広いプロジェクトを実施しています。高い技術力と幅広いサービス提供により、多くのクライアントから信頼されているSIer企業です。

SRAホールディングスの年収は、2023年3月期（第33期）有価証券報告書によると、約1,125万円です。2022年3月期は約1,081万円であり、年収は微増しています。

4位　電通国際情報サービス（ISID）　1,128万円

電通国際情報サービス（ISID）は、電通グループに属するSIer企業です。主に情報システムの企画・設計・開発・運用・保守などのサービスを提供しています。広告業界の専門性と技術力を活かし、マーケティングテクノロジーやデジタルプラットフォームの構築、データ分析などの分野が盛んです。

電通国際情報サービスはグローバルに展開しており、海外拠点もあります。顧客の多様なニーズに応えるため、多岐にわたるITサービスを提供している企業です。

電通国際情報サービスの年収は、2022年12月期（第48期）の有価証券報告書によると約1,128万円です。2021年12月期は約1,057万円であったため、微増しています。

5位　オービック　959万円

オービックは主に中小企業向けに経営支援やERP（Enterprise Resource Planning）ソリューションを提供しているSIer企業です。ERPパッケージソフトウェア「SOPHIA」を中心に開発・提供しています。SOPHIAは会計、販売、購買、生産管理などの業務を統合的に管理するソフトウェアで、中小企業の業務効率化や情報管理のサポートに活用されています。

オービックの年収は、2022年3月期の有価証券報告書によると959万円です。2021年3月期は933万円であるため、年収は微増しています。

SIerが年収を上げる3つの方法とは

本業と並行して副業に取り組む

SIerのエンジニアが年収を上げるために副業に取り組むことで、新たな収入源を確保できます。これにより、本業の給与にプラスして収入を得ることができます。本業で培ったスキルを応用することができる機会が副業には多く、新しい技術や分野に挑戦することで、自己成長が促進されるメリットもあります。

ただし、副業を行う際には、現在の職場の副業に関するルールを把握しておくことが重要です。副業が禁止されている場合や、制約がある場合もありますので注意が必要です。

フリーランスとして独立する

数年働いているものの給料がなかなか上がらない場合や、クライアントを自身で選択したい場合は、フリーランスとして独立することで年収アップを目指すのも良い方法です。

フリーランスエンジニアの多くが、プロジェクト単位や時間単位で報酬を設定できます。AWS、Azure、Google Cloud Platformなどクラウドコンピューティングのスキルや、データ分析・ビッグデータなど需要の高いスキルを持つエンジニアは、フリーランスでも高単価案件が多い傾向にあります。

独立することで現状以上の高収入を目指せますが、収入が不安定になるデメリットもあります。しかし、自分のペースで働くことができ、プライベートと仕事のバランスが取りやすくなるため、精神的な安定にもつながります。

スキルを高めてから転職する

SIerのエンジニアが年収を上げるために、スキルを高めてから転職することは効果的な方法です。新しい技術やスキルを習得して実務で活かすことで市場価値が向上し、転職によってより高い給与を交渉できます。

具体例として、クラウドコンピューティングのスペシャリストになることを考えてみましょう。SIerのエンジニアがAWSやAzureなどのクラウドプロバイダーの認定資格を取得し、クラウド関連のプロジェクトに参加し経験を積み、実績を作ることで、市場価値が向上します。

また、人工知能（AI）やデータサイエンスの分野も注目されており、SIerのエンジニアが機械学習やデータ解析のスキルを磨くことで、AIプロジェクトに参加したり、データ駆動型のプロジェクトを担当できたりなどの機会が増えます。

SIerを選ぶ時の5つの基準

Slerエンジニアとして働きたい方にとって、失敗しない会社選びは重要です。ここでは、就職・転職先のSlerを選ぶ時の基準について紹介します。

業績が安定しているか

Sierエンジニアとして就職を考える際に業績の安定性を見ることは重要です。安定した企業は安心して長期的なキャリアを築ける可能性が高く、給与や福利厚生も安定しています。

業績を見極める方法としては、財務諸表や業界評価を調査し、過去数年間の業績推移や競合他社との比較を行うことが有効です。また、企業の信頼性や顧客満足度をリサーチするのもおすすめです。

さまざまな業界とつながりがあるか・特定業界に強みがあるか

Sierエンジニアとして就職を考える際、さまざまな業界とつながりがあるか・特定業界に強みがあるかを調査することで、今後多様なプロジェクト経験に携われるのか、企業として安定性はあるのかを見極められます。特に強みがある特定業界での実績は、自身のキャリアアップに有利に働きます。

企業の特性を知るには、各社ウェブサイトの採用情報で実績・顧客情報を確認し、業界への取り組みを調査しましょう。

元請けで案件を獲得しているか

Sierエンジニアとして就職を考える際、元請けで案件を獲得しているかを知ることは重要です。元請け案件は直接クライアントと取引しているため、収益性が高く、企業の安定性が高い傾向にあります。

企業のウェブサイトや実績を確認し、「大手企業との直接取引のシステム開発・導入プロジェクト」「政府機関や自治体との契約による公共システムの構築プロジェクト」など、元請け案件を積極的に行っている企業を選ぶと良いでしょう。

営業力が高く実績はあるか

Sierエンジニアとして就職を考える際、営業力が高く実績があるかを知ることは重要です。営業力がある企業は安定したプロジェクトを獲得しやすく、エンジニアにとって安心感があります。また、実績が豊富な企業は信頼性が高く、実績を確認することで企業の能力と信用性を見極めることができます。企業のウェブサイトや実績を調査し、「豊富な案件をこなしているか」「顧客からのリピート依頼が多いか」「新規案件の獲得に積極的か」を確認しましょう。

自分が納得できる待遇か

給与や福利厚生、ワークライフバランスについて自分が納得できる待遇かを確認し、長期的なキャリアと満足度を確保します。

企業の採用情報を見ることも重要ですが、従業員の声を集計しているサイトで調査することで、実際の待遇面を見極めることができます。

SIerの年収関連でよくある質問

ここまで、SIerの年収や、年収を上げる方法について紹介してきました。

ここではSIerの年収について、よくある質問とその回答を紹介します。

SIerの平均年収はいくらくらいか

SIerは大手IT企業やシステム開発を専門とする企業が多く、エンジニアの給与水準は比較的高い傾向にあります。

dodaによると、日本国内のSIerエンジニアの平均年収は約400万円から始まり、経験者や上級職では800万円以上になることもあります。

SIerが年収を上げるために身につけるべきスキルとは

SIerが転職、またはフリーランスに転身して年収を上げるためには、システム開発についての一連の流れを身につけておく必要があります。

要件定義

SIerの作業工程における要件定義は、システムの開発や導入に先立ち、顧客とのコミュニケーションを通じてシステム要件を明確にする重要なステップです。例えば新しい販売管理システムを構築する場合、要件定義のプロセスではまず、顧客との面談を行い、現在の課題やニーズを理解します。

次にヒアリングの結果を整理し、具体的な要件を洗い出します。例えば、顧客が在庫管理の効率化を求めている場合、リアルタイムな在庫情報の管理、注文処理の自動化などが要件として浮かび上がります。

洗い出した要件を「システムは在庫情報をリアルタイムに反映し、注文処理は在庫切れを避けるよう自動化すること」とし、詳細な仕様書にまとめます。顧客と要件仕様書を共有し、正確かつ完全な要件を確認してもらいます。顧客からの承認を得ることで、後続の工程がスムーズに進められます。

外部設計

SIerの作業工程における外部設計は、要件定義を基にシステムの基本的な構造やインターフェースを設計するステップです。

販売管理システムの外部設計を想定した場合、まずシステム構成では顧客情報管理モジュールや在庫管理モジュールが含まれます。

次に、システムで使用するデータベースのテーブル構造やデータの関連性を定義します。販売管理システムであれば、顧客情報と注文情報を紐付けるテーブルが必要です。そして、ユーザーが注文を行うためのウェブインターフェースや他システムとのデータ連携の仕組みを設計します。最後に顧客からの注文が在庫管理を経て出荷処理に繋がるデータフローなど、システム内でのデータの流れを可視化するデータフロー図を作成します。

内部設計（プログラム設計）

SIerの作業工程における内部設計は、外部設計で定義されたシステムの詳細な実装方法を計画する段階です。販売管理システムの内部設計の場合、まず在庫データの格納方法や更新処理の手順が定義されます。

次にそれぞれの機能において、エラーハンドリングや自動発注のロジックなど、具体的な処理手順やアルゴリズムを設計します。そして顧客情報や商品情報のデータ形式やデータベーステーブルの設計を行います。システム内のモジュール間や外部システムとのインターフェース仕様を定義します。

開発（プログラミング）

SIerエンジニアの作業工程の開発には、Java、Pythonなどプログラミング言語のスキルを極めることと、システム開発の経験が不可欠です。

例えば、Webアプリケーションの開発ならDjangoやSpringなどHTML/CSSのフロントエンドとバックエンドの知識が必要。また、MySQLやPostgreSQLなどデータベースの設計・クエリ作成も重要で、セキュリティやテスト手法の理解がプロジェクトの成功につながります。チームコミュニケーションや問題解決能力も成果を上げるために欠かせないスキルです。

テスト

SIerエンジニアのテストに必要なスキルは、テスト計画の策定やテストケースの作成やバグの発見と報告などです。

具体例として、SeleniumやJUnitなど自動化テストツールの使用スキルや、ユーザーの視点を理解し、実際の使用を想定した網羅的なテストを実施する能力が重要です。

バグの再現性を高めるための環境構築や適切なログ分析も不可欠です。また、チームとの協力やコミュニケーション力もテストプロセスの成功に影響します。

システム移行

SIerエンジニアのシステム移行に必要なスキルは、現行システムの理解と新システムの計画やデータ移行、トラブルシューティングです。

例えば既存システムのコード解析やデータベースのスキーマ変更、データのマッピング・変換、移行テストの実施、トラブル対応の経験が挙げられます。

移行中のリスクを最小限に抑えるために、計画の段階から慎重に検討し、適切な対応策を練る必要があります。

運用・保守

SIerエンジニアの運用・保守に必要なスキルは、システムの安定稼働や問題解決能力です。

障害対応やバグ修正、パフォーマンスチューニング、セキュリティ対策、定期的なバックアップ・データ復旧、ユーザーサポートが保守・運用の具体例として挙げられます。

また、ログ解析やモニタリングツールの適用、チームとの円滑なコミュニケーションも重要です。

継続的な運用改善と顧客満足向上のために、高い専門知識と問題解決力が求められます。

まとめ

今回はSIerの年収と、年収を上げるための方法について紹介してきました。SIerエンジニアとして働くには、就職先の年収はもちろん、どのようなプロジェクトに関与しているのか、顧客と長期的なパートナーシップを築けているかを事前に調査することが重要です。

現在の年収や仕事内容に不安を感じている方は、自身のスキルを整理した上で、転職だけでなく副業やフリーランスとして独立する将来も視野に入れておくと良いでしょう。

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