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労災保険にフリーランスや個人事業主も入れる?特別加入制度の内容と加入の流れを紹介

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フリーランス・個人事業主への労災適用を可能にする「特別加入制度」とは?

雇用されている人や、労働者が加入できる労災保険制度。

労災保険には、フリーランスや個人事業主への労災適用の「特別加入制度」があることをご存じですか?

労災保険制度とは雇用されている労働者の通勤・業務中のケガや事故に対して、保険給付を行う制度です。

原則として事業主が払う保険料です。

「雇用されている労働者」にはアルバイトやパートタイマーの雇用形態は関係なく、賃金を支払われる全ての人が該当します。

労災保険へ特別加入すると、フリーランスの方でも労働者と同じような補償が受けることが可能です。

補償は、業務中のケガや事故だけでなく通勤中も含まれます。

労災保険の特別加入で受けられる主な補償内容は以下の4つです。

療養(補償)給付 ケガや病気をした場合に補償される。
休業(補償)給付 ケガや病気で休業した場合に補償される。
障害(補償)給付 障害が残る場合に補償される。障害等級により補償額が異なる。
遺族(補償)給付 業務中または通勤中に死亡した場合、遺族に対して補償される。死亡者の収入によって生計を立てていた遺族へ支払われる。
介護(補償)給付 介護が必要となった場合に補償される。

労災保険は自身の補償だけではなく、家族に対しての補償もあるので手厚いです。

では、特別加入制度に加入できる職種はどのような方たちなのでしょうか。

加入できる職種は、大きく分けて以下の4つの職種に分類されます。

  • 中小事業主
  • 一人親方
  • 特定作業従事者
  • 海外派遣者

それぞれの職種の加入者の範囲は、具体的に以下の通りになっています。

  • 中小事業主と認められる事業規模
業種 労働者数
金融業
保険業
不動産業
小売業
    50人以下
卸売業
サービス業
100人以下
上記以外の業種 300人以下
  • 一人親方と認められる加入者の範囲

①自動車を使う運送の事業・原動機付自転車・自転車で行う貨物運送事業

②土木・建築の事業

③漁船による、魚介類や海水類などの採捕事業

④林業

⑤医薬品の配置販売

⑥再生利用の目的となる廃棄物の収集・運搬・運別・解体などの事業

⑦船員が行う事業

⑧柔道整復師による事業

⑨高齢者が新たに行う事業・社会貢献事業に係る委託契約、その他の契約に基づき高年齢者が行う事業

⑩はり師、きゆう師が行う事業

⑪歯科技工士が行う事業

  • 特定作業従業者の加入者の範囲

①特定農作業に携わる者

②指定農業機械を扱う者

③国または地方公共団体が行う訓練従事者

④家内労働者およびその補助者

⑤労働組合等の一人専従役員(委員長等の代表者)

⑥介護作業に携わる人または家事支援従事者

⑦芸能関係に携わる者

⑧アニメーション制作に携わる者

⑨ITフリーランス

  • 海外派遣者の特別加入の範囲

下記の3つのうち、どれかに該当する場合は加入が可能です。

①日本国内のビジネスオーナーから、海外で行うビジネスに働き手として配置される人

②日本国内のビジネスオーナーから、海外にある中小規模のビジネスに事業主として配置される人

③独立行政法人国際協力機構など、開発途上地域に対する技術協力の実施のビジネスを行う団体から配置されている人。また、開発途上地域で行われているビジネスに携わる人。

【引用元:特別加入制度のしおり(中小事業主等用)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

加入するかどうか悩んでいるフリーランスの方は、特別加入のパンフレットを参考に検討してみてください。

労災保険の特別加入についての相談や、詳しい内容を知りたい方は近くの労働基準監督署や労働局へ問い合わせましょう。

フリーランスが労災保険に特別加入するメリット 

労災保険に特別加入するメリットは、以下の7つが挙げられます。

  • 通勤中の病気・ケガ・障害または死亡も含む
  • 治療費の自己負担無し
  • 事業主とその家族も対象
  • 任意で加入OK
  • 掛け金は給付日額によって選べる
  • 保険料が安く、手厚い
  • 保険料は社会保険控除の対象になる

労災保険の特別加入の補償は、業務中のケガや事故の場合、治るまでの治療費が無料です。

フリーランスの方が特別加入すると、以下の不安や悩みがなくなります。

  • 「いつまで通院するんだろう…」
  • 「本当はまだ治っていないけど、治療費がかさむから通院しないで仕事しよう」
  • 「家族のために無理して働かなきゃ…」

フリーランスの方が一番心配なのは、万が一働けなくなったときのお金が入ってこない時ではないでしょうか。

労災保険に特別加入すると、いざという時のために備えられます。

また、掛け金も給付日額によって選べるので無理なく支払うことが可能。

死亡後の遺族に対しての補償も充実しているので入っておいて損はないです!

フリーランスの方は特に身体が資本なので、自身だけではなく家族の為にも加入しましょう。

労災保険に特別加入できるフリーランス・個人事業主の対象が広がった 

労災保険の特別加入は以前からありましたが、2021年4月1日より、加入できる対象が広がりました。 

今回、対象になった職種は以下の6つです。

  • 芸能関係作業従事者
  • アニメーション制作作業従事者
  • 柔道整復師
  • 創業支援等措置に基づき事業を行う方(2021年9月より対象)
  • 原動機付自転車または自転車を使用して行う貨物を運送するビジネス
  • 情報処理システム設計等の情報処理に係るビジネス

では、一つずつ解説していきます。

① 芸能関係作業従事者 

サラリーマンに該当しない芸能従事者も、特別加入の対象になりました。(2021年4月1日~)

対象になる職種は具体的に以下の通りです。

芸能実演家 ・俳優(舞台俳優、映画、テレビ、映像メディア俳優、声優)
・舞踊家(日本舞踊、ダンサー、バレリーナ等)
・音楽家(歌手、演奏家、作詞家、作曲家等)
・演芸家(落語家、漫才師、奇術師、司会、DJ、大道芸人等)
・スタント
芸能製作作業従事者 ・監督
・撮影
・照明
・音響、効果、録音
・大道具製作(建設の事業を除く)
・美術装飾
・衣装
・メイク
・結髪
・スクリプター
・ラインプロデュース
・アシスタント
・マネジメント

申し込み方法は、自身の加入したい団体へ申し込むだけでOKです。

団体の申し込み方法に沿って、申し込みましょう。

② アニメーション制作作業従事者 

アニメ制作に携わる職種の方も、特別加入の対象です。(2021年4月1日~)

アニメ制作を仕事とする方たちは、なんと約7割がフリーランス。

日本のアニメは世界に誇る素晴らしい文化であり、アニメ文化の発展と制作に携わる人たちの環境改善を図るため、労災保険の特別加入の対象になりました。

該当する職種は、具体的に以下の通りとなっています。

  • キャラクターデザイナー
  • 作画
  • 絵コンテ
  • 原画
  • 背景
  • 監督(作画監督、美術監督等)
  • 演出家
  • 脚本家
  • 編集(音響、編集等)

(※声優の方は、芸能関係作業従事者になるので除く)

加入の手続きは芸能関係作業従事者と同様、加入したい特別団体へ申し込みをしてください。

③ 柔道整復師 

柔道整復師業をする方たちも、特別加入の対象になりました。(2021年4月1日~)

柔道整復師法に基づく、柔道整復師の資格保有者であれば加入が可能。

対象となる方は、具体的に以下の通りになっています。

従業員を雇っていない方 一人親方その他の個人事業主として加入OK
従業員を雇っている方 従業員の数によって「中小事業主」として加入OK

それぞれの加入の流れは以下を参考にしてください。

  • 従業員を雇っていない一人親方の場合

ステップ①加入したい団体へ申し込む

ステップ②団体が所管の労働基準監督署を通じ、都道府県労働局長へ提出

③加入

  • 従業員を雇っている、中小企業主として加入する場合

ステップ①事務組合に事務を委託

ステップ②事務組合を通じて申請書を所管の労働基準監督署へ提出

ステップ③都道府県労働局へ提出

従業員を雇っている方は、労働保険事務組合の手続き・申し込み方法に合わせて申請してください。

④ 創業支援等措置に基づき事業を行う方 

創業支援等措置に基づき事業を行う高齢者の方も、加入対象となります。(2021年4月1日~)

(※創業支援等措置とは:今までの従業員ではなくなり、フリーランスとして働くこと。業務委託契約を交わして業務を行うので、新しく業務委託の方法・報酬をどうするか決めなけらばならない。)

改正高年齢者雇用改定法に基づき、創業支援措置の中で仕事をしている高年齢者が加入できるようになりました。

今回の創業支援等措置は、以下の雇用によらない措置を指します。

  • 70歳以上まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳以上まで継続定期に以下の事業に従事できる制度の導入

①事業主が自ら実施する社会貢献事業

②事業主が委託、出資(資本提供)等する団体が行う社会貢献事業

対象が広がったことにより、定年退職後はフリーランスとして働く高年齢者にとっては安心です。

⑤ 原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業 

原動機付き自転車の他に、自転車を使用して貨物運送事業を行う個人事業主も加入の対象となります。(2021年4月1日~)

今までは原動機付自転車のみの対象でしたが、今回は自転車を使用する方も対象になったところがポイント。

対象が広がった要因としては、以下の2つが挙げられます。

①コロナ禍になって自宅で過ごす時間が増え、フードデリバリーを使用する人たちが増え、デリバリー業をする人が増えた。

②食品の配達は短時間でしないといけないので、配達員の交通事故のリスクに備えるため。

配達員として業務を行う方は、万が一の交通事故や事故に巻き込まれる可能性があるので、労災保険の特別加入をした方が望ましいです。

⑥ 情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業 

ITフリーランスの方も、労災保険へ特別加入できるようになりました。(2021年9月1日~)

対象範囲は具体的に以下の通りです。

  • ITコンサルタント
  • プロジェクトマネージャー
  • プロジェクトリーダー
  • システムエンジニア
  • プログラマ
  • サーバーエンジニア
  • ネットワークエンジニア
  • データベースエンジニア
  • セキュリティエンジニア
  • 運用保守エンジニア
  • テストエンジニア
  • 社内SE
  • 製品開発、研究開発エンジニア
  • データサイエンティスト
  • アプリケーションエンジニア
  • webデザイナー
  • webディレクター

パソコン1本で稼げるようになった今の時代だからこそ、特別加入の範囲が広がったのはITフリーランスの方にとっては安心できます。

「ITって座り仕事だし、労災保険って必要?」と思う方もいるでしょう。

労災保険は通勤中のケガや事故も含まれるので、クライアント様のところへ行くときの事故も対象です。

フリーランスの方は万が一のことを考えて、加入を検討してください。

労災保険に特別加入するフローを紹介

労災保険の加入手続きの流れは、以下の流れになっています。

①特別加入団体へ申し込み手続きをする

(※特別加入団体とは:同じ特定の事業・作業に従事する人で構成された団体のこと)

②団体が所管の労働基準監督署を通じ、都道府県労働局長へ提出

③加入

加入するときは、団体の申し込み方法に沿って申し込むようにしましょう。

また、特別加入申請書や給付関係資料は厚生労働省よりダウンロードできるので気になる方はチェックしてください。

労災保険の特別加入での保険料はどれくらいか 

特別加入の保険料は、給付基礎日額と労災保険率によって金額が変わってきます。

そして、労災保険率は職種によって異なります。

年間保険料の計算式は以下の通りです。

給付基礎日額×365日×労災保険率

表1と表2を参考に、計算してください。

(表1) 給付基礎日額と保険料算定基礎額     (単位:円)

給付基礎日額 保険料算定基礎額(給付基礎日額×365日)
3,500 1,277,500
4,000 1,460,000
5,000 1,825,000
6,000 2,190,000
7,000 2,555,000
8,000 2,920,000
9,000 3,285,000
10,000 3,650,000
12,000 4,380,000
14,000 5,110,000
16,000 5,840,000
18,000 6,570,000
20,000 7,300,000
22,000 8,030,000
24,000 8,760,000
25,000 9,125,000

(表2) 職種による労災保険率 (主な職種) (単位:1/1,000)   

職種 労災保険率
漁船による自営業者 48
船員が行う事業 48
タクシー・原動機付き自転車、自転車を使用して貨物運送事業を行う個人事業主 12
建設業の一人親方 18
芸能関係作業従事者 3
アニメーション制作作業従事者 3
柔道整復師 3
ITフリーランス 3
職場適応訓練受講者 3
創業支援等措置に基づく事業を行う者 3

給付基礎日額は3,500円〜25,000円の範囲で選べ、給付基礎日額が高くなるにつれ保険料も高くなる計算になっています。

(例)

柔道整復師の方が、給付基礎日額10,000円の労災保険の特別加入をした場合の年間保険料

10,000円×365日×0.003=10,950円/年

月額に換算すると、約912円になります。(10950円÷12か月)

また、保険料は社会保険料控除の対象になります。

確定申告の時にはしっかり申告するようにしてください。

特別加入で健康診断が必要なケース 

労災保険の特別加入は、全ての人が申請するだけで加入OKではありません。

以下に該当する人は、加入する際に健康診断が必要です。

業務の種類 加入前に左記の業務に従事した期間(通算期間) 必要な健康診断
粉じん作業を行う業務 3年以上 じん肺健康診断
振動工具使用の業務 1年以上 振動障害健康診断
鉛業務 6か月以上 鉛中毒健康診断
有機溶剤業務 6か月以上 有機溶剤中毒健康診断

健康診断が必要な方は、申請時に監督署長より「健康診断実施依頼書」が交付されるので、指定の病院で健康診断を受診してください。

健康診断に係る費用は自己負担ゼロですが、交通費は自己負担になります。

ただし、健康診断証明書を提出しなかったり嘘の申告をした場合、加入できないので注意が必要です。

フリーランスの方はこちらの記事もご覧ください

まとめ 

フリーランスや個人事業主の方は、業務中・通勤中のケガや事故に備えてぜひ労災保険へ特別加入しましょう。

今回の記事をまとめると、以下の通りです。

  1. 掛け金が手ごろなのに補償が厚い
  2. 自身の補償だけでなく、家族に対しても補償される
  3. 給付日額によって掛け金が選べ、保険料が高い!と困ることがない

気になる点や相談は、近くの労働基準監督署または労働局へ問い合わせてください。

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