Juliaで使われる機械学習ライブラリとは?その他カテゴリ別に一覧を紹介
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目次
Juliaで使えるライブラリのカテゴリとは?
Juliaは科学計算やデータ分析を得意とするプログラミング言語です。PythonやRのような使いやすさと速度を兼ね備え、並列処理や分散処理にも優れています。数値計算や統計解析においては優れたパフォーマンスを発揮するのが特徴で、大規模なデータセットや複雑なモデルの処理にも適しています。
この記事では、データ分析を担当するエンジニアにとって便利なツールである言語Juliaのライブラリについて紹介します。
そもそもライブラリとは何かを確認
プログラミング言語における「ライブラリ」とは、何度でも使うことができるコードや機能の集合体であり、目的とする機能によってプログラムに組み込まれるものです。プログラミング言語の標準機能や組み込み関数だけでは解決できないような、特定の機能を追加するためにライブラリを使用します。
例えば数学的な演算や、機械学習、データベースアクセス、ネットワーク通信など、さまざまな分野に特化したライブラリが存在します。エンジニア自身が、求める機能に沿って最適なライブラリを選ぶことで効率的にプログラムを構築できます。
ライブラリの利点は、開発者が特定の機能を独自に実装する必要がないため、開発時間の短縮や効率化が図れることです。また、ほとんどのライブラリはテストや改良が適宜行われており、信頼性や品質が保証されています。複数の開発者がフィードバックと改良を重ねることで、1人の開発者が短時間で開発した機能よりも使いやすく機能的になります。
通常、プログラミング言語のライブラリは、パッケージマネージャーを介して取得できます。開発者が必要なライブラリを指定した後、パッケージマネージャーが自動的に依存関係を解決し、必要なファイルやコードをダウンロードしてプロジェクトに組み込んでくれる、という流れです。
つまり、ライブラリは何度でも利用できる便利かつ信頼性の高い機能の集まりであり、利用することで開発時間の短縮や効率化を図ることができます。
Juliaで使用されているライブラリのカテゴリとは
Juliaで使用されるライブラリは、数値計算や統計分析、機械学習、可視化、ウェブ開発、データベースなどのカテゴリに分類されます。
Juliaで使用されるライブラリのカテゴリについて、代表的なものと具体的なライブラリの例は以下の通りです。
カテゴリ | Juliaの代表的なライブラリ |
数値計算・科学技術計算 |
LinearAlgebra:行列演算 Optim:最適化アルゴリズム DifferentialEquations:常微分方程式 |
統計分析・データ操作 |
DataFrames:データ操作・データフレーム処理 StatsBase:統計的な計算やデータ解析 |
機械学習・ディープラーニング |
MLJ:機械学習モデルの構築・評価 Flux:ディープラーニング |
可視化 | Gadfly:プロット・グラフ作成 |
ウェブ開発 | HTTP.jl:HTTPリクエストの送受信 |
データサイエンス領域のライブラリ
Juliaにはデータフレームや可視化、確率的プログラミング、データベース接続など
データサイエンス領域でよく利用されているライブラリが豊富に用意されています。
Webフレームワーク
Julia内には、いくつかWebフレームワークがあります。
例えばフルスタックのWebフレームワークである「Genie」や、静的なウェブサイトやブログ作成ができる「Franklin」、Webサーバーとルーティングのフレームワーク「Mux」などが、Juliaでよく使われるWebフレームワークです。
Juliaを使用したWebアプリケーションやサイト構築には、Webフレームワークを利用すると便利かつ安全に行えます。
Python, C/C++との接続・連携
JuliaはPythonやC/C++と連携できる特徴があります。
データサイエンス領域で役立つライブラリに絞ると、Pythonであれば数値計算や行列操作のNumPyやデータ解析のPandas、機械学習のデータの前処理やモデル評価ができるScikit-learnがJuliaと連携しやすいライブラリです。
また、C/C++では線形代数演算ライブラリEigenや画像処理ライブラリOpenCV、ディープラーニングのTensorFlowなどが挙げられます。
もちろん、Juliaでも似たような機能を持つライブラリは存在しますが、使い慣れたPythonやC/C++で開発したモデルをJuliaと連携させることで、効率的な開発が可能です。
機械学習、ディープラーニング
Juliaには、機械学習やディープラーニングに用いられるライブラリも充実しています。
例えばニューラルネットワークモデルの構築やトレーニング、推論に使える「Flux.jl」や、モデル構造の定義、異なる種類のレイヤーの組み合わせが可能な「Mocha.jl」、ニューラルネットワークのトレーニングや推論に便利な「Knet.jl」、TensorFlowを利用するための「ensorFlow.jl」などが挙げられます。
Juliaのライブラリを扱うことで機械学習やディープラーニングを効率的に実行できる他、Juliaの特徴である統合性を活かして他の言語との連携も可能です。
科学技術計算(微分方程式・グラフ生成)
Juliaが最も得意とするのが、科学技術計算の分野です。特殊な計算が簡単にでき、グラフ化ツールも充実しています。
科学技術計算では、積分アルゴリズムやイベント処理、並列計算などの機能を有する「DifferentialEquations.jl」や、自動微分パッケージ「Zygote.jl」、最適化モデリング「JuMP.jl」などが有名です。また、グラフ化には2Dに特化した「Gadfly.jl」や3Dも可能な「Makie.jl」、カスタマイズの自由度が高い「Plots.jl」があります。
これらのライブラリは、科学技術分野でのデータ処理、モデリング、シミュレーションなどに幅広く活用されています。
Juliaで使われているライブラリ一覧
実際にJuliaでよく使われるライブラリを、カテゴリごとに紹介します。
Juliaのライブラリは、Juliaの対話型のコマンドライン環境であるJulia REPL(Read-Eval-Print Loop)にコマンドを入力して実行することで、簡単にダウンロードができます。なお、REPLはJuliaの標準インストールに含まれており、ターミナルまたはコマンドプロンプトから起動することができます。
データサイエンス領域のライブラリ
データサイエンス領域のJuliaライブラリについて紹介します。
Gen(probcomp/Gen.jl)
Gen(probcomp/Gen.jl)はJuliaの確率的プログラミングに用いられるライブラリで、確率モデルの表現や推論をする際に役立ちます。
例えば、ベイズ統計モデリングや、機械学習の問題を解決するときに、probcomp/Gen.jlから最適なモデル表現能力や推論手法を提供してもらえます。JuliaでGenをダウンロードするときは、REPLで「pkg> add Gen」を入力するか、GitHubから入手可能です。
また、Gen公式HPによると研究開発の際にGen を使用する場合は、PLDI 論文の引用が推奨されています。
JuliaPlots/Plots.jl
JuliaPlots(Plots.jl)は、Juliaのデータ可視化のためのプロットパッケージです。
Plots.jlは散布図、折れ線グラフ、棒グラフなど様々な種類のプロットを生成できる上、初心者でも使いやすいよう設計されています。また、プロットの組み合わせやアニメーション、3Dプロットなども可能です。さらに、プロットオプションやテーマが豊富にあるため、外観やスタイルを自在にカスタマイズできます。
Plots.jlは、REPLで「Pkg.add(“Plots”)」を入力するか、GitHubからダウンロードできます。
MakieOrg/Makie.jl
MakieOrg/Makie.jlはJuliaの3D可視化ライブラリで、美しいグラフィックスだけでなく、インタラクティブに可視化できるのが特徴です。GPU(Graphics Processing Unit)を使用して高速描画ができるので、大規模なデータセットや複雑な3Dシーンの描画も効率的に行うことができます。
例えば散布図や折れ線グラフはもちろん、ヒートマップやサーフェスプロットなども描画可能です。グラフのスタイルや外観を自在に調整でき、細かい部分までカスタマイズすることができます。
MakieOrg/Makie.jlのダウンロードは、REPL上で「add Makie」を実行するか、GitHubから入手可能です。
GiovineItalia/Gadfly.jl
GiovineItalia/Gadfly.jlはJuliaの2Dプロットライブラリで、2D特有の可読性の高いプロットを作成することができます。プロットの要素やスタイル(色、線の種類、軸のラベルなど)を指定する際も、直感的な文法で簡単にできるのが特徴です。
また、プロットの外観の切り替えも簡単で、用意されたテーマやカスタムテーマを使用するとプロットのスタイルを一括変更できます。
また、Gadfly.jlはJuliaでインタラクティブなウィジェット作成ができる「Interact.jl」と統合されており、マウスのホバーやクリックなどのユーザーの操作に反応するようなプロットも作成可能です。
Gadfly.jlのダウンロードは、REPL上で「add(“Gadfly”)」を実行するか、GitHubから入手可能です。
Webフレームワーク
JuliaのWebフレームワーク「GenieFramework/Genie.jl」について説明します。
GenieFramework/Genie.jl
GenieFramework/Genie.jlは高生産性とパフォーマンスを両立させることを目指して設計されたWebアプリケーションフレームワークです。モジュールベースのアーキテクチャを採用しており、アプリケーションの機能をモジュールに分割して開発できます。
また、Genie.jlはデータベースとのやり取りを簡単にするORM機能を有しており、データベースの操作やクエリの生成を簡単に行えます。さらにHTTPリクエストの処理やセッション管理、認証の要素も用意されているため、ユーザーのセッション管理やログイン機能を簡単に実装できます。
Genie.jlのダウンロードはREPL上で「add Genie」を実行するか、GitHubから入手可能です。
機械学習、ディープラーニング
機械学習やディープラーニングに利用できるJuliaライブラリについて説明します。
FluxML/Flux.jl
FluxML/Flux.jlはJulia言語で実装されたディープラーニングフレームワークです。主にニューラルネットワークモデルの構築やトレーニング、推論に使えるツールが豊富に用意されています。
例えば、自動微分をサポートしているため、モデルの学習における勾配降下法なども簡単に行えます。また、Flux.jlはモジュール性に優れているメリットがあり、異なる層や損失関数、最適化手法などの組み合わせも簡単です。
Flux.jlのダウンロードは、REPL上で「add Flux」を実行するか、GitHubから入手可能です。
denizyuret/Knet.jl
denizyuret/Knet.jlは、Juliaで実装された高性能なディープラーニングフレームワークです。モデル構築やGPUサポートなどの機能があり、主にニューラルネットワークのトレーニングや推論に利用されます。
malmaud/TensorFlow.jl
malmaud/TensorFlow.jlは、JuliaでTensorFlowを利用するために使用されます。モデル構築や最適化、分散トレーニング、GPUサポート、自動微分機能などTensorFlowの機能をJuliaで使用でき、ディープラーニングプロジェクトの開発や研究を効率的に行えます。
科学技術計算(微分方程式・グラフ生成)
次に、Juliaのライブラリの中で、科学技術計算に特化したライブラリについて紹介します。
SciML/DifferentialEquations.jl
SciML/DifferentialEquations.jlは、Juliaで実装された常微分方程式(ODE)ソルバーパッケージです。積分アルゴリズムやイベント処理、並列計算などの機能を有しています。ユーザーフレンドリーなAPIも特徴的で、大規模なODEシステムにも対応しています。
FluxML/Zygote.jl
FluxML/Zygote.jlは、Juliaで実装された自動微分パッケージで、主にディープラーニングのような反復的な計算に適しています。
Zygote.jlを使用することで、手動で微分ルールを指定せずとも、微分を簡単に行うことができます。また、Flux.jlなどの他の機械学習ライブラリとの互換性が高く、最適化手法やニューラルネットワークの学習に活用できます。
JuliaOpt/JuMP.jl
JuliaOpt/JuMP.jlは最適化モデリングのライブラリです。直感的で柔軟な数学的表現で記述でき、解を求めるためのツールが豊富に用意されています。
例えば変数や制約条件などを定義し、最適化問題のモデル化に利用できるほか、直感的なモデル構築が可能です。
また、ソルバーの切り替えやパラメータの調整も簡単で、問題に応じて最適なソルバーを選択できます。並列処理をサポートしているため、大規模な最適化問題にも対応できます。
まとめ
今回はJuliaで使われる機械学習ライブラリについて、カテゴリ別に紹介してきました。Juliaのライブラリは、無料で利用できることに加え、データ処理や数値計算におけるパフォーマンスが良いため、データサイエンス分野で幅広く活躍できます。
また、Juliaのライブラリは相互に連携しやすいのも特徴で、例えばデータの前処理にDataFrames.jlを使用し、モデルの構築にFlux.jlを使用し、可視化にPlots.jlを使用するなど、異なるライブラリを組み合わせて柔軟な解析パイプラインを構築できます。
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