業務委託の休憩時間の概念は?労働基準法が適応されるケースと適応されないケースを紹介
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目次
はじめに
業務委託契約における休憩時間の取り扱いについて、疑問を持っている方は多いのではないでしょうか?
本記事では、業務委託契約に関連する労働基準法の適用について詳しく解説します。
<この記事を読むメリット>
- 業務委託契約での休憩時間のルールが理解できる
- 労働基準法が適用される条件を把握できる
- 業務委託契約時のリスク回避方法が学べる
業務委託の休憩時間に関する取り扱いは、労働基準法がどのように適用されるかによって異なります。
契約がどのような扱いになるのかをしっかり理解することで、不測のトラブルを避けられるでしょう。
正しい知識を身につけて、安心して業務委託契約を結びましょう。
業務委託契約の種類
主な目的 | 具体的な成果物 | 報酬の条件 | 管理・指示の範囲 | 例 | |
請負契約 | 成果物の完成 | あり | 成果物の完成時に発生 | 完成責任あり、進め方は自由 | 建築工事、ソフトウェア開発 |
準委任契約 | 業務の遂行 | なし | 業務を遂行すれば発生 | 指示された業務を実施 | ITシステムの保守、データ入力 |
委任契約 | 行為の実施 | なし | 行為を誠実に実施すれば発生 | 法律行為や代理行為の遂行 | 弁護士の法律相談、代理交渉 |
フリーランスとして仕事を受注する際には、どのような契約形態で仕事を引き受けるのかが重要です。
中でも最も一般的な契約形態が「業務委託契約」です。
ただし、業務委託契約と一口に言っても、いくつか種類が存在します。
ここではまず、業務委託契約の種類についてみていきましょう。
請負契約
請負契約(うけおいけいやく)は、フリーランスにとって一般的な契約形態の一つです。
この契約形態では、特定の成果物を完成させることを目的としています。
例えば、ウェブサイトの制作やロゴデザインなど、具体的な完成物を引き渡すことが契約のゴールです。
請負契約の大きな特徴は、成果物の完成が報酬支払いの条件となることです。そのため、作業の過程ではなく、成果そのものに対して責任を負います。
仮に完成物に不備があれば修正が必要となり、その責任をフリーランスが負う場合が多いです。
つまり、請負契約は成果物のクオリティが重視される反面、クライアントが求める完成度に達するまで努力が必要な契約形態といえます。
委任契約/準委任契約
委任契約や準委任契約は、請負契約のように特定の成果物を納品することではなく、特定の業務を行うことが目的です。
例えば、コンサルティングやシステムの運用・保守などがこれに該当します。
民法の規定では、委任契約は特定の法律行為を依頼する場合に使われ、準委任契約はそれ以外の行為を依頼する場合に適用されます。
フリーランスの仕事の多くは委任契約ではなく、準委任契約に当てはまることが多いです。
この契約形態の大きな特徴は、成果に対する責任は必ずしも負わず、業務遂行そのものに責任を持つことです。
例えば、継続的なライティング業務やリサーチ作業など、プロセスそのものが重視される業務が含まれます。
フリーランスの立場から見ると、業務遂行に専念することで報酬を得られるため、請負契約よりもリスクが低い場合が多い契約形態と言えるでしょう。
労働基準法とは?
労働基準法は、日本において労働者を保護するための基本的な法律です。
これは主に「雇用契約」に基づいて働く従業員を対象としており、労働条件や賃金、労働時間などに関する基準を定めています。
しかし、フリーランスは通常、業務委託契約で仕事を受けるため、労働基準法の対象にはなりません。
では、労働基準法が適用されないとなると、業務委託における「休憩時間」の概念はどのようになっているのでしょうか?
ここからは、労働基準法とは何かをさらに深掘りし、休憩時間の概念はどのように定められているのかをみていきましょう。
労働基準等を定める日本の法律(日本国憲法第27条)
日本国憲法第27条は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」としており、労働者の基本的な権利を保護するための規定です。
労働基準法はこの規定に基づき、日本国内の労働者の労働条件を法的に定め、雇用される労働者が最低限守られるべき基準を定めています。
主に、労働条件の平等性や公平性を保証し、従業員が不利な立場に置かれないようにするための法律です。
労働基準法における休憩時間の定義
労働基準法では、労働者が一定の労働時間を超えて働いた場合には、雇用者は労働者に対して休憩を与える義務があります。
以下に、労働時間に応じた休憩時間の規定について解説します。
勤務時間6時間未満:休憩なし
労働基準法では、勤務時間が6時間未満の場合、休憩時間の付与は義務付けられていません。
これは、短時間労働の場合、労働者が継続的な作業を行うことによる負担が比較的軽く、通常の業務遂行において休憩なしでも健康面での大きなリスクが少ないと考えられているためです。
そのため、6時間未満の労働では、企業は必ずしも休憩時間を設定する必要はありません。
勤務時間6時間超え:少なくとも45分間の休憩
勤務時間が6時間を超える場合、労働者には少なくとも45分間の休憩を与えることが法律で義務付けられています。
この45分の休憩時間は、労働者が業務から完全に解放されるべき時間であり、自由に過ごすことが認められています。
そのため、企業は勤務時間が6時間を超える場合、45分間の休憩時間を確実に与える義務があり、労働者が仕事から解放された状態で休憩を取れるよう配慮しなければなりません。
勤務時間8時間超え:少なくとも1時間の休憩
勤務時間が8時間を超える場合には、労働基準法で少なくとも1時間の休憩を与えることが義務付けられています。
なお、休憩時間については、「まとまった時間」で与えることが望ましいとされていますが、法文には休憩時間を分割して与えることを禁止する明確な条文はありません。
ただし、労働基準法の趣旨から考えると、休憩時間が労働者にとって十分な休息の機会を提供するものでなければなりません。
極端な例ではありますが、例えば1分の休憩を60回に分割して与える、といったような休憩時間の付与は基本的に認められない可能性が高いです。
なお、労働基準法違反が確認された場合、労働基準監督署は雇用者に対して是正勧告や命令を出すことができます。
これに従わない場合、労働基準法第120条に基づき、罰金が課される可能性があるので注意が必要です。
具体的には、休憩時間を適切に与えなかった場合、雇用者には30万円以下の罰金が科されることがあります。
休憩時間の対象者
このように、労働基準法において雇用主は従業員に対し、適切な休憩時間を与えることが義務付けられています。
では、この休憩時間の対象者は具体的にどのような就業形態で働く人物に該当するのでしょうか?
ここからは、労働基準法における休憩時間の対象者についてみていきましょう。
正社員
正社員は、労働基準法に基づいて最も包括的な労働条件が適用される雇用形態です。
ここでいう「正社員」とは、企業と直接的な雇用契約を結び、フルタイムで働く労働者を指します。
労働基準法における休憩時間の規定も当然適用され、正社員は企業にとって最も標準的な労働者です。
そのため、休憩時間の規定に関しても、労働者の健康と安全を守るための基本的な権利として適用されることが保証されています。
たとえ業務の種類や繁忙期などによる制限があったとしても、企業は休憩時間を確保しなければなりません。
アルバイト・パート
アルバイトやパートタイム労働者も、労働基準法に基づいて休憩時間を取得する権利を持つ対象者です。
アルバイトやパートタイム労働者は勤務時間が短いことが多いですが、6時間を超える労働の場合には必ず休憩時間が確保されなければなりません。
このように、雇用形態に関わらず労働者全員が休憩を取得する権利を持っていることは、労働基準法の重要な側面の一つです。
派遣社員
派遣社員も労働基準法の対象となり、適切な休憩時間の取得が保証されている就業形態の一つです。
派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んでいますが、実際に業務を行う派遣先の就業規則に基づいて働きます。
そのため、派遣先企業は、派遣社員が労働基準法に従った休憩を取得できるようにする責任があります。
派遣社員の休憩時間は派遣先で働く他の労働者と同じ条件で提供されなければならず、勤務時間に応じた適切な休憩が確保される必要があります。
このように、派遣社員に対しても正社員やアルバイト・パートと同等に労働基準法の休憩時間規定が適用されており、派遣元と派遣先の双方がその遵守を確認することが重要です。
休憩時間の非対象者例
では逆に、労働基準法において、休憩時間が必ずしも定義されていない就業形態はあるのでしょうか?
ここからは、休憩時間の非対象者例をいくつかご紹介します。
農林業
農林業は天候や季節に強く依存する業種です。
このため、作業は特定の時期に集中することが多く、長時間にわたって一気に作業をしなければならないケースも多いのです。
労働基準法では、このように自然条件に左右される業務については、一律の休憩時間の規定を適用することが難しいとされており、その結果、休憩時間の確保に関する規定が適用されないことがあります。
この特殊性が労働基準法における例外として認められているのです。
水産業
水産業も、天候や季節に大きく影響を受ける業種です。
特に漁業では魚の回遊や天候の変化に応じて、労働時間が非常に不規則になることが一般的です。
漁に出た際には、一定のタイミングでの休憩を取ることが困難であるため、労働基準法において一律に休憩時間を確保することは現実的ではありません。
このように、水産業の業務の性質上、労働者は労働時間を柔軟に管理する必要があるため、休憩時間の規定が適用されていない場合があります。
畜産業
畜産業では、動物の世話や管理が日常的に必要とされ、動物の健康状態や世話の必要性に応じて作業を行う必要性があります。
動物の世話には時間帯を問わず対応することが必要なため、労働時間が固定されにくく、休憩時間を一律に設定することが難しいのです。
そのため、労働基準法では畜産業の特殊な勤務形態を考慮し、休憩時間の規定が適用されないことにしています。
養蚕業
養蚕業もまた、昆虫(カイコ)の生育過程に合わせて作業する必要があり、その生育状況によって働く時間が変動します。
繭を作る時期などは特に管理が必要であり、作業が集中的に行われることもあります。
このような性質のため、労働基準法の休憩時間の規定を一律に適用することが難しいことから、養蚕業も休憩時間の規定から除外されています。
管理監督者
管理監督者とは、企業の中で管理職に相当する立場にある人たちのことです。
具体的には、部長や課長など、組織の運営に関して大きな権限を持ち、経営者と近い立場で働く人々のことを指します。
管理監督者が労働基準法の休憩時間の規定から除外されているのは、彼らの働き方が他の労働者と異なり、業務の裁量が大きいためです。
具体的には、管理職は業務を自分の判断で進められるため、休憩時間も自ら調整することが可能とされています。
したがって、通常の労働者のように、休憩時間を一律に定める必要がないと考えられているのです。
機密事務取扱者
機密事務取扱者とは、企業の中で重要な機密情報を取り扱う職務に就いている人たちのことです。
これには、取引情報や顧客情報、戦略的なビジネスデータなど、企業の内部情報を取り扱う職務が含まれます。
機密事務取扱者が労働基準法の休憩時間の規定から除外されている理由は、彼らの業務の特殊性にあります。
機密情報の取り扱いや重要な事務の管理を行う中で、業務を中断しないことが求められる場合があり、その際に通常の休憩時間のルールを適用するのが難しいことが多いのです。
そのため、機密事務取扱者には労働時間や休憩時間の規定に関して例外的な扱いが認められています。
守衛
守衛とは、建物や敷地の安全を守る仕事をしている人々を指します。
夜間や休日を含めて、施設内の安全を確保するための警備を行い、不審な出来事が発生しないように監視するのが主な仕事です。
守衛が休憩時間の規定から除外される理由は、業務の特性上、勤務中に完全に業務から解放されることが難しいからです。
守衛は休憩中であっても何か異常が発生すれば直ちに対応する必要があるため、通常の労働者が持つような「完全な休息」を取ることが難しい立場にあります。
そのため、労働基準法では、守衛については休憩時間を一律に設定することが難しいと判断されており、休憩時間の規定が適用されない場合が多いのです。
高度プロフェッショナル制度対象者
高度プロフェッショナル制度対象者(通称「高プロ」)とは、特に高度な専門知識やスキルを持ち、成果によって報酬が決定される働き方をしている人々のことです。
この制度の対象者には、金融アナリストやIT技術者、研究開発に従事する技術者などが該当し、自らの専門知識を駆使して業務を遂行することが求められています。
高プロ対象者が休憩時間の規定から除外されている理由は、彼らの働き方が成果重視であり、労働時間に縛られないことを前提としているからです。
高度プロフェッショナル制度は、専門性が高く、業務の進め方や時間の管理を自分で決めることができる職種に対して適用されており、そのため、労働時間や休憩時間に関する規定を適用することが合理的ではないとされています。
この制度の下で働く人々は自らの裁量で効率的に働き、必要に応じて休息を取ることが可能とされているのです。
業務委託も労働基準法が適用されない
このように、労働基準法における休憩時間が適用されない職種は数多くありますが、業務委託の仕事にも休憩時間は適用されません。
これは、業務委託での働き方が労働基準法に定められた「労働者」としての枠組みに含まれないためです。
労働基準法は、企業と「雇用契約」を結び、企業から指揮命令を受けて働く労働者を保護するための法律といえます。
しかし、業務委託は「雇用契約」ではなく、「請負契約」や「委任契約/準委任契約」に基づいて行われる働き方です。
こういった契約形態では、業務を遂行する方法や時間の管理は業務を受けた側(フリーランスや個人事業主)が自由に決定します。
つまり、企業が労働者に対して指揮命令をするのではなく、業務委託者は依頼された業務を自らの裁量で遂行します。
業務を遂行する上でどのように時間を使うか、休憩をどのように取るかは完全に業務委託者に任されているため、労働基準法が定めるような強制的な休憩時間の提供が必要ないのです。
業務委託契約で労働基準法が適用されるケース
業務委託契約では労働基準法における休憩時間の概念はありません。
しかし、全てにおいて労働基準法が適用されないわけではないのです。
ここでは、業務委託契約で労働基準法が適用されるケースをいくつかみていきましょう。
業務のやり方や作業時間などについて指示命令をしている場合
業務委託契約は本来、受託者が業務の進め方を自由に決められる契約形態です。
しかし、委託者(発注側)が業務の進め方や作業時間に関して具体的な指示や命令を行っている場合、その働き方は「業務委託」とは言いにくく、実際には「雇用契約」と同様のものとなってしまう可能性があります。
このような状況下では、受託者は実質的に「労働者」として扱われるべきと判断され、労働基準法が適用されることになります。
ただし、労働基準監督署などの行政機関から、このような関係が「偽装請負」と認定される可能性がある点には注意が必要です。
偽装請負とは、形式上は業務委託契約を結んでいるように見せかけ、実際には指揮命令を通じて労働者として働かせていることを指します。
これが認定されると、委託者は労働基準法違反として罰則を受ける可能性があります。
つまり、業務委託契約であっても、実際の働き方が雇用契約に近いものであれば、労働基準法が適用されるのです。
受託者が受任者に対して時間給で賃金を支払っている場合
業務委託契約において、受託者(仕事を発注した側)が受任者(実際に業務を行う側)に対して「時間給」で賃金を支払う場合も、労働基準法が適用される可能性があります。
通常、業務委託契約では報酬は成果物に対して支払われるものであり、時間給で支払われることは一般的ではありません。
しかし、受託者が受任者に対して勤務した時間に基づいて賃金を支払う契約をしている場合、この関係は、受任者が労働時間に拘束されていることを示唆します。
具体例として、受任者が業務の遂行において、1日8時間、週5日働くことを求められ、その勤務時間に応じて賃金が支払われるケースを考えてみましょう。
このような働き方では、受任者は実質的に労働時間を管理されており、雇用契約における労働者と同じ状況になります。
したがって、仮に業務委託契約であっても労働基準法が適用されるのです。
つまり、このケースでは労働基準法における労働時間や賃金に関する保護が発動され、受任者は労働者としての権利を持つことになります。
契約時に気をつけたいポイント
ここまで、業務委託契約における労働基準法の適用ケースを解説してきました。
では、フリーランスが業務委託契約をクライアントと結ぶ際に、具体的にどのような点に気をつければいいのでしょうか?
契約内容を明確にする
業務委託契約は、クライアントとフリーランスの間でどのような業務をどの範囲で行うかを取り決めるものです。
契約内容が曖昧であると、業務遂行中や後において「依頼した業務の範囲」「納期」「修正の回数」などに関してクライアントとの間で誤解が生じやすく、トラブルに発展するリスクが高まります。
例えば、契約で業務範囲が不明確な場合、クライアントから追加作業を依頼されても報酬が増えず、結果的にフリーランス側が負担を強いられる可能性があります。
そのため、契約内容を明確にすることは双方の理解を一致させ、トラブルを未然に防ぐために重要です。
具体的な対策については、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひあわせてご確認ください。
報酬や経費の条件を確認する
業務委託契約では、フリーランスは報酬や経費の支払いにおいて企業側と対等な立場で交渉を行う必要があります。
報酬や経費の条件が不明確な場合、納品後に報酬未払いのリスクが高まることになります。
特に、クライアントによっては経費の範囲を曖昧にすることで、結果的にフリーランスが負担することを期待するケースも存在しますので、報酬と経費に関する条件を契約時にしっかり確認し、必要な項目を明記しておきましょう。
なお、フリーランスの経費については以下の記事で詳しく解説しているのでぜひあわせてご確認ください。
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まとめ
本記事では、業務委託契約における休憩時間の概念と、労働基準法が適用されるケース・されないケースについて解説しました。
業務委託契約では、通常の労働者と異なり、労働基準法の適用が制限されることが多く、そのために休憩時間の扱いが変わってくる点をしっかり理解することが重要です。
また、業務の指示や報酬の支払い形態によっては、労働基準法が適用されるケースもあるため、自分の契約内容を正確に把握しましょう。
今後、働き方の多様化が進む中で、こうした労働法規の知識はますます重要性を増していくでしょう。
労働基準法の適用範囲を理解し、業務委託契約でも自分の権利と義務を確実に守ることが、より安心して働くための基盤となります。
「エンジニアスタイルマガジン」では、今後もこういったフリーランスエンジニアにとって役立つ最新情報を随時お届けいたします。
それでは、また別の記事でお会いしましょう。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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