XR（クロスリアリティ）とは何か？VR・AR・MR・SRとの違いと事例を紹介

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はじめに

XR（クロスリアリティ）技術は、ビジネスシーンにおいてその重要性を増しており、日に日に注目度は高まっています。

では、一体「XR（クロスリアリティ）」とは何なのでしょうか？

この記事では、XR（クロスリアリティ）の基本からVR（仮想現実）、AR（拡張現実）、MR（複合現実）、SR（代替現実）との違い、そして具体的な活用事例までをわかりやすく解説します。

最後までお読みいただければ、XR技術の全貌とその応用範囲を網羅的に理解できるでしょう。

<この記事を読むとわかること>

• XR技術の基本概念と、VR、AR、MR、SRとの違い
• XR技術が注目される背景とその進化の要因
• 教育、エンターテイメント、観光、製造業など、様々な分野でのXRの具体的な活用事例
• XR技術の未来展望とその将来性のポイント

XR（クロスリアリティ）とは？

XR（クロスリアリティ、 Cross Reality）とは、VR、AR、MRを包括する用語であり、これらすべての仮想現実を統合する言葉です。

XRは、全ての仮想技術の範囲を超えて、あらゆる種類の現実と仮想の融合を表現するために使われます。

XRの概要を紹介

XRは簡単にいうと、VR、AR、MRの異なる「仮想世界」の技術を一つの大きなカテゴリーにまとめたものです。

そのため、VR（仮想現実）やAR（拡張現実）、MR（複合現実）といった技術は、いずれもXRに含まれます。

ではなぜ、わざわざVR、AR、MRと区別しているのでしょうか。

それは近年、VRやARを組み合わせて使うような技術が発達してきたからです。

つまり、VR映像と一口に言っても、その技術にはARの技術が使われることもありますし、MR技術が利用されていることもあるのです。

そのため、語弊が生じることも多くなることが想定されるので、XR（クロスリアリティ）という言葉で一括りにしました。

XRとメタバースの違いは？

メタバースとは、簡単にいえば「仮想空間」または「仮想世界」のことです。

インターネット上に構築された3次元の世界であり、ユーザーはアバターと呼ばれる自分の分身を通じてこの仮想世界にアクセスします。

「超越」を意味する「Meta」と「世界」を意味する「Universe」を混合させた言葉であり、ニール・スティーブンソンの1992年のSF小説「スノウ・クラッシュ」で初めて使用された言葉です。

メタバースは比較的新しい概念のように思われがちですが、その原型とされる3次元の仮想空間「Second Life」は2003年にリリースされ、一世を風靡しています。

2020年にM. Ballが提唱した、メタバースが備えるべき7つの特徴は以下の通りです。

<メタバースが備えるべき7つの特徴>

1. 永続性: メタバースは常に存在し、リセットや終了がない
2. 同期性: イベントはリアルタイムで進行し、全員に同時に体験される
3. 無制限の同時接続: 誰でも、どれだけ多くても参加可能
4. 経済（エコシステム）性: ユーザーは創造、所有、投資、販売し、報酬を得られる
5. 広範囲な体験: デジタルと物理的な世界を含む広範な体験を提供
6. 相互運用性: 異なるプラットフォーム間でアバターやアイテムを自由に移動できる
7. 多様な貢献者による参加: 個人、グループ、企業などがコンテンツを作成、運営

つまり、メタバースは上記のような特徴を持つ仮想空間であり、XRはそれを実現する技術の一つです。

XRが注目されている背景

XRが注目されている背景については、複雑な事情が絡み合っていますが、基本的には以下の2つが挙げられます。

ソフトウェア技術の発展

XR（拡張現実）技術への関心が高まっている背景には、ソフトウェア技術の著しい発展があります。

近年では、センシング技術の向上により、ユーザーの動きや現実世界の空間情報を以前よりもはるかに高い精度で捉え、再現する能力が増強されています。

加えて、ハードウェアの低価格化と性能の向上が相まって、XR技術は幅広いユーザーにアクセスしやすくなりました。

他にも、3Dグラフィックス技術の普及と高精細化も要因の一つです。

この分野の発展により、リアルな仮想環境を創出することが可能となり、ユーザーに圧倒的な没入感を提供することができるようになりました。

また、ゲームエンジンなどの開発ツールの機能が向上し、これらが個人利用者にも無料で提供されるようになったことで、XRアプリケーションの開発者が大幅に増加しました。

これらの技術進歩により、XRはエンターテイメント分野だけでなく、ビジネスや教育など、様々な分野での応用が期待されています。

5G・通信インフラの高速化

XR（拡張現実）技術が急速に発展し、注目を集めるもう一つの背景は、5Gと通信インフラの高速化です。

5Gは、その前身である4G/LTEに比べて圧倒的な通信速度と低遅延を実現しています。

<5Gと4G/LTEの比較>

この高速通信により、大容量のデータを迅速に送受信することが可能になり、特に大規模なXRコンテンツの利用が格段に向上しました。

また、低遅延の特性は、VRやARといったXR技術において、よりリアルで滑らかな体験を提供することを可能にしています。

このように、5Gの高速化はXR技術の潜在能力を最大限に引き出し、エンターテインメントからビジネス、教育まで幅広い分野での応用を促進しています。

VR（仮想現実）とは？

VR（仮想現実、 Virtual Reality）とは、完全にデジタルで作られた環境にユーザーを没入させる技術です。

現実世界とは異なり、すべてがコンピュータで生成された環境で構成されています。

VR（仮想現実）の概要を紹介

VR（仮想現実）は、コンピュータ技術を使用して完全に仮想的な環境を作り出す技術です。

通常、ヘッドセットや特別なグローブを使用して体験され、ユーザーは現実世界とは異なる、完全にデジタル化された空間に没入します。

VRでは、視覚、聴覚、時には触覚も含めて、現実には存在しない環境や体験をリアルタイムでシミュレート可能です。

これにより、ユーザーは現実世界とは異なる、独自の体験を得ることになります。

VRはエンターテイメント、教育、訓練、医療など、多岐にわたる分野で応用されており、メタバースを構築する上で最も重要な要素といっても過言ではありません。

VRの具体的な事例

VR（仮想現実）技術は、さまざまな分野で革新的な応用が見られます。

以下に、具体的な事例を表にまとめました。

このように、VR技術はその没入感、インタラクティブ（双方向性）、安全なシミュレーション環境、遠隔地へのアクセス性、カスタマイズ性という特性によって、多様な分野で革新的な応用を実現しています。

AR（拡張現実）とは？

AR（拡張現実、 Augmented Reality）とは、現実の環境にデジタル要素を重ね合わせる技術です。

ARでは、現実世界がデジタル情報やオブジェクトで「拡張」されます。

スマートフォンや特殊なメガネを通して、ユーザーは現実の世界とデジタル要素が融合した環境を体験できます。

AR（拡張現実）の概要を紹介

AR（拡張現実）は、「Augmented Reality」の略称で、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術です。

「XR（Cross Reality）」の一部で、スマートフォンやスマートグラスを使って、実際に目で見ている光景にCG映像などを合成し、実在するかのように見せることが可能です。

一般的には、2016年にリリースされたスマートフォン用ゲームアプリ「ポケモン GO」で広く知られるようになりましたが、現在ではエンターテインメント分野だけでなく、インテリア、アパレル、マーケティング、製造業、物流業、建設業など、多岐にわたる分野で活用されています。

2000年代にはAR技術を使用したゲームやスマホアプリが次々と登場し、特に「ポケモン GO」の大ヒットにより、AR技術の普及が加速しました。

現在では日常生活の多くの場面でAR技術が使われています。

ARの具体的な事例

ARは、多くの分野で活用が進んでいます。

以下にいくつかの具体的な事例についてまとめました。

これらの例からわかるように、AR技術は多様な分野で革新的な変化をもたらしており、今後もその応用範囲は広がっていくことでしょう。

MR（複合現実）とは？

MR（複合現実、 Mixed Reality）とは、VRとARの要素を組み合わせた技術です。

これにより、リアルと仮想のオブジェクトが一緒に存在し、互いに影響を与え合うことができる環境が生まれます。

MRの概要を紹介

MR（複合現実）とは、拡張現実（AR）と仮想現実（VR）の中間に位置する先端技術で、現実世界とデジタル生成されたオブジェクトをシームレスに融合させます。

この技術により、ユーザーは実際の環境において、リアルタイムでデジタルオブジェクトと相互作用する体験を享受できます。

MRの特徴は、実世界の要素と仮想要素が統合され、互いに影響し合う点です。

これにより、ユーザーは仮想オブジェクトに触れ、操作し、現実世界の物理法則や制約に合わせて調整された仮想環境との高度な相互作用を楽しむことができます。

つまりMRは、ARとVRの利点を融合させ、現実世界と仮想世界の間の境界を曖昧にすることで、独特の体験を生み出す技術の総称です。

MRの具体的な事例

MR技術も、多様な分野で革新的な活用が進んでいます。

以下に、具体的な事例を表にまとめました。

以上のように、MR技術は教育、医療、エンターテイメント、製造といった多岐にわたる分野で活用されており、それぞれの分野においてユニークな価値を示しています。

SR（代替現実）とは？

SR（代替現実、 Substitutional Reality）とは、現実の映像や音を使いながら、それらを巧妙に操作してユーザーに仮想的な体験を提供する技術です。

さらに深掘りしていきましょう。

SRの概要を紹介

SRは、現実世界と仮想の要素を組み合わせた技術ですが、そのアプローチはARやVRとは異なります。

SRの核心は、現実と仮想の境界を意図的に曖昧にし、ユーザーが体験している環境が現実なのか仮想なのかを識別できなくすることです。

具体的には、SRは過去の映像や収録されたコンテンツを、現実の瞬間として再現し、これをユーザーに現実として体験させます。

例えば、ヘッドマウントディスプレイ（HMD）で映像をみている場合を考えてみましょう。

最初は、リアルタイムの映像を見せて現実であると認識させ、その後、気づかれないように収録された映像に切り替えることで、ユーザーはそれを現実と錯覚します。

このように、実際にはVRやAR技術を使用していないにも関わらず、人間に仮想世界にいるような体験をさせることが、SRのアプローチです。

SRの具体的な事例

SRは特に、心理学の研究や認知科学での応用が主で、ユーザーが現実と仮想の区別をどのように行うか、またそれが人間の認識にどのように影響を及ぼすかを探究するのに役立ちます。

また、エンターテイメントや教育の分野でも、より深い没入感や新しい学習体験を提供するためにこの技術の利用が検討されています。

以下に、具体的な事例について表にまとめました。

VR、AR、MR、XR、SRの違いまとめ

ここまで、VR、AR、MR、XR、SRの違いについて、それぞれ具体的に説明してきました。

しかし、意味が非常によく似ているため、一度説明されただけで理解するのは困難かと思います。

そこで、一度それぞれの技術について整理しておきましょう。

要するに、各技術は現実と仮想空間の組み合わせ方において、独自のアプローチを取っていると理解することがポイントです。

XRが使用されている分野と具体的な活用事例とは

先述したように、XRはVR、AR、MRを一括りにした技術です。

そのため、XRの具体的な活用事例を確認すれば、全体の動向が掴みやすくなります。

ここでは、XRが使用されている具体的な活用事例を分野ごとに紹介します。

教育：XR Space WEB（DOOR）

NTTのXR技術は、教育分野で多様な方法で活用されています。

例えば、長岡工業高等専門学校では、NTT XR Space WEB（DOOR）を使用してバーチャルキャンパスでのオンライン授業を実施しました。

これにより、学生の反応をリアクション機能で確認でき、VRならではの一体感を実現しています。

他にも、立命館大学では、同プラットフォームを利用してメタバース上での英語のポスターセッションを行い、新しい教育体験を提供しました。

また、国際総合学園新潟コンピュータ専門学校では、オープンキャンパスや学科紹介にXRを利用しています。

企業研修においても、「まなVRクラウド powered by NTTスマートコネクト」を使用したVRコンテンツを活用することで、リモートでの集合研修が可能になっています。

エンターテインメント：バーチャル秋葉原（XR BASE）

「バーチャル秋葉原」は、大日本印刷株式会社（DNP）とAKIBA観光協議会により開発された、リアルとバーチャルの融合による地域共創型XRプロジェクトになります。

2022年4月1日にオープンし、PC用のアプリやVRゴーグル、Webブラウザを通じて、世界中のどこからでもアクセス可能です。

空間内には、実際の店舗を模倣したバーチャルショップやギャラリースペース、広告サイネージが設けられており、多様な企業が情報発信や販促活動に利用しています。

アニメやマンガの知的財産（IP）を活用した二次創作や、グローバルファンとの交流など、バーチャル秋葉原は地域経済の活性化とコンテンツ市場の拡大を目指してプロジェクトを推進中です。

観光：バーチャル大阪

「バーチャル大阪」は、大阪の魅力を国内外に発信するために構築されたメタバース環境です。

「City of Emergence」（創発する都市）というテーマのもと、2025年大阪・関西万博を盛り上げるために作られました。

バーチャル大阪では、年齢や性別、国籍などの枠を超えて、多様な背景を持つ人々が集まり、新たな体験や表現を通じて大阪の新たな文化を創造・発信する場として設計されています。

ユーザーは、VRデバイス、スマートフォン、PCなどのデバイスを通じてバーチャル大阪にアクセスでき、ソーシャルVRサービス「Cluster」を利用してこの空間に入ることが可能です。

バーチャル大阪は、大阪の記憶や想い、夢、文化や歴史、そして未来までを表現する新たな取り組みとして、大阪に新しい魅力をもたらし、より良い変化を促進することでしょう。

製造業

製造業では、人材不足や技術者の高齢化、危険な作業環境という業界固有の課題に対処するために、XR技術が効果的に活用されています。

例えば、住友電設株式会社では、VRを活用した「NTT XR安全教育 powered by VR安全意識向上サービス」を導入。

同サービスを通じて、従業員は実際の事故事例に基づいたVRコンテンツを体験し、作業現場の危険性や安全確保の重要性をリアリティーを持って直感的に学ぶことができます。

また、同社の「スマートグラスクラウド」は、現場とオフィスを映像・音声で双方向につなぐことにより、遠隔地からの現場作業をサポート。

これにより、経験の浅い作業者も安心して作業を行うことができ、ベテラン技術者の知識と技術の継承にも貢献しています。

これらの取り組みにより、NTTのXR技術は製造業界における安全性の向上や作業効率の改善、さらには人材育成の面でも大きな成果を上げています。

XRの未来と将来性とは

XRは今後も活用範囲が拡大していくことが大いに期待できる分野であり、その将来性は非常に明るいといえます。

しかし、世界的にAIなどの先端技術が規制されていく動きも顕著なので、ただ楽観的に将来性が明るいと判断するには少し注意が必要です。

では、XRの未来と将来性を占う上で、どのような点に着目すべきなのでしょうか。詳しくみていきましょう。

XR活用の普及の状況

XR（クロスリアリティ）技術の将来性を見極める際、「XR活用の普及の状況」は極めて重要な要素です。

例えば、エンターテインメントから医療、教育、製造業に至るまで、多岐にわたる分野での使用は、XR技術の多用途性と柔軟性を示唆します。

技術的成熟度も重要であり、ユーザーインターフェースの洗練度や没入感の質を確認することで、技術の発展段階が見て取れるでしょう。

また、市場の動向、つまり市場成長率や投資規模、新製品やサービスの登場頻度も、普及状況の重要な指標です。

さらに、一般のユーザーがどれだけXR技術を受け入れているかも、普及の程度を大きく左右します。

どれだけ先進的な技術であっても、一般消費者に認知されなければ意味がありません。

スマートグラスの開発

XR（クロスリアリティ）技術の将来性を占う上で、「スマートグラスの開発」はもう一つの重要な要素といえるでしょう。

スマートグラスとは、現実の視界にデジタル情報を重ねることができるウェアラブルデバイスです。

装着することで、ユーザーは自然な形でAR（拡張現実）やMR（複合現実）の体験ができます。

例えば、スマートグラスを通じて、作業手順の表示、ナビゲーション情報の提供、教育コンテンツの視覚化などが可能になります。

スマートグラスの技術的進化は、ユーザー体験の品質を高め、より多くの用途での採用を可能にします。

軽量化、長時間のバッテリー持続力、高解像度の表示、快適な装着感などは、スマートグラスの普及に不可欠な要素です。

現状では、一般消費者にとってはかなり高価な製品といえますが、より手頃になれば、一般の消費者や小規模のビジネスでもXR技術を採用するハードルが低くなります。

これらの側面を踏まえると、スマートグラスの開発はXR技術の将来性を大きく左右する要素であり、この分野の技術革新はXRの普及と利用拡大を促進する鍵となるでしょう。

通信インフラのさらなる高速化

XR（クロスリアリティ）技術の将来性を見極める上で、「通信インフラのさらなる高速化」は非常に重要な要素です。

特に5Gや将来的な6Gの展開は、大量のデータを瞬時に処理し、ユーザーにリアルタイムでシームレスなVR、AR、MR体験を提供するために不可欠です。

これにより、遅延（レイテンシー）が低減され、よりリアルな相互作用と没入感が実現されます。

例えば、AR/VRデバイスでのビデオストリーミング、インタラクティブな3Dモデリング、リアルタイムの遠隔協力などが、高速通信によって大きく向上可能です。

さらに、通信インフラの高速化は、XR技術の幅広い応用を可能にします。

特に、複数のユーザーが参加するインタラクティブな環境や、複雑なシミュレーションが要求される場合、高速通信は非常に重要です。

これらの観点から、通信インフラの高速化は、XR技術の将来性を左右する決定的な要素であり、XRのより広範な採用と進化を推進する鍵となるでしょう。

まとめ

この記事を通じて、XR（クロスリアリティ）技術とその多様な形態、すなわちVR（仮想現実）、AR（拡張現実）、MR（複合現実）、SR（代替現実）との違いを解説しました。

XR技術が注目されている背景には、ソフトウェア技術の進歩と通信インフラの高速化があり、これらはXR体験をよりリアルで応用可能なものにしています。

教育からエンターテインメント、観光、製造業に至るまで、様々な分野でXR技術は既に活用され始めています。

XR技術の普及と進化は、今後の私たちの生活を根底から変える可能性を秘めており、ビジネスシーンにおいても重要な鍵となっていくでしょう。

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AR XR テクノロジー