ETLとELTの違いとは?メリットとデメリットを紹介
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目次
ETLとELTの概要
企業や教育機関において、膨大なデータを処理するにはプロセスが重要です。データ処理プロセスにはいくつかの方法がありますが、中でも有名なのがETLとELTです。ETLとELTの概念は、いずれもデータ統合の手法として1990年代に導入されました。
ETLとELTはともに、処理プロセスの頭文字をとった用語であり、文字の並びが似ているため違いが分かりにくい方もいるでしょう。この記事では、ETLとELTの概要や長所、それぞれを導入すべきケースについて紹介します。
ETLとは
ETLは「ExtractーTransformーLoad」の頭文字をとった用語で、異なるデータソースから集めたデータを統合して保存し、分析や報告に活用する専用のデータベースである「データウェアハウス(DWH)」やデータベースにおけるデータ処理プロセスを指します。
まず、データを取り出し(Extract)、異なるソースから取得します。次に、データを変換(Transform)して、必要な形式や構造に変換します。最後に、変換されたデータを読み込み(Load)して、ターゲットのデータベースやDWHに格納します。
ETLは大量のデータを集約・整理し、分析やレポート作成などの目的で利用され、データの品質向上や効率的なデータ管理に役立つプロセスです。例えば企業の販売データや顧客情報、在庫データなどを異なるデータベースから取得し、必要な形式に変換して一元管理することで、ビジネスの意思決定や分析に活用できます。
ETLの発祥は、DWHとビジネスインテリジェンスの成長が背景にあります。1990年代になるとDWHが、ビジネスの意思決定をサポートするための基盤として利用され始めました。DWHにデータを統合する際に、データの取り出しから変換までのプロセスを網羅するETLの概念が生まれました。
ELTとは
ELTは「ExtractーLoadー Transform」の順でデータ処理を行う手法です。
データを取り出し(Extract)した後、データを読み込み(Load)して、DWHやデータベースに格納します。最後に、データを変換(Transform)して必要な形式や構造に整えます。ELTはデータ処理の効率を高めるため、大量のデータを一度に格納してから必要な分析や操作を行います。特にビッグデータの分析やリアルタイムデータの活用が必要な場合にELTが最適です。
そもそもELTが生み出されたのは、ビッグデータの台頭とクラウドコンピューティングの進化がきっかけです。2000年代後半から2010年代にかけてビッグデータ処理が重要性を増し、従来のETLアプローチでは大量のデータを効率的に処理するのが難しくなりました。そのため、データをまず読み込みしてから必要な変換を行うELTアプローチが登場しました。
さらにクラウドプラットフォームの普及がELTの採用を後押ししたことで、データのスケーラビリティと柔軟性が向上しました。
ETLとELTで何が違うのか
ETLとELTの違いは、データ変換(Transform)のタイミングです。
ETLではデータを取り出した後に変換し、最後に読み込みます。一方ELTでは、データを取り出してから直接読み込みし、最後にDWH内で変換を行います。
ETLは前処理が必要であるため、DWHへの変換に時間がかかりますが、データの準備や統合が簡単にできます。ETLはトランザクションデータやデータ品質の向上に適した手法です。
一方でELTは、読み込み後の柔軟な変換が可能で、DWHの処理能力を最大限に活用できるため、大量のデータ分析や可視化などの操作に適しています。
ETL・ELTのプロセスとそれぞれの長所とは
ETLとELTのプロセスは、データ変換と読み込みのタイミングが異なります。ここでは、ETLとELTのプロセスについての詳細と、それぞれの長所について説明します。
ETL・ELTのプロセス
比較項目 | 位置付け | 工程1 | 工程2 | 工程3 | 使い分けのポイント |
ETL | 単体ツール | 取り出し | 変換・加工 | 送出 | 非定型を含む大量データの高頻度収集 |
ELT | DBの一機能 | 〃 | 受け取り | 変換 | 定型的な少量データを低頻度で更新 |
ETLとELTに共通するプロセスは、最初にデータの取り出しをする点です。そして、データ変換と読み込みのタイミングが異なります。
ETL(Extract:取り出しーTransform:変換ーLoad:送出)のプロセスは、最初に異なるソースからデータを取り出して集めます。次に、取り出したデータを必要な形式や構造に変換し、クリーンアップして集計・分析できる状態に整えます。最後に、データをデータベースやDWHに読み込みます。ETLは、ビジネスインテリジェンスやレポート作成などに利用され、データ品質の向上させたい場合やデータを一元して管理したい場合に活用できます。
一方、ELT(Extract:取り出しーLoad:受け取りーTransform:変換)のプロセスは、ETLと逆の順序でデータ統合を行います。
まず、データを取り出して必要な項目を選択し、データを取得します。次に、データをデータベースやデータストレージに読み込みます。最後に、必要な変換や加工をデータベースの処理能力を利用して行います。ELTは、ビッグデータ処理やリアルタイム分析に適しており、柔軟性とスケーラビリティが高いのが特徴です。データを取り込むスピードが速く、分析に必要なデータを迅速に利用できます。
ETL・ELTそれぞれの長所とは
ETLの主な長所は、データ品質の高さや統合の容易さです。ETLはデータを変換してからクリーニング・整形を行います。データ変換の過程で品質の検証やバリデーションが可能であるため、データの品質基準に基づいて検証し、不正確なデータや重複したデータを特定できます。
また、ETLでは複数のソースからのデータを取り出してから一貫性のある形式に変換するため、データの統合が簡単です。さらにETLはデータを一度取り出してから変換し、元のシステムに対してリアルタイムなデータ要求を行わないため、負荷を分散できます。
一方、ELTの主な長所は、データ処理の柔軟さとリアルタイム処理が可能な点です。ELTではデータを読み込みした後で、DWHの処理能力を活用して複雑な変換や分析を行うため、さまざまなデータにも柔軟に対応できます。専用のETLツールを購入する必要もありません。
また、ELTはデータを直接読み込みするため、リアルタイムに近いタイムラグでデータを利用できます。
ETLを導入すべき具体的なケース
ETLはリアルタイム処理が苦手である一方、システム負荷を軽減でき、高品質なデータ処理が可能です。
ELTの長所は、以下のケースに活かせます。
- データベースの負荷を軽減したいケース
- 高度な分析機能を活用したいケース
- データベースエンジニアが社内にいないケース
データベースの負荷を軽減したいケース
ETLを導入することで、データベースの負荷を軽減し、データ処理を効率化できます。
ETLではデータを取り出してから変換するため、データベースにかかる処理負荷の分散が可能です。
ETLでは複数のデータソースからのデータを統合します。データベースに保存されるデータが統一され、最適化によって重複や不要データがなくなり、結果としてデータベースの負荷を軽減できます。
データの取り出しや変換には、Microsoft SQL Server Integration Services(SSIS)やTalendなどのETLツールを使用します。SSISはMicrosoftのSQL Serverとの統合性が高く、SQL Serverの他にもさまざまなデータソースと相互運用が可能です。ExcelやCSVなど、さまざまなデータソースからデータを取り出しできます。また、TalendはオープンソースのETLツールであり、無償で利用できるCommunity Editionもあります。ライセンス料を節約しながら高品質なETLツールを利用できます。
高度な分析機能を活用したいケース
高度な分析機能を活用したいケースでも、ETLが最適です。ETLのプロセスでは、データを異なるソースから収集してから必要な形式に変換・統合することで、分析のために一貫性のあるデータセットを準備できます。
また、ETLはデータベースやDWHへのデータ読み込みや、インデックスの作成、クエリの最適化などが行われるため、高速かつ効率的なデータアクセスと処理が可能となります。集計データの作成や時系列データの加工、データのデノイズなど、分析に適したデータ構造の作成もETLの得意分野です。
データベースエンジニアが社内にいないケース
データベースエンジニアが社内にいないケースにおいても、ETLは最適です。
ETLツールにはビジュアルデザイナが備わっているため、コーディングやプログラミングの知識がない方でも操作できます。データフロー図やフローチャートなどビジュアルインターフェースを使ってデータの取り出しや変換、読み込みのフローを視覚的に設計できます。
また、ETLツールはドキュメントが充実している場合が多く、使用方法や機能が分からない場合もドキュメントを見ながら解決できます。サポート体制も整っている場合が多く、公式コミュニティからのサポートも受けられます。
ELTを導入すべきケース
ELTはETLの逆のアプローチで、データをまず取り出し、その後読み込みしてから必要な変換を行います。ELTは柔軟なデータ処理能力や、リアルタイム処理が可能であるため、以下のケースに活かせます。
- ETLの活用をするまでにコストをかけたくないケース
- データ取り込みスピードを向上させたいケース
- 大量のデータを分析対象にしたいケース
ETLの活用をするまでにコストをかけたくないケース
ELTは、データ処理の柔軟性やスケーラビリティを提供する一方で、ETLに比べてコストを抑えることができるケースに最適です。
ELTでは、データベースやDWHの処理能力を活用してデータ変換するため、ETLに必要な変換処理の開発や、実行にかかるコストを削減できます。
また、ELTは一般的なデータベースやビッグデータのプラットフォームを使用できます。既存のデータベースや、データストレージソリューションに依存するため、追加のETLツール導入やライセンス費用を抑えられます。
データ取り込みスピードを向上させたいケース
ELTはデータ取り込みスピードを向上させたいケースにも最適です。なぜなら、ELTは効率的にデータ読み込みでき、高速かつリアルタイムなデータの取り込みが可能であるためです。
ELTでは、データをまず読み込みし、その後必要な変換を行います。データの読み込みプロセスは高速で行われるため、データを即座にDWHやデータベースに読み込みすることで、リアルタイムまたは近いリアルタイムでのデータ利用が可能です。
また、ELTではDWHやデータベースの処理能力を活用してデータ変換をするため、データの取り込みにかかる時間を短縮できます。
そしてELTはスケーラブルなアーキテクチャを有しており、大量のデータや増大するデータ量に対しても柔軟に対応できます。データを読み込みした後に必要な変換や分析を行うため、データの取り込みスピードを維持しながらデータ量の増加にも対応できます。
大量のデータを分析対象にしたいケース
大量のデータを分析対象にしたいケースにおいても、ELTは最適です。
ELTはデータをまず読み込みし、DWHやデータベースに保存した後、必要な変換や分析を行います。分析には保存先のDWHやデータベースの処理能力を活用するため、大量のデータに対しても柔軟に対応できます。
ELTではデータの統合や集計、パターンの取り出し、予測モデリングなど、多様な分析手法を適用することが可能です。SQLクエリやビジュアライゼーションツールなど、既存のデータ処理ツールや分析ツールとの統合もELTなら簡単に行えます。
また、ELTはETLと異なり、先に大量のデータを素早く読み込むことで、分析の遅延やデータの欠落を最小限に抑えられます。
ELTはデータのスケーラビリティに優れており、データを高速に読み込み、DWHやデータベースの処理能力を活用して柔軟に変換・分析を行えます。また、既存のデータアクセス手法やツールとの統合も容易であるため、大量のデータに基づいた分析が可能です。
まとめ
今回はETL・ELTの概要や長所、長所を活かした導入ケースについて紹介しました。
ETLとELTは、それぞれの時代に合わせたデータ統合の手法として発展してきました。ETLはDWHの成長に対応し、ELTはビッグデータとクラウドコンピューティングの台頭に対応するために採用されています。
ETLはシステム負荷を軽減でき、高品質なデータ処理を行いたい場合に向いています。一方、ELTはデータ処理のコストを抑えたい場合や、既存のデータベースやデータストレージソリューションを活用したい場合に最適です。
収集したデータを効率よく活用するためにも、ETLやELTの違いを把握した上で使いこなしましょう。
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