業務委託を始める前にしておきたい!優位的地位の濫用とは
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目次
はじめに
業務委託契約を結ぶ際にぜひ知っておきたい「優越的地位の濫用」という概念をご存知でしょうか?
フリーランスや小規模の事業主が大手企業と取引する際、相手側の立場を利用した不当な要求や一方的な条件変更が発生することがあります。
こうした行為は「優越的地位の濫用」として法的に規制されており、具体例やペナルティについて理解を深めることが重要です。
本記事では、優越的地位の濫用がどのような行為を指すのか、具体的な例とその法的な定義、さらに不公正な取引に対するペナルティについて詳しく解説します。
<この記事を読むメリット>
- 業務委託契約で発生しやすいトラブルの予防策がわかる
- 優越的地位の濫用行為を見極めるポイントを理解できる
- 不公正な取引があった場合の相談先や対応方法を学べる
本記事を通して、フリーランスや個人事業主として安心して業務をこなすための知識を身につけましょう!
優越的地位の濫用とは
基本的に、フリーランスや個人事業主は、クライアントから業務委託された仕事を請け負って生計を立てています。
そのため、どうしてもクライアントの方が上の立場になってしまい、無理難題を突きつけられることも少なくありません。
しかし、2024年11月から「フリーランス保護法」が施行されることもあり、このような「優越的地位の濫用」は違法行為に該当する可能性が高まります。
とはいえ、「優越的地位の濫用」という字面を見ると、少し難しく感じる方も多いかもしれません。
そこでここでは、「独占禁止法」によって定められる「優越的地位の濫用」についてわかりやすく解説し、具体的な事例をいくつか見ていきましょう。
地位を利用して相手側に不当に不利益を与える行為
「優越的地位の濫用」とは、発注者が自らの経済的優位性を利用し、相手に不当に不利な条件を強いる行為です。
独占禁止法では、これに該当する行為は全て禁止されています。
特に業務委託契約においては、クライアントとフリーランスの立場に差が生まれやすく、発注者が一方的に取引条件を変更したり、負担を押し付けたりすることが懸念されます。
この「優越的地位の濫用」によって、フリーランスが受ける不利益は様々です。
契約内容にない無償の追加作業を強要されたり、報酬を一方的に削減されたりといった行為が典型的な例ですが、他にも以下のような行為が優越的地位の濫用に該当します。
例1.無償での追加業務の強要
1つ目の具体例として、「無償での追加業務の強要」が挙げられます。
これは、クライアントが契約範囲を超える業務を依頼し、その対価を支払わないケースです。
例えば、業務完了後に「ついでだから」として追加の修正や変更を求められ、報酬なしでの対応を強いられることがあります。
このような行為は、フリーランスが立場的に断りにくい状況を利用した不当な要求とされ、優越的地位の濫用に該当します。
例2.一方的な報酬削減
2つ目の具体例は「一方的な報酬削減」です。
契約時に合意した報酬額を、発注者の都合で一方的に減額されるケースがこれに当たります。
例えば、発注後に「予算が減った」「クライアントの希望が変わった」などの理由で報酬を減らされることがあり、これはフリーランスにとって大きな経済的負担となります。
このような行為も、優越的地位の濫用と判断される可能性が高いです。
例3.過剰な支払い遅延
3つ目の具体例は「過剰な支払い遅延」です。
これは、フリーランスが業務を完了し請求書を発行した後に、クライアントが支払いを正当な理由なく引き延ばす行為です。
支払いが遅れることでフリーランスのキャッシュフローが悪化し、事業継続に影響が出ることがあります。
発注者が優位な立場を利用して支払いを意図的に遅らせる場合、これは優越的地位の濫用と見なされる可能性が高く、独占禁止法によって規制される対象になります。
このように、フリーランスが業務委託契約で不利益を被らないためには、優越的地位の濫用を理解し、適切に対処できる知識が必要です。
優越的地位の濫用の法的な定義
「優越的地位の濫用」は、独占禁止法第2条第9項第5号に基づき、正式に定義されています。
ここからは、優越的地位の濫用の法的な定義をなるべくわかりやすく、噛み砕いて解説します。
劣位な側が、優位な側に対してどのくらい取引を依存しているか
「優越的地位の濫用」が成立するかを判断する要素の一つが、「劣位な側の依存度」です。
フリーランスや小規模事業者は、特定のクライアントや取引先に対して大きく依存することが多く、依存度が高ければ高いほど、取引先の言動がフリーランスの経済活動に大きく影響を及ぼします。
例えば、主要な収入源がその取引先との契約である場合、依存度が非常に高いと判断されやすく、相手が不当な要求をしても拒否しにくい状況に置かれることが多いです。
このような状況下で取引先が一方的な条件変更や追加業務を無償で要求すると、「優越的地位の濫用」に該当する可能性が高まります。
優位な側が市場においてどのくらいの地位にあるか
「優越的地位の濫用」が問題となるかどうかの判断材料には、取引先が市場でどれほどの影響力を持っているかも重要な指標です。
例えば、大手企業や業界のリーダー的存在が発注者である場合、その発注者は多くのフリーランスや小規模事業者にとって不可欠な取引先となることが多く、市場での地位がフリーランスの経済活動に大きく影響します。
このため、影響力の大きい取引先からの不当な要求は拒否が難しく、不利益を受けやすい環境に置かれます。
したがって、相手が市場でどれほどの地位や影響力を持つかは、「優越的地位の濫用」と判断される重要な要素の一つです。
劣位な側が取引先変更をされてしまう可能性がどれくらいあるか
「優越的地位の濫用」が成立するかの判断には、劣位な側、つまりフリーランスや小規模事業者がどの程度、取引先の変更を迫られるリスクがあるかも考慮されます。
例えば、フリーランスが他の取引先を容易に見つけられない状況では、優位な側の要求に応じざるを得ないため、不当な条件変更や負担の押し付けが生じやすくなります。
もし他に取引先がなく、特定のクライアントに依存している状況で不利益な要求をされれば、それが「優越的地位の濫用」と見なされる可能性は高いです。
その他、劣位な側が優位な側と取引することの必要性を示す具体的事実があるか
「優越的地位の濫用」が成立するかの判断には、フリーランスが優位な側との取引を続ける必要があるかどうかという点も重要です。
具体例は以下の通りです。
1.知名度向上のため
取引先が大手企業で、その実績を得ることで他の案件を獲得しやすくなる場合
2.スキルアップの機会
特定の専門分野のスキルを磨ける案件が優位な側から提供されている場合
3.安定収入の確保
取引先が主要な収入源となっており、他の安定した収入源がない場合
4.事業拡大の可能性
その取引が将来の事業拡大につながる可能性がある場合
5.業界ネットワークの構築
取引先との関係を通じて業界内の人脈を広げる機会が得られる場合
このように、発注者との取引がビジネスやキャリアのためにどうしても必要である状況も、優越的地位の濫用の可能性を高める要因となります。
優越的地位の濫用として規制されている行為
独占禁止法における「優越的地位の濫用」では、ビジネスにおけるさまざまなケースを禁止行為に指定しています。
ここからは、優越的地位の濫用に該当する具体的な禁止行為について見ていきましょう。
購入・利用強制
「購入・利用強制」とは、発注者が取引相手に対し、契約範囲外の商品やサービスの購入・利用を強制する行為です。
この行為は相手側の資金やリソースを無駄にさせるだけでなく、取引先への依存度を利用して通常では受け入れがたい要求を押し付けるため、不公平な取引条件として独占禁止法で禁止されています。
具体例は以下の通りです。
- クライアントが受託者に対し、無関係な自社製品の購入を条件として契約を継続する
- 発注者が自社のシステムやサブスクリプションサービスの利用をフリーランスに強制する
- 契約内容に関係のない商品やサービスの利用・購入を取引継続の条件として求める
協賛金などの負担の要請
「協賛金などの負担の要請」とは、発注者がフリーランスに対し、契約内容とは無関係の費用負担を強いる行為です。
これは、フリーランスの利益を損ねる不当な要求として独占禁止法により禁止されています。
特に、発注者の売上促進や広告費用の一部を受託者に負担させることが問題視されています。
具体例は以下の通りです。
- 発注者が会社イベントのための協賛金をフリーランスに負担させる
- 新製品のプロモーション費用を取引継続を条件に一方的に求める
- クライアントがマーケティングキャンペーン費用の一部を受託者に請求する
従業員などの派遣の要請
「従業員などの派遣の要請」とは、発注者がフリーランスや小規模事業者に対し、契約内容に含まれていない業務を無償で行うよう求める行為です。
例えば、新店舗のオープニングやイベントに従業員を派遣させる要求などが典型的な例です。
このような要求は、不当な労力やコスト負担を強いるものであるため、優越的地位の濫用として規制されています。
具体例は以下の通りです。
- クライアントが新店舗オープンのため、契約にない業務を無償でフリーランスに要求する
- 発注者がイベントやプロモーションでの人手不足を理由に追加の作業を強制する
- 大規模な店舗で棚卸しのために人員を提供するよう一方的に求める
そのほかの経済的利益の提供の要請
「その他の経済的利益の提供の要請」とは、発注者がフリーランスに対し、契約外の金銭的・物質的な利益の提供を要求する行為です。
例えば、発注者が自社の特定事業や新規事業への投資や利益供与をフリーランスに要求するなど、契約範囲を超えた負担を強いる行為がこれに該当します。
これは、フリーランスのリソースや利益に不当に影響を与えるものとみなされ、独占禁止法で禁止されています。
具体例は以下の通りです。
- クライアントが社内イベントや福利厚生資金を受託者に負担させる
- 特定の販売促進プロジェクトにおいて、商品の試供品提供や割引を無償で行わせる
- 発注者がフリーランスに契約内容にない協力金や寄付金の提供を強要する
受領拒否
「受領拒否」とは、発注者がフリーランスや取引相手からの納品物を正当な理由なく受け取らない行為です。
この行為により、フリーランスが契約通りの業務を完了したにもかかわらず、報酬が支払われない状態に陥ることがあり、不当な取引条件のひとつとされています。
受領拒否は、取引の公平性を損ねるものとして独占禁止法の下で規制されています。
具体例は以下の通りです。
- 発注者が「在庫過剰」などの理由で、事前の取り決めを無視して納品物の受領を拒否する
- クライアントが市場の変動を理由に受領を断り、フリーランスに在庫や原価の負担を押し付ける
- プロジェクト終了後に発注者が成果物を受け取らずに取引を放置する
返品
「返品」とは、発注者がフリーランスや取引相手に対し、正当な理由がないにもかかわらず納品済みの商品や成果物を返却する行為です。
これにより、フリーランスが製作費用や手間をかけた成果物が無駄になり、経済的な損失を被ることになります。
このような不当な返品行為は、優越的地位の濫用とみなされ、独占禁止法で規制されています。
具体例は以下の通りです。
- 発注者が売上不振を理由に商品の一部または全部を返品し、代金支払いを拒否する
- クライアントが「品質基準に合わない」といった曖昧な理由で、完成した成果物を受け取らずに返品する
- 発注者が在庫調整のために発注品の返品を求め、在庫管理の負担を一方的にフリーランスに押し付ける
支払い遅延
「支払い遅延」とは、発注者がフリーランスや取引相手に対して、契約で定められた期日までに報酬を支払わない行為です。
支払い遅延は、フリーランスの経済的基盤を不当に脅かすものとされ、優越的地位の濫用行為として独占禁止法により規制されています。
具体例は以下の通りです。
- 発注者が「社内手続きの遅延」を理由に、支払期日を無視して報酬の支払いを先延ばしにする
- クライアントが財務上の理由から報酬支払いを一方的に延期し、フリーランスに負担をかける
- 契約で明記された支払日を過ぎても発注者が支払手続きをせずに放置する
減額
「減額」とは、発注者がフリーランスや取引相手に対し、契約で決められた報酬額を一方的に減らす行為です。
契約上の報酬が発注者の都合で無断に削減されることで、フリーランスが経済的な損失を被ることになります。
このような行為は取引の公平性を著しく損ない、優越的地位の濫用行為として規制対象となっています。
具体例は以下の通りです。
- 発注者が「予算削減」を理由に契約通りの報酬額を支払わずに減額する
- クライアントが「納品物の期待に達していない」と主張して、具体的な説明もなく報酬を減額する
- 発注者が契約後に相場変動を理由として報酬の引き下げを一方的に要求する
そのほかの相手に不利益となる条件など
「その他の相手に不利益となる条件」とは、取引上でフリーランスや小規模事業者に不利な契約条件を強制する行為を指します。
このような行為には、業務内容や報酬の変更、支払い条件の一方的な改訂などが含まれ、相手方に不必要な負担やリスクを押し付けることになります。
具体例は以下の通りです。
- 発注者が契約内容を拡大解釈し、追加作業を無償で提供するよう要求する
- 発注者が一方的に契約内容を改訂し、納品基準や評価基準を厳しくする
- 取引継続のために追加の責任やリスクをフリーランスに押し付ける
不公正な取引方法に対するペナルティは
優越的地位の濫用によって不公正な取引方法が行われた場合には、独占禁止法に基づき、いくつかの厳しいペナルティが課されることがあります。
ここでは代表的なペナルティである「排除措置命令」と「課徴金納付命令」について詳しく解説します。
排除措置命令
「排除措置命令」は、公正取引委員会が独占禁止法に違反する行為を見つけた際に、違反企業に対してその行為の即時停止を命じる措置です。
優越的地位の濫用によってフリーランスや取引相手に不当な不利益が生じた場合、公正な競争を保つため、発注者側に対して違反行為の中止や再発防止策の実施を求めます。
排除措置命令を受けた企業は、命令に従って改善策を実施しなければならず、これを無視した場合には追加の罰則が科されます。
排除措置命令に従わない場合は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金
排除措置命令は独占禁止法に基づく行政命令なので、命令に従わない場合には厳しい刑事罰が科されることになります。
企業が排除措置命令を無視して違反行為を継続した場合、経営者や関連する個人に対して2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、法人に対しても3億円以下の罰金が適用されることがあるため、排除措置命令は実質的に必ず従うべき命令です。
この厳格な罰則は、市場での公平な競争を守るために不可欠とされ、法的な実効性を高める役割も果たしています。
課徴金納付命令
「課徴金納付命令」は、違反行為によって得た利益を企業に返還させ、再発を防ぐための重要な行政処分です。
独占禁止法において課徴金は、企業が不公正な取引や優越的地位の濫用によって得た利益の吐き出しを目的としており、抑止力を持たせるために導入されています。
課徴金の金額は、対象行為の売上や購入額に基づき、行為の種類に応じた「課徴金算定率」をかけて算出されます。
例えば、優越的地位の濫用の場合、一般的に1%の算定率が適用されますが、不当な取引制限(カルテルなど)に関しては最大10%が適用されることも多いです。
なお、違反企業が自ら違反行為を申告し、調査に協力することで課徴金が減免される「課徴金減免制度」も設けられており、こうした制度によって企業に違反を申告しやすくし、抑止効果をさらに高めています。
優越的地位の濫用に関する主な相談先
フリーランスや個人事業主は、その性質上、優越的地位の濫用による被害に遭遇するリスクがかなり高いです。
では、実際に被害に遭ってしまった場合、どこに相談すればよいのでしょうか?
ここからは、優越的地位の濫用に関する主な相談先を2つご紹介します。
公正取引委員会
「公正取引委員会」は、独占禁止法に基づいて、企業間の公正な取引環境を守るための監督を行う機関です。
優越的地位の濫用など、不当な取引方法が疑われる場合には、公正取引委員会が相談窓口として適切な対応策を提供してくれます。
フリーランスや小規模な事業者であっても、優越的地位の濫用に該当する行為が認められる場合には、調査や指導を依頼することが可能です。
相談方法としては、電話やオンラインフォームを利用でき、状況に応じて個別の相談に応じてくれるため、具体的な証拠や状況を持って相談しましょう。
地域の商工会議所・商工会
地域の「商工会議所」や「商工会」も、フリーランスや個人事業主の取引における悩みやトラブルについて相談できる機関です。
特に、中小規模の事業者が多く加入しており、優越的地位の濫用に関する相談も受け付けています。
商工会議所・商工会では、法的なアドバイスに加えて、必要に応じて弁護士などの専門家への紹介や、行政機関との連携を図ることも可能です。
また、地域密着型の支援が多く提供されているため、地元での取引に関する相談がしやすい点もメリットです。
なお、普段から定期的に相談やセミナーを利用することで、トラブル発生時に迅速なサポートを受けやすくなります。
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登録は無料なので、この機会にぜひエンジニアスタイルのご利用を検討してみてください!
まとめ
本記事では、業務委託における「優越的地位の濫用」について、具体例と法的な定義、そして関連するペナルティや相談先について詳しく解説しました。
優越的地位の濫用とは、相手の立場を利用して不利益を強いる行為を指し、これはフリーランスや小規模事業者が契約を結ぶ際に特に注意が必要なポイントです。
今後、フリーランスや個人事業主の働き方がますます広がる中で、こうした取引上のトラブルに対する知識はますます重要になるでしょう。
本記事を通じて、業務委託契約における優越的地位の濫用について理解を深め、不当な要求を見極める力を身につけていただければ幸いです。
「エンジニアスタイルマガジン」では、今後もこういったフリーランスエンジニアにとって役立つ最新情報を随時お届けいたします。
それでは、また別の記事でお会いしましょう。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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