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フリーランス法とは?概要と条文について詳しく解説

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はじめに

近年、働き方の多様化に伴い、フリーランスとして活動する方々が増えていますが、その取引や働く環境を守るための法律が制定されました。

これが「フリーランス法」です。

本記事では、フリーランス法の目的や具体的な条文の内容をわかりやすく解説します。

<この記事を読むメリット>

  • フリーランス法の全体像が理解できる
  • 重要な条文の具体的な内容がわかる
  • フリーランスとして安心して働くための知識を得られる

今後、フリーランスとして活躍するにはフリーランス法の理解が必須です。

ぜひ、本記事で重要な知識を身につけましょう!

フリーランス法とは?

「フリーランス法」とは、2024年11月1日から施行される「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス保護法)のことです。

フリーランスと事業者間の取引を適正化し、フリーランスの就業環境を保護することを目的としています。

なお、施行日や制定された背景については以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:フリーランス法の施行日はいつ?法律ができた背景や概要を詳しく解説

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律

フリーランス法とは、フリーランスとして働く人と、彼らに仕事を依頼する企業との取引を適正にするための法律でもあります。

フリーランス法のポイントは以下の通りです。

1.取引条件の明示

フリーランスが仕事を受ける際、依頼する企業は「何の仕事をどのようにやるのか」「報酬はいくらなのか」「いつまでに支払うのか」を明確に書面で伝える必要があります。

2.報酬の支払い

企業はフリーランスに対して、納品が完了してから60日以内に報酬を支払わなければならないと定められています。

3.不当な行為の禁止

企業がフリーランスに対して報酬を後から減らしたり、納品されたものを受け取らなかったりすることが禁止されています。

4.育児や介護との両立

育児や介護をしながら働くフリーランスにも配慮が求められており、仕事の時間を調整するなどのサポートが行われます。

5.ハラスメント対策

フリーランスが仕事をする中でハラスメントを受けないようにするための体制整備が義務化されています。

近年、働き方改革やリモートワーク・テレワークの普及により、個人で仕事を請け負うフリーランスが増加しました。

しかし、フリーランスは雇用契約ではなく業務委託契約に基づいて働くため、労働基準法などの労働者保護の法律が適用されず、企業側からの不当な扱いや報酬の遅延、契約解除などのトラブルが多発していました。

こういった背景から、フリーランス法は2023年4月28日に成立し、2024年11月1日から正式に施行されます。

フリーランス法の趣旨

フリーランス法の趣旨は、フリーランスと企業との間で公正な取引を促進し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することです。

1.取引の適正化

フリーランスは通常、労働者としての保護を受けられず、契約条件が不明瞭であったり、報酬の支払いが遅れることが問題視されていました。

フリーランス法では、企業が業務内容や報酬、支払期日を明確に書面で提示する義務を課すことで、取引条件を透明化し、フリーランスが不利な立場に立たされないようにしています。

2.就業環境の整備

フリーランス法では、フリーランスがより安心して仕事に取り組めるよう、ハラスメント防止の体制を整備することが義務付けられています。

これにより、フリーランスが自分のライフスタイルに合わせて働きやすい環境を作れるようになっています。

従来のフリーランスは法的に曖昧な部分が多く、法律上で少し弱い立場にありましたが、フリーランス法施行後は状況が改善されることになるでしょう。

フリーランス法の概要と条文

法律に詳しくない人にとって、フリーランス法の条文はかなり理解しづらいです。

そこでここでは、フリーランス法の条文で重要な部分を噛み砕いて解説します。

対象となる当事者・取引の定義についての条文

フリーランス法の第2条では、法律が適用される「フリーランス」や「取引の対象」を定義しています。

以下で、第2条を詳しく見ていきましょう。

第2条第1項

“「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次のいずれかに該当するものをいう。

  • 個人であって、従業員を使用しないもの
  • 法人であって、代表者以外に他の役員がなく、従業員を使用しないもの”

ここでは、「特定受託事業者」とは誰のことかを定義しています。

簡単にいうと、フリーランスや小規模な会社が該当します。具体的には、以下のようなケースです。

  • 個人で、従業員を雇わずに仕事をしている人(典型的なフリーランス)
  • 法人(会社)だけれども代表者が1人しかいなくて、従業員がいない会社(例えば、一人社長の会社)

第2条第2項

“「特定受託業務従事者」とは、前項の特定受託事業者に該当する個人および法人の代表者をいう。”

この項目は「特定受託業務従事者」が誰なのかを説明しています。

簡単にいえば、特定受託事業者(前項で定義されたフリーランスや小規模な会社)の本人または、会社であればその代表者のことです。

個人事業主なら本人、法人ならその会社の社長が該当します。

第2条第3項

“「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。

  • 事業者が、その事業のために他の事業者に物品の製造や情報成果物の作成を委託すること
  • 事業者が、その事業のために他の事業者に役務(サービス)の提供を委託すること”

ここでは「業務委託」とはどういうものかを説明しています。具体的には、次のような仕事の依頼が該当します。

  • 物品の製造や情報の作成を他の事業者にお願いすること(例えば、プログラムの開発やウェブサイトのデザインをフリーランスに頼む場合)
  • サービスの提供を他の事業者に頼むこと(例えば、清掃やコンサルティングを依頼するケース)

第2条第6項

“「特定業務委託事業者」とは、業務委託事業者であって、次のいずれかに該当するものをいう。

  • 個人であって、従業員を使用するもの
  • 法人であって、2人以上の役員があり、または従業員を使用するもの”

ここでは、「特定業務委託事業者」が誰かを説明しています。

簡単にいえば、フリーランスに仕事を依頼する企業側のことです。具体的には、以下のような事業者が該当します。

  • 個人事業主で従業員を雇っている人
  • 法人で、複数の役員がいるか、従業員を雇っている会社

このように第2条では、法律の適用対象となる当事者や取引が明確に定義されています。

特定受託事業者に係る取引の適正化についての条文

第3条から第5条は、フリーランス(特定受託事業者)に関する取引の適正化についての条文です。

以下で詳しく見ていきましょう。

第3条

第3条では、フリーランス(特定受託事業者)に対して、業務を依頼する企業や事業者(特定業務委託事業者)が、仕事の内容や報酬、支払期日などの重要な取引条件を明確に示すことを義務付けています。

これは、口頭での約束だけではなく、書面や電子的な手段で提示する必要があるということです。

つまり、業務内容や報酬がはっきりと示され、後からトラブルにならないようにするための規定です。

第4条

第4条では、フリーランスが業務を完了して納品した場合、企業側はその納品を受け取ってから60日以内に報酬を支払わなければならないと規定しています。

これにより、報酬の未払いを防ぎ、フリーランスの収入安定を図ります。

また、他の事業者に業務を再委託した場合でも、元の取引条件に基づいて報酬が支払われなければなりません。

第5条

第5条では、フリーランスに対する不当な取扱いを防ぐための規定が示されています。

企業がフリーランスに依頼した仕事について、以下の行為が禁止されています。

  • フリーランスの納品物を理由なく受け取らないこと
  • 一方的に報酬を減額すること
  • 納品物を受け取った後に、無理やり返品させること

これにより、フリーランスが不当な扱いを受けることなく、安心して業務に取り組めるようにしています。

特定受託業務従事者の就業環境の整備についての条文

第12条、第13条、第14条、第16条は、特定受託業務従事者の就業環境の整備に関連する内容です。

特定受託業務従事者が安定して働けるよう、募集情報の表示、妊娠や介護に対する配慮、不当な言動への対応、契約解除の予告など、適切な環境を整備するための具体的な規定を設けています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第12条

第12条は、業務委託する事業者(特定業務委託事業者)が、特定受託事業者を募集する際、広告やウェブサイトで公開する情報は、正確で、虚偽や誤解を招く内容ではいけないという規定です。

例えば、フリーランス向けの求人情報や仕事の募集を行う場合、その内容を誇張せず、実際の業務や条件を正確に伝える必要があるとしています。

誤った情報を出してはいけない、という基本的なルールです。

第13条

第13条は、妊娠や育児、介護などの理由で、フリーランスとして働いている人が仕事と両立できるように、特定業務委託事業者は配慮する義務があるという規定です。

例えば、フリーランスの仕事をしている人が出産や育児、または親の介護をしなければならない状況になった場合、特定業務委託事業者はその人が無理なく働けるように業務の進行やスケジュールの調整など、必要な配慮をしなければならないという内容です。

第14条

第14条は、特定業務委託事業者はフリーランスに対して、セクハラや妊娠・出産に関する不当な言動などをしてはいけないという規定です。

例えば、性的な嫌がらせや妊娠・出産に対する不適切な発言、取引の優位性を利用してフリーランスに不当に圧力をかけるといった行為を禁止しています。

また、これらの問題に対してフリーランスが相談した場合に、きちんと対応する体制を整える必要があるとしています。

第16条

第16条は、特定業務委託事業者がフリーランスとの契約を終了させたい場合、契約を解除する少なくとも30日前には通知しなければならないという規定です。

これは、契約解除が突然行われることを防ぐための条文です。

例えば、フリーランスとして働いている人が契約を更新されないことを知るのがギリギリでは、次の仕事を見つける時間がなく困る可能性があります。

そこで、この条文では契約終了を少なくとも1か月前には伝える義務があるとしています。

違反した場合等の対応についての条文

8条からのいくつかの条文は、フリーランス法における違反行為が発生した場合の対応措置や罰則に関するものです。

業務委託事業者や特定業務委託事業者が法令に違反した際に、公正取引委員会や厚生労働大臣が取ることができる勧告や命令、さらに従わなかった場合の罰則について詳細に定めています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第8条・第9条・第11条・第18~第20条・第22条

第8条・第9条・第11条・第18〜第20条・第22条は主に、フリーランス法に違反した際の対応や権限に関する規定を示したものです。

第8条と第9条では、フリーランス法に違反した場合、公正取引委員会や厚生労働大臣が行う「勧告」や「命令」について定めています。

勧告は違反の是正を促すためのもので、従わなければ命令が下され、その場合には命令内容が公表されることもあります。

第11条は、違反の調査において、関係者に「報告を求める権限」や「現場への立ち入り調査」について定めています。

これにより、業務委託事業者や特定受託事業者の活動が適切に行われているかどうかを監督します。

第18条から第20条は、厚生労働大臣が行う「勧告」や「命令」に関する詳細が記されています。

第18条では違反が確認された場合に必要な措置を勧告し、第19条では命令が行われる場合、その内容が公表されることができるとしています。

また、第20条は違反に対する報告や検査の詳細事項について述べています。

第22条は、公正取引委員会や厚生労働大臣が業務委託事業者に対し「指導および助言」ができると定め、違反防止や取引の適正化を目的としています。

つまり、これらの条文はフリーランス法の違反があった際に公正取引委員会や厚生労働大臣が適切に対応し、違反を是正するための具体的なプロセスや制裁手段を示すものです。

第24条・第25条

第24条・第25条は、違反に対する罰則規定についてです。

第24条では、命令に従わなかった場合や虚偽の報告をした場合に、「50万円以下の罰金」が科されると規定されています。

第25条は、法人の代表者や従業員が違反行為を行った場合、その法人に対しても「罰則が適用される」ことを定めています。

つまり、罰則が適用される際は個人だけでなく、法人としての責任も追及されることがポイントです。

一定期間以上の業務委託契約についての条文

第5・13・16条の条文は、長期間の業務委託における公平性や配慮、契約解除時の手続きを規定するものです。

以下で詳しく見ていきましょう。

第5条

第5条は業務委託を行う企業(特定業務委託事業者)が、フリーランス(特定受託事業者)との契約時に不公平な取引や不当な要求をしてはならないと定めています。

具体的には、次のような行為を禁止しています。

  • 正当な理由がないのに、フリーランスの納品物を受け取らない。
  • フリーランスが適切に業務を遂行したのに、報酬を減額する。
  • 納品後に無理に製品を返却させる。
  • 市場価格より極端に低い報酬を設定する。
  • 不要な物品やサービスを強制的に購入させる。

例えば、ウェブデザイナーがクライアントから依頼を受けてホームページを制作し、納品した場合に、特に問題がなかったにもかかわらず、クライアントが「気に入らないからやり直し」と言って何度も修正を要求することがあります。

このような場合、フリーランス法の第5条が適用され、不当な再修正や報酬の減額は認められないことになります。

第13条するなどの配慮をする

第13条では、フリーランスが妊娠・出産・育児や介護などの事情を抱えた場合、業務委託側の企業がフリーランスの個別の状況に配慮する義務について定めています。

具体的には、こうしたライフイベントがあっても、仕事と両立できるように業務の進め方や条件を調整しなければなりません。

例えば、女性フリーランスのプログラマーが出産を控えている場合、クライアントが納期を多少延長するなどの配慮をする必要があります。

また、育児中のフリーランスに対しては業務時間をフレキシブルに設定したり、在宅で業務を遂行できるようにする配慮が求められます。

第16条

第16条は、継続的な業務委託契約の解除や更新しない場合の事前予告についての規定です。

企業側がフリーランスに対して契約を解除する場合、少なくとも30日前には予告しなければなりません。

また、フリーランスが契約解除の理由を求めた場合は、企業側はその理由を明示する義務があります。

例えば、ライターとして長期間仕事をしていたフリーランスが、クライアントから突然「来月から契約を更新しません」と言われたとしましょう。

この場合、クライアントは少なくとも30日前には通知する必要があり、理由を求められた場合には「コスト削減」や「業務の方向転換」といった明確な理由を説明しなければなりません。

取引条件の明示義務についての条文

第3条では、業務委託事業者が特定受託事業者に業務を委託した際、取引の内容や報酬の金額、支払い期日などの詳細を明確に示すことを義務づけています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第3条

第3条では、業務委託事業者が特定受託事業者に業務を委託する際に、取引条件を明確に示す義務について説明されています。

具体的には、業務内容、報酬の金額、支払期日などを文書や電子的な方法で提示しなければならない、ということです。

例えば、ある企業がフリーランスのプログラマーにウェブサイト制作を依頼する場合、その企業は以下のような情報を契約書やメールで明示する必要があります。

  • 業務内容:ウェブサイトのトップページと商品紹介ページの制作。
  • 報酬の金額:50万円(税込み)。
  • 支払期日:サイト完成後30日以内に銀行振込で支払う。

こうした情報を、仕事を始める前に必ず伝えなければならないというルールです。

期日における報酬支払義務についての条文

第4条は「報酬支払義務」についての条文です。

具体的には、業務委託を受けた特定受託事業者に対して、特定業務委託事業者が報酬を支払う期限やその期日に関する規定を定めています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第4条

第4条は、フリーランスが業務を完了した後、報酬がいつ支払われるかを明確に定める条文であり、フリーランスが報酬を適切なタイミングで受け取れるようにするための保護措置です。

第4条はかなり長いので、以下にポイントをまとめました。

1.支払期日

特定業務委託事業者(発注側)は、フリーランスが業務を完了し、その成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払う必要がある。

2.再委託の場合の支払期日

元の発注者(クライアント)が業務を別のフリーランスに再委託した場合でも、元の委託者が支払った日から30日以内に、フリーランスに報酬を支払う義務がある。

3.例外と猶予期間

万が一、フリーランス側に落ち度があって報酬が支払えなかった場合には、問題が解決した日から再び60日以内に支払うという猶予も認められている。

この規定により、フリーランスの報酬未払いがなくなり、安定した取引環境が整えられます。

特定業務委託事業者の遵守事項についての条文

第5条は、特定業務委託事業者が特定受託事業者に対して業務を委託する際に、行ってはならない行為や不適切な取引に関する制限を定めるものです。

以下で詳しく見ていきましょう。

第5条

第5条の内容は、特定受託事業者(フリーランスや小規模な事業者など)に対する不当な取引行為を防ぐための規定が設けられています。

ポイントは以下の通りです。

1.受領拒否の禁止

特定受託事業者が提供した業務内容に問題がなければ、業務の受領を拒否してはならないという規定です。

例えば、フリーランスが納品した仕事を、特定の理由もなく「受け取りません」と拒否することはできません。

2.報酬の不正な減額禁止

特定受託事業者に責任がない場合、報酬を勝手に減額することは許されません。

例えば、発注者が一方的に「この部分は気に入らないから支払額を減らす」といった行為がこれに該当します。

3.不当な返品の禁止

特定受託事業者が納品した成果物を、一度受け取った後に不当に返却することも禁止されています。

4.著しく低い報酬の設定禁止

一般的な水準よりも著しく低い報酬を設定することも禁止されています。

5.強制的な購入や役務利用の禁止

自分が指定した商品やサービスを強制的に購入させたり利用させたりすることも禁じられています。

例えば、「このソフトを使って作業しないと契約できない」といった強制は不当です。

つまり、第5条は特定業務委託事業者がフリーランスや小規模事業者に対して不当な行為を行わないようにし、取引の公正性を保つことを目的としたものです。

募集情報の的確表示義務についての条文

フリーランス法第12条では、「募集情報の的確な表示」に関する義務を規定しています。

これにより、特定業務委託事業者がフリーランスや個人事業主を募集する際、誤解を招いたり虚偽の情報を提供することが禁じられています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第12条

第12条では、募集広告や求人情報の提供において、事業者が「正確な情報を表示すること」が求められています。

例えば、フリーランスのプログラマーを募集する場合、仕事内容や報酬、勤務形態について明確に記載しなければなりません。

もし「高収入」や「自由な働き方」といった言葉で釣りながら、実際には報酬が低い、もしくは厳しい納期があるというような場合、これは虚偽の情報とみなされます。

<違反となるケースの例>

  • 広告では「報酬は月100万円以上可能」と書いてあるが、実際には業務内容や報酬条件が全く異なる
  • 「完全在宅勤務」と表示しているにもかかわらず、実際には月に数回出社が必要な場合も問題になる

このように、事業者は正確で誠実な情報を提供し、募集する側が正しく判断できるように配慮しなければなりません。

育児介護等と業務の両立に対する配慮義務についての条文

第13条は、育児や介護といった事情を抱える個人事業主(特定受託事業者)が、業務を続けやすくするために、業務委託事業者が必要な配慮を行う義務について規定しています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第13条

第13条では、特にフリーランスとして働く人が、家庭の事情によって仕事が困難になることがないように、業務委託事業者が柔軟な対応を取ることを求めています。

ポイントは以下の通りです。

1.継続的業務委託の場合

フリーランスが長期間の契約に基づいて業務を行う際、育児や介護と両立できるように配慮する義務があります。

2.継続的業務委託以外の場合

もしフリーランスが短期間の契約や単発の業務に従事している場合でも、可能な範囲で業務委託事業者はそのフリーランスの状況に応じた配慮をすることが奨励されています。

これは義務ではありませんが、できるだけの配慮が求められています。

例えば、フリーランスとして働くAさんが子育てをしながらリモートでデザイン業務を受注しているとしましょう。

Aさんは子供の学校行事や体調不良で突発的に仕事ができなくなることがあります。

その際、業務委託事業者であるB社は、Aさんの状況に応じて納期を延ばしたり、作業内容を調整するなどの柔軟な対応をしなければなりません。

これは、Aさんが仕事を続けやすくするための「配慮義務」にあたります。

このように、第13条はフリーランスが育児や介護と仕事を両立できるように、依頼者側に対して適切なサポートや柔軟性を提供することを求める規定です。

ハラスメント対策に係る体制整備義務についての条文

第14条は、特定業務委託事業者に対してハラスメント対策に関する体制整備義務を定めた条文です。

具体的には、性的ハラスメントや妊娠・出産に関連するハラスメント、取引上の優越的な立場を背景とした不適切な言動から特定受託業務従事者を守るため、特定業務委託事業者が相談体制を整備し、適切な対応を行うことを義務付けています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第14条

第14条は、特定受託業務従事者がハラスメントを受けることなく働く環境を整備するためのものです。

ポイントは以下の通りです。

1.性的ハラスメント防止の義務

特定業務委託事業者は、フリーランスの方々が業務を遂行する際に、性的な言動で就業環境が悪化しないように配慮しなければならない

2.妊娠・出産に関するハラスメント防止

妊娠や出産を理由にフリーランスの仕事が制約されたり、差別的な扱いを受けることがないようにする必要がある

3.取引上の優越的な関係を利用したハラスメント防止

業務委託者がフリーランスに対して、取引上の立場を利用して不適切な圧力をかけることも禁止行為です

つまり第14条はフリーランスが働きやすい環境を整備するために、特定業務委託事業者に対してハラスメント防止体制の整備を義務付けるものです。

中途解除等の事前予告・理由開示義務についての条文

第16条は「中途解除等の事前予告および理由開示義務」に関する条文です。

特定業務委託事業者が特定受託事業者との継続的業務委託契約を解除する場合に、少なくとも30日前に解除の予告をしなければならない義務と、特定受託事業者が契約解除の理由を求めた場合に、その理由を遅滞なく開示しなければならない義務が規定されています。

ただし、災害などのやむを得ない事由がある場合にはこの予告義務が免除されることがあるなど、例外も設けられています。

以下で詳しく見ていきましょう。

第16条

第16条では、業務委託契約の中途解除や契約更新をしない場合の事前予告義務について規定しています。

ポイントは以下の通りです。

  • 契約の中途解除や契約更新の中止をしようとする場合、特定業務委託事業者(業務を発注する側)は、その相手である特定受託事業者に対して少なくとも30日前には、その旨を事前に予告しなければならない
  • もし特定受託事業者が解除の理由を求めた場合、特定業務委託事業者はその理由を遅滞なく開示する必要がある
  • ただし、災害やその他やむを得ない事情がある場合、この事前予告義務が免除されることがある

例えば、フリーランスのプログラマーが、ある企業から長期的にウェブサイトの保守業務を委託されているとします。

その後突然、企業が「来月で契約を終了する」と通告したとしましょう。

この場合、企業は少なくとも30日前にフリーランスのプログラマーに「契約を終了する」という予告を行う義務があります。

さらに、もしプログラマーが「なぜ契約を終了するのか?」と質問した場合、企業側はその理由を速やかに説明しなければなりません。

ただし、大規模な地震などの災害が発生し、企業が事業を継続できないような場合はこの限りではありません。

違反行為への対応等についての条文

最後に、違反行為に対する罰則をまとめた条文を見ていきましょう。

第6条~第9条

第6条から第9条までの条文は、違反行為に対する対応のプロセスを定めたものです。

主に、業務委託契約において不当な取引が行われた場合の苦情の申立てから、是正命令に至るまでの手順を示しています。

各条文のポイントは以下の通りです。

第6条:違反の申し出

特定受託事業者(フリーランスなど)は、公正取引委員会や中小企業庁長官に対し、違反行為を申し出ることができ、申し出があれば必要な調査を行い、適切な措置がとられる。

第7条:中小企業庁長官の調査請求

中小企業庁長官が、業務委託事業者の違反を調査し、公正取引委員会に措置を求めることができる。

第8条:勧告

公正取引委員会は、違反を確認した業務委託事業者に対し、違反行為の是正を勧告できる。

また、業務委託事業者は適切な措置を講じる必要がある。

第9条:命令

業務委託事業者が勧告に従わなかった場合、公正取引委員会は正式な命令を発することができる。この命令には法的拘束力があり、従わない場合は罰則が科される可能性がある。

第11条

第11条は、「報告及び検査」についての条文です。

中小企業庁長官や公正取引委員会が業務委託に関する調査や検査を行う権限を持っていることを規定しています。

ポイントは次の通りです。

1.報告要求

中小企業庁長官や公正取引委員会は、業務委託事業者や特定受託事業者に対して、必要に応じて業務に関する報告を求めることができる。

2.立入検査

必要に応じて委員会や庁の職員が事務所や事業場に立ち入って、帳簿や書類などを検査することができる

3.身分証明書の携帯

立入検査を行う職員は、必ず身分証明書を携帯し、検査時に関係者に提示しなければならない

4.犯罪捜査ではない

立入検査の権限はあくまで業務委託に関するものであり、犯罪捜査のために認められたものではない

例えば、フリーランスが業務委託契約で不当な扱いを受けた場合、その情報を公正取引委員会が受け取った際、委員会は業務委託事業者に対して取引の詳細を報告させたり、事務所に立ち入って帳簿などを確認することができます。

もし違法な取引が確認された場合、適切な措置を講じるための証拠を集めることが目的です。

第17条~第20条

第17条から第20条は、違反行為に対する申出、勧告、命令について規定しています。

特定受託事業者が不適切な扱いを受けた場合にどのように対処できるのかを説明しており、フリーランスの立場を守るための重要なルールです。

各条文のポイントは以下の通りです。

第17条:申出等

  • 特定受託事業者は、不適切な取引や対応を受けた場合、厚生労働大臣に申出が可能。
  • 申出があった場合、大臣は調査を行い、必要な措置を講じる。
  • 申出を理由に、特定受託事業者が不利益な扱いを受けることは禁止。

第18条:勧告

  • 厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が違反していると認めた場合、是正勧告を行う。
  • 勧告は、違反行為の是正を求める警告の役割を果たす。

第19条:命令等

  • 勧告に従わない場合、厚生労働大臣は命令を出すことができる。
  • 命令を無視した場合、その旨が公表され、企業に対する信用リスクが発生する。

第20条: 報告及び検査

  • 厚生労働大臣は、法律の施行のため、特定業務委託事業者や特定受託事業者に報告を求めたり、立入検査を行う権限を持つ。
  • 取引の適正性を確保するため、帳簿や契約書の確認が可能。

つまり、問題が発生した場合、まず申出を行い、それでも解決しない場合は勧告や命令によって是正が求められるという流れです。

第22条

第22条は、公正取引委員会や中小企業庁長官、厚生労働大臣は、業務委託に関して法律の施行が必要だと認める場合、業務委託事業者に対して指導や助言ができるという内容です。

指導や助言を行うことで、事業者が法令に準拠し、適切な取引が行われるよう促すことが目的です。

ただし、これに該当する指導や助言というものは、勧告や命令とは違って強制力を伴わず、事業者に対するサポート的な性質を持っています。

例えば、特定受託事業者(フリーランス)が報酬を正しく受け取れていないと感じた場合、厚生労働大臣は業務委託事業者に対して「報酬の支払いを適切に行うように」という助言を行える、ということです。

第24条~第26条

第24条〜第26条は、罰則に関する規定について述べています。

各条文のポイントは以下の通りです。

第24条:罰金について

  • 50万円以下の罰金が科される。
  • 第9条や第19条に基づく命令に違反した場合や、虚偽の報告を行った場合が対象。
  • 検査を拒否、妨害、または回避した場合も対象。

第25条:法人の責任

  • 代理人や従業員が違反行為を行った場合、その行為者と共に法人も処罰される。
  • 組織的な責任を追及するための条文。

第26条:過料について

  • 20万円以下の過料が科される。
  • 第20条に基づき、報告を怠ったり、虚偽の報告を行った場合が対象。

つまり、第24条〜第26条は、事業者がフリーランスとの取引において法を守るよう、厳しい罰則を設けて抑止するためのものです。

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まとめ

本記事では、フリーランス法の目的や条文について詳しく解説しました。

フリーランス法の導入により、フリーランスとして働く人々は法的な保護を受けやすくなり、安心して仕事に専念できる環境が整えられています。

今後はフリーランス法がより広く認知され、フリーランスの業務環境がさらに改善されていくことが期待されます。

エンジニアスタイルマガジン」では、今後もこういったフリーランスエンジニアにとって役立つ最新情報を随時お届けいたします。

それでは、また別の記事でお会いしましょう。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

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