【フリーランスは知っておこう】遅延損害金とは?計算方法や上限について説明!
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目次
はじめに
フリーランスとして働く上で、契約の遅延や支払いが滞った場合に発生する「遅延損害金」を知っておくことは非常に重要です。
本記事では、「遅延損害金とは何か?」という基本的なことから、法定利率や約定利率の違い、そして計算方法までを詳しく解説します。
さらに、契約内容によっては遅延損害金の上限がないケースもあるため、その注意点についても触れます。
<この記事を読むメリット>
- 遅延損害金と延滞金、利息との違いを正確に理解できる
- 法定利率と約定利率の違いを知り、適切に対応できる
- 遅延損害金の計算方法を身につけ、実務に役立てられる
- 契約内容に応じた遅延損害金の利率上限を把握し、トラブルを未然に防げる
遅延損害金に関する知識を深め、フリーランスとして安心して契約を進めたい方は、ぜひ最後までお読みください!
遅延損害金とは?
業務委託で働くフリーランスや個人事業主にとって、最も大きなリスクの一つが「報酬の未払いや遅延」です。
2024年11月以降は「フリーランス保護法」によって、報酬未払いや遅延は法的に禁止されますが、それでも被害がゼロになることはないでしょう。
同時に、業務委託を依頼する側(クライアント側)も予定された納期通りに業務が完了しない場合、損害を被る可能性もあります。
遅延損害金は、上記のような契約に基づく債務が期限内に履行されなかった場合、遅延に伴う損害を補填するために請求される金銭です。
ただし、遅延損害金を請求するためには以下のケースに該当し、尚かつ著しい損害が発生した時に限ります。
履行不能
「履行不能」とは、契約上の義務を遂行することが物理的または法律的に不可能になった場合を指します。
例えば、フリーランスが納品すべき仕事を行う前に不可抗力(火災や自然災害など)によって履行不可能になった場合、履行不能となります。
この場合、基本的にフリーランス側に責任がない限り遅延損害金は発生しませんが、フリーランス自身の過失による履行不能(技術的なミスや契約違反など)であれば、損害賠償を請求される可能性はゼロではありません。
履行遅滞
「履行遅滞」とは、契約に定められた期限を過ぎても義務を果たさない状態です。
例えば、フリーランスが納期を守らなかった場合が該当します。
この場合、納期遅れによる損害を補填するために、相手方が遅延損害金を請求できる可能性があります。
遅延損害金は、契約書に定められた利率で計算されることが多いですが、特に定めがない場合は法定利率(年3%)が適用されるのが一般的です。
不完全履行
「不完全履行」は、契約内容が一部しか履行されていない、または要求された品質基準を満たさない状態を指します。
例えば、フリーランスが定められた業務の一部を怠ったり、品質に問題がある成果物を納品した場合が該当します。
これによってクライアントに損害が発生した場合、クライアントは遅延損害金を請求することが可能です。
ただし、損害が軽微であった場合や、納品物が契約範囲内で許容できる品質であると判断される場合は、損害賠償が認められないこともあります。
遅延損害金と延滞金の違い
遅延損害金 | 延滞金 | |
定義 | 契約に基づく義務の履行が遅れた場合に発生する損害賠償金 | 法定の支払義務(税金や公共料金)の支払い遅延に対して課される罰金 |
対象 | 商取引や業務委託契約などの民間契約 | 税金、保険料、公共料金などの法定支払い |
計算基準 | 債務額 × 遅延損害金利率 × 延滞日数 ÷ 365 | 税法や法定の規定に基づく延滞利率 |
利率 | 契約で定められた利率または法定利率(現行3%) | 国や自治体が定めた延滞利率(通常年利14.6%前後) |
発生原因 | 契約義務の履行が遅れた場合 | 税金や公共料金などの支払い遅延 |
主な適用分野 | 契約に基づく商取引、業務委託 | 税金、年金、保険料、公共料金 |
法的根拠 | 民法などの契約法に基づく | 税法や各種行政法規 |
目的 | 遅延により相手方が被った損害を補填するため | 法定支払い義務を守らせるための罰則 |
遅延損害金と間違えやすいのが「延滞金」です。
遅延損害金は、契約に基づく義務の履行が遅れた場合に発生する賠償金を指します。
主に商取引や業務委託契約で用いられ、契約内容を守らなかったことによって発生する損害を補償するものです。
一方で、延滞金は、税金や公共料金の支払い遅延に対して政府や行政機関が定めた罰金です。
延滞金の利率は法律で定められており、遅延損害金とは目的や適用範囲が異なります。
遅延損害金における法定利率と約定利率について
法定利率 | 約定利率 | |
定義 | 法律で定められた利率 | 契約当事者が事前に合意して設定する利率 |
適用場面 | 契約書で利率の取り決めがない場合 | 契約書に明記されたている場合 |
現行利率 | 年3%(2020年4月の民法改正以降) | 当事者間で自由に設定可能 |
利率の変更 | 市場金利の状況により3年ごとに見直しされる可能性あり | 契約時に定めた固定の利率が適用される |
適用例 | 契約書に利率の記載がない場合に自動的に適用 | 契約書に「遅延損害金の利率」を明記する場合に適用 |
では、遅延損害金の請求額はどのようにして計算されるのでしょうか?
結論からいえば、遅延損害金の計算方法は、主に「法定利率」と「約定利率」によって決まります。
ここでは、法定利率と約定利率の考え方を簡単に解説します。
法定利率とは
「法定利率」とは、法律で定められている利率のことです。
遅延損害金を請求する際に、契約当事者間で特別に利率を取り決めていない場合、自動的にこの法定利率が適用されます。
2020年の民法改正により、現在の日本の法定利率は年3%に設定されていますが、この利率は市場の金利に応じて3年ごとに見直される仕組みになっています。
約定利率とは
「約定利率」とは、契約当事者が事前に合意して設定する利率です。
例えば、フリーランスの業務委託契約書に「遅延損害金の利率を年10%とする」といった明記がある場合、その利率が適用されます。
簡単にいえば、「約」束により事前に「定」められた「利率」のことです。
約定利率は、取引のリスクを反映して契約で自由に設定できるため、業種や契約内容によって様々な利率が採用されます。
ただし、約定利率には上限があり、その上限は利息制限法により定められています。
具体的には、元本額によって異なり、100万円以上の債務では年利15%が上限です。
このため、法定利率より高い利率を設定すること自体は可能ですが、利息制限法の上限を超える部分は無効となります。
遅延損害金と利息の違いは
約定利息 | 遅延利息 | |
定義 | 契約で合意された利率に基づいて、正常な支払いに対して発生する利息 | 支払いが期日を過ぎた際に、遅延損害として発生する利息 |
発生タイミング | 契約通りに支払いが行われる場合 | 支払いが期日を過ぎて遅延した場合 |
目的 | 資金を貸し付けた側が、その対価として利息を受け取るため | 債務者が支払いを遅延した場合に損害を補填するため |
適用場面 | 通常の取引や貸付金の契約による利息 | 支払い遅延や債務不履行があった場合の賠償 |
利率の設定方法 | 契約書で事前に取り決めた利率(約定利率) | 契約書で定めた遅延利率または法定利率(現在は年3%) |
計算基準 | 債務額 × 約定利率 × 期間 | 債務額 × 遅延利率 × 遅延日数 |
主な適用分野 | 貸付金、報酬の契約など、期日通りの支払いが行われる場合 | 支払いの遅延、未払い、業務の履行遅延など |
遅延損害金の計算をする際に、重要になってくるのが「約定利息」と「遅延利息」です。
遅延損害金は、そもそも業務または支払いの遅延により発生した損害に対して請求できる金額のことですが、利息によってその額がかなり変わってきます。
そのため、遅延損害金を正確に計算するためには、まず「約定利息」と「遅延利息」の違いを理解しましょう。
約定利息
「約定利息」とは、契約の当事者同士が合意して定めた利率に基づいて支払う利息のことです。
先述した「約定利率」とよく似ていますが、約定利息は実際に支払われるべき利息の金額を指します。
約定利率は、あくまでも利息を計算するために用いる割合(%)です。
フリーランスや個人事業主がクライアントと契約を結ぶ際、報酬の支払いに関して約定利息を設定しておくことがあり、例えば「支払期日までに支払われた場合、報酬に対して年利5%の利息を加算する」といった形で契約に盛り込まれます。
契約が正常に履行された場合に発生し、支払いの遅延がない限り通常の利息として機能します。
つまり、報酬支払いの遅延がなくても、約定利息として設定された年利に基づき、利息が発生することがあります。
遅延利息
「遅延利息」は、支払いが期日を過ぎた場合に加算される利息です。
約定利息とは異なり、契約が遅延した場合にのみ適用される利息で、法的に定められた損害賠償の一部として発生します。
具体的には、報酬や債務の支払いが遅れた場合、その遅延日数に応じて遅延利息が発生する仕組みです。
なお、遅延利息の計算には、法定利率や約定利率が適用されます。
契約書で遅延損害金の利率を定めていない場合、法定利率(現在は年3%)が適用されますが、契約で高い利率を定めた場合はその利率が適用されます。
遅延損害金の計算方法
では、遅延損害金は具体的にどのように計算すればよいのでしょうか?
ここからは、遅延損害金の計算例を解説します。
遅延損害金=債務額×遅延損害金利率×延滞日数÷365(閏年の場合は366)
遅延損害金を正確に計算するためには、債務額、遅延損害金利率、そして延滞日数が必要です。
計算式は以下の通りです。
遅延損害金=債務額×遅延損害金利率×延滞日数÷365
(※閏年の場合は366)
(例)フリーランスの報酬遅延
- 債務額:100万円
- 遅延損害金利率:契約で定められた約定利率10%(もしくは法定利率3%)
- 延滞日数:30日
1.約定利率を使った計算
契約書で「遅延損害金の利率を年10%とする」と約定されている場合、以下のように計算します。
遅延損害金=100万円 × 10% × 30日 ÷ 365
=100万円 × 0.10 × 30 ÷ 365
=8,219円
この場合、債務者が30日間遅延した結果、8,219円の遅延損害金を支払う義務が発生します。
2.法定利率を使った計算
契約で特に利率が定められていない場合、法定利率3%が適用されます。
遅延損害金=100万円 × 3% × 30日 ÷ 365
=100万円 × 0.03 × 30 ÷ 365
=2,466円
つまり、法定利率が適用された場合、債務者が支払う遅延損害金は2,466円です。
債務額とは、返済期限が到来した債務額のこと
なお、ここでいう「債務額」とは、返済期限が到来した債務額のことです。
つまり、契約や合意に基づいて支払われるべき金額が、期日までに支払われなかった場合、その未払い金額が「債務額」となります。
具体的には、以下のような状況が該当します。
- フリーランスがクライアントに対して100万円の業務報酬を請求していて、契約上の支払期限を過ぎてもその報酬が支払われない場合、この100万円が「債務額」となります。
- お金を貸した場合、契約で定めた返済期日が過ぎても返済されなかった元金が「債務額」です。この金額に対して遅延損害金が発生します。
遅延損害金の計算式では、この返済期限が到来した債務額を基に、利率と延滞日数を掛け合わせて損害金を算出します。
ですので、債務額が正確に定義されていることが、遅延損害金の計算において重要なポイントです。
契約によっては利率の上限が無い?
遅延損害金は、契約上の支払いが遅れた場合に発生する補償金の一種です。
しかし、契約の種類によって、その遅延損害金に対する利率に法的な上限がある場合と、上限が設けられていない場合があります。
フリーランスや個人事業主がクライアントと契約を結ぶ際、この利率が適切に設定されているかどうかを確認することは非常に重要です。
ここでは、代表的な契約における遅延損害金の利率の上限について詳しく解説します。
消費者契約法の場合は上限を年14.6%
まず、消費者契約法では、事業者と消費者の間で結ばれる契約における遅延損害金の利率に上限が定められています。
具体的には、年14.6%が上限であり、これを超える利率は無効です。
例えば、クレジットカードのショッピング利用や賃貸契約などが該当します。
この上限は消費者契約の全てに適用され、事業者が設定できる最大の遅延損害金利率です。
なお、クレジットカードの遅延損害金の規約において、14.6%と記載されていることが多いのは、この法律に基づいているためです。
金銭消費貸借契約の場合、利息制限法上と元本額によって利率の上限に変動あり
次に、金銭消費貸借契約(お金の貸し借りに関する契約)における遅延損害金の利率は、利息制限法によって規制されています。
利息制限法は、借主が過度な負担を負わないようにするため、元本額に応じた利率の上限を定めたものです。
- 元本が10万円未満の場合:年利20%
- 元本が10万円以上100万円未満の場合:年利18%
- 元本が100万円以上の場合:年利15%
さらに、遅延損害金に関しては、この制限利率の1.46倍までが許容されています。
したがって、元本額が大きくなるほど、適用される遅延損害金の利率も低くなります。
例えば、100万円の元本に対する遅延損害金は、最大で年利21.9%までしか適用されません。
この仕組みは、特に金銭を貸し借りする場合に、借主が過剰な利息を支払わないようにするための重要な保護策です。
消費者契約法と同様、遅延損害金の利率は適切に制限されており、法律に反する場合は無効となります。
上記2つ以外のその他の契約における遅延損害金については、利率の上限は無い
一方で、消費者契約法や金銭消費貸借契約以外の契約、例えば企業同士の取引や製品の売買契約においては、遅延損害金の利率に特定の上限が設定されていない場合が多いです。
つまり、法律上の制限が存在しないため、当事者間の合意によって自由に利率を設定できます。
例えば、企業同士の商取引契約において、遅延損害金の利率が20%や30%といった高利率に設定されることも理論的には可能です。
このような契約では、契約自由の原則に基づき、当事者が自由に利率を設定できるため、消費者契約法や利息制限法のような制約を受けません。
とはいえ、あまりに法外な利率は無効とされる場合もある
しかし、遅延損害金の利率があまりに高額である場合、民法90条により、公序良俗に反するとして無効とされることがあります。
例えば、契約書で「遅延損害金の利率を年80%に設定する」といったような場合、契約自由の原則があるとはいえ、過度に高い利率は裁判所によって無効と判断される可能性が高いです。
公序良俗に反する契約条項は無効となるため、契約時には合理的な範囲内で遅延損害金の利率を設定することが求められます。
企業同士の契約においても、実務上は法外な利率が適用されることは避けるべきです。
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まとめ
遅延損害金とは、債務の履行が遅れた場合に発生する金銭的なペナルティであり、フリーランスとして契約を行う際には避けて通れない重要なポイントです。
本記事では、履行不能や履行遅滞における遅延損害金の基本的な仕組みから、法定利率と約定利率の違い、遅延損害金の計算方法、さらに契約内容による利率の上限についても詳しく説明しました。
遅延損害金は、契約における信頼関係や取引のスムーズさを保つために必要不可欠なルールです。
今後も法改正やビジネスの変化により、遅延損害金の取り扱いや利率の基準が見直される可能性があります。
フリーランスとしては、常に最新の情報をキャッチアップし、契約時にはしっかりと条件を確認しておくことが求められます。
本記事の内容をもとに、日々の業務で契約トラブルを防ぎ、より良い取引関係を築く一助として活用していただければ幸いです。
「エンジニアスタイルマガジン」では、今後もこういったフリーランスエンジニアにとって役立つ最新情報を随時お届けいたします。
それでは、また別の記事でお会いしましょう。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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