SRE組織を立ち上げる際に必要な4つのポイントと3つの指標
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目次
SREという職種が生まれた背景
SREという職種が生まれた背景について解説していきます。
SREが生まれた背景・求められている背景
SRE、すなわち「Site Reliability Engineering」は、ITサービスの信頼性を高めるためのアプローチとして誕生しました。このアプローチは、単なるWebサイトの信頼性向上だけでなく、IT全般のサービスに対するものとして認知されるべき概念です。
2000年頃、Google社が自社の主要サービス「google.com」の安定稼働を目指して行った取り組みがSREの起源となります。この取り組みは、従来の運用エンジニアの方法ではなく、ソフトウェアエンジニアの技術を活用して、開発と運用の間の壁を取り払う新しいアプローチでした。
Googleのビジネスの中心であった「google.com」の信頼性は、ビジネスの成長と拡大にとって絶対的な要件だったため、サイトの安定稼働はGoogleの生命線とも言えるものでした。
現在、SREのアプローチはWebサイトだけでなく、広く分散コンピューティングシステムなどにも適用されています。
SRE と DevOps の違い
SREとDevOpsは、一見似ているように感じられるかもしれませんが、実際には異なる概念として捉えられます。
DevOpsは、開発と運用のチームが協力して、ユーザーに対してより良いサービスを提供するための意識や文化を指します。
一方、SREは、そのDevOpsの思想を具体的に実現するための役割や手法を指します。
DevOpsはチーム間の連携を文化や哲学的な視点で捉えるのに対し、SREはソフトウェアの活用を中心とした具体的な手法やチーム体制を指します。
Google社の考え方としては、DevOpsが思想や文化であるならば、SREはその思想を実現するための具体的な役割や手法であると位置づけられています。
SRE組織を立ち上げる際に必要な4つのポイントとは
SRE組織を立ち上げる際に必要な4つのポイントについて解説していきます。
「理想的なSRE」を知る・定義する
SREの概念はGoogleが提唱し、その理想的な組織構成は特定のメンバー構成を持つことが強調されています。
しかし、この理想的な構成はGoogleの独自のビジョンに基づいており、他の企業や組織にそのまま適用するのは難しい場合が多いです。
重要なのは、SREの本質的な目的や役割を理解し、それを自社の状況やニーズに合わせて適切に定義・適用することです。
理想的なSREとは、単に技術的なスキルや知識を持つ人材だけでなく、チーム全体で不足しているスキルや知識を補完し合い、信頼性の高いサービスを提供することを目指す組織を指します。
スモールスタートする
SREの導入は、大規模な変革を一度に試みるのではなく、小さなステップから始めることをおすすめします。
初期の段階では、特定のプロジェクトやサービスにSREのアプローチを取り入れ、その効果や課題を確認しながら進めることが効果的です。
このスモールスタートにより、組織内でのSREの理解を深めるとともに、実際の運用における課題や改善点を明確にし、次のステップへと進める土台を築くことができます。
SRE人材の採用を進める
SREの成功は、適切な人材の採用に大きく依存します。Googleの提唱する理想的なSREの組織構成を参考にしつつ、自社のニーズや状況に合わせて人材を採用することが重要です。
特に、アプリケーションの開発スキルやインフラに関する知識、SREの導入経験など、多岐にわたるスキルを持つ人材は非常に価値が高いです。しかし、これらのスキルを全て持つ人材は希少であるため、採用の際には慎重な判断が求められるといえるでしょう。
他社のSRE組織の立ち上げをヒアリングする
SREの導入や運用に関するノウハウや経験は、他社の事例や経験を参考にすることで大きなヒントを得ることができます。
他社のSRE組織の立ち上げや運用の経験をヒアリングすることで、自社のSRE導入の方向性を明確にするとともに、様々な課題や解決策を知ることができます。
このヒアリングを通じて、自社のSRE導入の際の課題や方向性をより具体的にし、成功に繋げるための手助けとすることができます。
SREが目指す3つの指標
SREが目指す3つの指標について解説していきます。
サービスレベル目標(SLO)
SLO、すなわちサービスレベル目標は、サービス事業者が提供するサービスの品質や性能に関する具体的な目標を示すもので、この目標はサービスの利用者やステークホルダーに対して、どの程度の品質や性能を提供するかを明確にするためのものです。
例えば、ウェブサービスの応答時間やダウンタイムの頻度など、具体的な数値で示されることが多いです。
SLOは、サービスの品質を維持・向上させるための基準として設定され、その達成度を測るための指標としてSLIが使用されます。
SLOを設定することで、サービス提供者はユーザーの期待に応えるための方針を明確にし、組織内での取り組みの方向性を示すことができるようになります。
サービスレベル契約(SLA)
SLA、すなわちサービスレベル契約は、サービス事業者とユーザーとの間で合意されたサービスの品質や性能に関する契約です。この契約には、SLOで設定された目標を達成するための具体的な取り組みや、目標を達成できなかった場合のペナルティなどが明記されています。
SLAは、ユーザーとサービス事業者との間の信頼関係を築くための重要なツールとなるため、ユーザーはSLAをもとにサービスの品質を確認し、サービス事業者はSLAを遵守することでユーザーの信頼を得ることができます。
サービスレベル指標(SLI)
SLI、すなわちサービスレベル指標は、SLOの達成度を測るための具体的な指標を示すものです。この指標は、サービスの品質や性能を数値で示すもので、例えばウェブサービスの場合、サーバーの応答時間やエラーレートなどが考えられます。
SLIは、サービスの品質を客観的に評価するための基準として使用され、SLOの達成度を確認するための重要なツールとなるため、サービス事業者はSLIをもとにサービスの品質を継続的にモニタリングし、必要に応じて改善の取り組みを行うことができます。
SRE組織を立ち上げる際に求められるスキルと責任とは
SRE組織を立ち上げる際に求められるスキルと責任について解説していきます。
SREに求められるスキル
SREに求められるスキルには以下のようなスキルがあります。
サービスアーキテクチャの定義
SREエンジニアが持つべき最初のスキルは、サービスアーキテクチャの定義能力です。これは、システムやサービスがどのように構築され、どのように動作するかを理解し、それを明確に文書化する能力を指します。
サービスアーキテクチャは、システムの全体像を示す設計図のようなものであり、その中での各コンポーネントの役割や相互の関連性を明確にすることが求められます。
このスキルを持つことで、システムの弱点やボトルネックを特定し、効果的な改善策を提案することが可能となります。
ミドルウェアやWebアプリケーションなどの開発経験
次に、ミドルウェアやWebアプリケーションの開発経験が必要です。SREエンジニアは、単にインフラの運用や監視だけでなく、アプリケーションの開発や改善にも関与します。
具体的には、システムの性能を最適化するためのコードの修正や、新しい機能の追加などが考えられます。また、ミドルウェアの選定や設定の最適化もSREの役割として求められることが多いです。
このため、プログラミング言語やフレームワークの知識、データベースの操作方法など、開発全般に関するスキルが必要となります。
大規模サービスの開発、運用経験
大規模サービスの開発や運用の経験も非常に重要です。
大規模なシステムは、小規模なものとは異なる課題や問題点を持っています。例えば、トラフィックの増加による性能の低下、複数のサーバーやデータベースの同期の問題、セキュリティの脅威などが考えられます。
これらの問題に対処するためには、過去の経験や知識が不可欠です。大規模サービスの運用経験を持つことで、予期しないトラブルや障害に迅速に対応し、サービスの品質を維持することができます。
クラウド構築・運用スキル(AWS / Azure / GCP)
現代のSREエンジニアにとって、クラウド技術は避けて通れない領域となっています。
AWS、Azure、GCPなどの主要なクラウドプラットフォームに精通していることは、システムのスケーラビリティや耐障害性を確保する上で不可欠です。これらのプラットフォームは、従来の物理サーバーとは異なる特性や機能を持っているため、それぞれの特徴を理解し、最適なサービスやリソースを選定する能力が求められます。
例えば、AWSのEC2やLambda、GCPのCompute Engine、AzureのVirtual Machinesなど、それぞれのサービスが持つ特性や料金体系を理解することで、コスト効率の良いシステム構築が可能となります。
また、クラウドの自動化ツールや監視サービスを駆使して、システムの運用を効率化するスキルも必要です。
ビジネスコミュニケーション
SREエンジニアは、技術的な問題だけでなく、ビジネスの側面も考慮しながら業務を進める必要があります。そのため、ビジネスコミュニケーションのスキルは非常に重要です。
具体的には、開発チームやマーケティング、営業などの他部門との連携を円滑に進めるためのコミュニケーション能力や、システムの障害や問題が発生した際に関係者に対して迅速かつ正確に情報を伝える能力も必要です。
さらに、ビジネスの要件や目的を理解し、それを技術的な解決策に落とし込む能力も必要とされます。このようなビジネスコミュニケーションのスキルを持つことで、SREエンジニアは組織全体の目標達成に貢献することができるでしょう。
SREに求められる責任
SREに求められる責任については以下のような項目が挙げられます。
組織のサイロ化を削減・改善
組織内のサイロ化は、異なる部門やチームが情報やリソースを共有しない状態を指します。
このような状態は、効率的なコミュニケーションや協力の障壁となり、組織全体の生産性や革新性を低下させる可能性があります。SRE(Site Reliability Engineering)の役割は、このサイロ化を削減し、組織全体での連携を強化することにあります。
具体的には、SREは開発と運用の間のギャップを埋める役割を果たし、両者の協力を促進します。これにより、迅速なフィードバックループが確立され、システムの信頼性やパフォーマンスが向上します。
また、SREは組織内の異なるチームと連携し、共通の目標やKPIを設定することで、サイロ化の影響を最小限に抑えることができます。
ツールと自動化
ツールと自動化は、SREの核心的な要素です。手動の作業や反復的なタスクは、エラーの原因となるだけでなく、時間とリソースの浪費となります。SREは、これらの作業を自動化することで、システムの信頼性を向上させるとともに、迅速な問題解決を可能にします。
具体的には、デプロイメントの自動化、インフラストラクチャのコード化、モニタリングとアラートの自動化などが挙げられます。また、SREは適切なツールを選択し、これらのツールを最大限に活用することで、作業の効率化や品質の向上を図ります。
ツールと自動化の導入は、組織全体の生産性や革新性を高める鍵となります。
緊急インシデント対応
緊急インシデント対応は、SREの重要な責任の一つです。システムやサービスに障害が発生した場合、迅速かつ効果的な対応が求められます。
SREは、事前にインシデント対応のプロセスや手順を定義し訓練を行うことで、実際の障害発生時に迅速に対応することができます。
また、インシデント後のレビューや分析を通じて、原因を特定し、再発防止策を講じることが重要です。
SREは、これらのプロセスを通じて、システムの信頼性や安定性を維持し、ユーザーやビジネスへの影響を最小限に抑える役割を果たします。
変更管理
変更管理は、システムやサービスの変更を計画的かつ効果的に管理するプロセスを指します。SREは、変更の影響を事前に評価し、リスクを最小限に抑えるための手順やガイドラインを定義します。
具体的には、変更の申請、承認、実施、検証、そしてレビューの各ステップを通じて、変更を管理します。
SREは、変更管理のプロセスを通じて、システムの安定性や信頼性を維持し、予期しない問題や障害を防ぐ役割を果たします。
ITインフラストラクチャ管理
ITインフラストラクチャ管理は、物理的なサーバーやネットワーク、仮想化技術、クラウドリソースなど、ITリソースの設計、導入、運用、最適化を総合的に管理する活動を指します。
SREは、これらのリソースを効果的に管理し、システムのパフォーマンスや信頼性を最大化する役割を果たします。
具体的には、リソースの監視、キャパシティプランニング、パフォーマンスチューニング、セキュリティ対策などが挙げられます。SREは、これらの活動を通じて、ITインフラストラクチャの効率性や柔軟性を向上させ、ビジネスのニーズや変化に迅速に対応することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事ではSRE組織を立ち上げる際に必要な4つのポイントと3つの指標について解説してきました。
SREには多くの役割と責任が発生するため、採用する側も適切なSRE人材が確保できるように分析する必要があります。
需要が増加傾向にあるSREに関して必要なポイントを抑え、あらゆる事象に対応できるような環境づくりを構築していきましょう。
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