FORTRAN(フォートラン) の歴史とは?現在でも使われている背景と将来性
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目次
FORTRAN(フォートラン) の歴史
FORTRANは古くから存在するプログラミング言語のひとつで、数学や科学の分野において、今日まで長く使われてきました。今回は、そんなFORTRANの歴史・現状・将来性について解説します。FORTRANに興味がある人にとって役立つ情報になるので、ぜひ参考にしてみてください。
FORTRAN(フォートラン) は1954年にジョン・バッカス氏によって考案され、多くの科学者に使われていた
FORTRANは1954年にIBMのジョン・バッカスによって考案された、世界最初の高水準言語であり、科学技術計算に向いた手続き型プログラミング言語です。1957年に最初となるコンパイラが公開され、その後いくつかのバージョンがリリースされました。その中で重要なバージョンとなるのが1977年リリースのFORTRAN 77です。このバージョンによって配列処理・制御構造・文字列処理などの機能が改善され、一般利用が広まりました。
その後FORTRAN 90とFORTRAN 95がリリースされ、これらのバージョンではモジュール化や動的メモリ割り当てなどの新機能が追加されています。FORTRAN 2003およびFORTRAN 2008では、オブジェクト指向プログラミングのサポートや、並列処理などの高度な機能が追加されました。最新バージョンは Fortran 2018 です。このバージョンでは、C言語との相互運用性や並列処理機能がさらに強化されています。
FORTRAN(フォートラン)は計算処理の幅が広がりさらに普及
FORTRANは1960年代から1980年代にかけてのコンピュータの主要なプログラミング言語であり、その時代のメインフレームコンピュータやスーパーコンピュータにおいてサポートされていました。科学者たちはFORTRANを使用して自分たちの研究やプロジェクトを実行し、計算機上で大規模なシミュレーションやデータ処理を行っています。
また2008年のFORTRAN2008からは、計算処理の幅が更に広がるアップデートとなりました。例えば、共有メモリ並列処理やコルーチンのサポートなど、並列処理に関連する機能が強化されています。これにより、マルチコアプロセッサや並列計算機を効果的に活用して高性能な計算処理を実行可能となりました。よって現在でも、FORTRANは一部の科学研究や数値計算において重要な役割を果たしており、特に高性能コンピューティングや大規模シミュレーションにおいて使用されています。
FORTRAN(フォートラン) の現在は?何ができるのか
FORTRANは数値計算や科学技術計算に特化した特徴を持っており、数十年間にわたって広く使用されてきました。では、FORTRANの現在の状況はどうなっているのでしょうか。現代のニーズに適応しているのか、どのようなことができるのか、以下で詳しく解説します。
FORTRAN(フォートラン) で何ができる?
FORTRANは数値計算を目的として設計された言語で、その特長は高性能な数値演算と効率的なループ処理です。数式や数学的モデルを直接表現しやすく、複雑な計算処理を扱うことができます。またFORTRANの配列処理能力も強力であり、大量の数値データを効率的に処理することが可能です。多次元配列をサポートしており、行列計算やベクトル演算なども容易に実行できます。
さらに、FORTRANには豊富な数学関数や数値計算ライブラリが存在するのも特徴的です。これらのライブラリには、微分方程式の解法・行列の対角化・統計処理などの高度な数値処理を行うための機能が含まれています。これにより、FORTRANを使用して膨大な量の計算処理や数値データ解析を効率的に行うことが可能です。科学技術計算・シミュレーション・データ解析などの分野でFORTRANは依然として利用されています。
FORTRAN(フォートラン) はどこで使われているのか
数値計算・科学技術計算の分野で使われており、特にスーパーコンピュータでの使用が多い印象です。その理由は並列計算の並列性を明示的に書けて最適化しやすい・他の言語より速いなどがあります。FORTRANの優れた数値計算能力と並列処理のサポートにより、科学技術計算の大規模なプロジェクトや高速な計算処理が実現可能です。このことから、現在においてもNASAやDoEといった政府機関の優秀な科学者たちが、スーパーコンピューター上でFORTRANを使用しています。
またFORTRANは物理学科でも使用されています。例えば、東京大学理学部地球惑星物理学科向けの演習科目「地球惑星物理学演習」では、FORTRANを用いた計算物理学入門の解説が行われており誰でも閲覧可能です。また、筑波大学理工学群物理学類の授業では、FORTRANを用いた計算物理学入門の解説が行われています。この他にも、天文学・地球科学・化学・生物学など、さまざまな科学研究分野でFORTRANが重要な役割を果たしているのも事実です。
FORTRAN(フォートラン) の将来性は?なぜ今も使われているのか
FORTRANはなぜ今でも広く使われているのでしょうか。FORTRANは古い言語でありながら、その利点や特徴が現代のニーズにも適しているのが大きなポイントです。ではここで、FORTRANの将来性とその使用が続く理由について詳しく見ていきます。
今も使われている背景
まずは現在もFORTRANが使われている理由や、FORTRANの強みについて解説します。
動作確認が長期的に可能
FORTRANは約70年間にわたって使用されてきた歴史のある言語であり、多くのレガシーシステムや既存のコードベースで利用されています。バージョンアップや仕様変更は行われていますが、互換性を保つための配慮も行われてきました。これにより、古いFORTRANのコードを現代のコンパイラで動かせます。さらに、FORTRANのコンパイラや開発環境も多くのプラットフォームで利用可能です。主要なOSやハードウェアアーキテクチャでFORTRANの開発や実行環境が提供されており、これらの環境でプログラムの動作を確認できます。
とはいえ、FORTRANの新しいバージョンや機能を活用する場合、一部の旧バージョンのコードが互換性の問題を全く引き起こさないとは言い切れません。例えば、バージョンアップに伴い構文や文法の一部が変更されることがあり、旧バージョンのコードが新しいバージョンのコンパイラで正しく解釈されない場合があります。そのためバージョンアップや環境の変更時には、コードのテストや適切な互換性の確認が重要です。
共配列による分散メモリ並列処理
FORTRANでは、共配列(Coarray)と呼ばれる機能を使用して分散メモリ並列処理が可能です。共配列は、FORTRAN 2008から導入された拡張機能であり、複数のプロセス(コーチャープロセス)が同時に実行されることによって、分散メモリ並列処理を実現します。各プロセスはそれぞれ独自のメモリ空間を持ち、必要なデータを直接参照することが可能です。
共配列を使用することで、プログラマは分散メモリ並列処理を比較的簡潔に記述することができます。データの分割・複製、プロセス間の同期など複雑な処理がコンパイラによって自動的に管理されるため、プログラマは詳細について意識する必要がありません。共配列はFORTRANの強力な並列処理機能の一つであり、大規模な科学技術計算・シミュレーション・データ解析などの分散メモリ並列処理に活用されています。
70年以上たってもアップデートがされている
FORTRANは1950年代に最初に開発され、それ以来多くのバージョンアップと改訂が行われてきました。最新のバージョンはFORTRAN 2018であり、これまでに新しいハードウェアやソフトウェア環境に対応するための改良も行われています。FORTRANの長い歴史と普及度からもわかるように、科学技術計算や数値解析などの分野で使用され続けているのも実績です。開発者やコミュニティは、現在も言語の発展に取り組んでいます。
fortran-langというコミュニティではFortranに関する最新の情報が集約されており、初心者向けのチュートリアルを閲覧可能です。また、Fortran 2018の改訂版が2023年にリリース予定であり、N2185(FORTRAN 2023の開発スケジュール)も公開されています。これらの取り組みからわかるように、Fortranは今でも活発に開発されている言語の1つです。
将来性はあるのか
今のところ業務や学業で必要でない限り、学んだりキャッチアップしたりする必要はないと言えます。コミュニティが小さい・ライブラリのコード設計が古い、などが主な理由です。ではここでFORTRANの将来性について詳しく解説します。
コミュニティが小さくユーザが少数
FORTRANのコミュニティは、他の人気プログラミング言語と比較して小規模であり、ユーザ数も少ないと言われています。FORTRANは主に科学技術計算や数値解析などの領域で使用されており、特に大規模な計算処理や高性能計算の利用がメインです。しかし他のプログラミング言語の台頭により、FORTRANのユーザ数は減少してきたと考えられます。
また、FORTRANは古い言語として知られており、新しいプログラマーや学生の間での普及度は他の言語に比べて低いのは事実です。これにより、FORTRANのコミュニティの規模も相対的に小さくなっている可能性があります。ただし、FORTRANは依然として特定の分野で強力なツールとして使用されており、古いコードベースやレガシーシステムのメンテナンスなどで重要な存在です。FORTRANのユーザ数は少ないかもしれませんが、専門家のコミュニティは現在も存在しています。
コミュニティが小さいゆえ、問題解決・エラー解消にも時間がかかる
ユーザ数が少ないということは、FORTRANに特化した専門家やサポートリソースの数も限られます。問題が発生した場合、解決策を見つけるまでの時間や労力が増える可能性は低くありません。また、情報や質問を共有するオンラインフォーラムやコミュニティの活動も、他の人気言語と比較すると活発ではないと言えます。さらに、FORTRANは古い言語であり、新しいバージョンや最新の開発手法に関する情報が限られていることも懸念点です。これにより、最新のテクノロジーやベストプラクティスに基づく問題解決が難しくなる可能性があります。
ただし、FORTRANは長い歴史を持つ言語であり、多くの資料やレガシーコードが存在しています。過去のリソースを活用することで問題解決に取り組むことができるはずです。問題解決に時間がかかる可能性はあるものの、情報を集め経験を積み重ねることで効率的な解決策を見つけることができます。またFORTRANを使っている他のユーザとのつながりを持ち、情報やアドバイスを共有することも重要です。
ライブラリの多くが古く劣悪なコード設計になっている
FORTRANは長い歴史を持つ言語であり、、一部のライブラリは古い時代の設計原則やベストプラクティスに基づいて作成されている可能性があります。古いコード設計は、可読性や保守性の低下・バグの発生・パフォーマンスの制約などの問題を引き起こすこともあり対応が必要です。また、新しいプログラミングの手法やツールとの統合性が乏しい場合もあります。
しかし、全てのFORTRANのライブラリが劣悪なコード設計を持つわけではありません。また、FORTRANのコミュニティには優れたプログラマーや専門家が存在し、品質の高いライブラリの開発や改良に取り組んでいる場合もあります。ライブラリの選択や使用の際には、ドキュメントや評価、実際の使用例などを参考にすることが重要です。FORTRANのライブラリには多様性がありますので、使用前の選択と評価を慎重に行うことをおすすめします。
まとめ
FORTRANの歴史は約70年と長く、最古のプログラミング言語です。そして今でもアップデートが続き、数値計算や科学技術計算の分野で現役として活躍しています。この長い年月の間に多くのレガシーシステムがFORTRANによって作られました。新しいプログラミング言語やフレームワークが登場したにもかかわらず、FORTRANのシステムは今もなお重要です。アップデート後も互換性確保のためのアプローチが取られるなどして、コードの寿命が長いFORTRANのシステムは現在も多くの組織や研究機関で使用されています。
とはいえ今後の成長に関しては大きな期待はできません。需要としてはレガシーシステムの維持・スーパーコンピューター内での科学技術計算などが主です。現代のプログラミングスタイルに比べて制約が多く柔軟性に欠けるとされており、現代の開発環境においては不向きと言えます。またFORTRANの開発者コミュニティは他の言語に比べて限定的で、若い世代の間では関心が減少傾向にあるのも懸念点です。FORTRANを学ぶ必要性は、自身の開発目標やキャリアの方向性によって異なります。一般的なウェブ開発やモバイルアプリ開発、データサイエンスなどの分野であれば、FORTRANを学ぶ必要性は低いです。
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