SIerに将来性はないと言われる5つの背景と実態とは
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目次
SIerとは?概要を改めて確認
情報技術の進化と社会のデジタル化が進む現代において、企業や組織が自身のビジネスを効率的に運営するためには、適切な情報システムの導入と運用が不可欠となっています。そのための専門的な知識と技術を持つ企業が求められ、そこで重要な役割を果たしているのが、システムインテグレータ(SIer)と呼ばれる企業群です。
SIerの概要
システムインテグレータ(SIer)とは、情報システムを企画・設計し、それを開発・運用・保守するまでを一手に担う企業のことを指します。具体的には、顧客が抱えるビジネス課題や改善点を洗い出し、それを解決するための情報システムを設計します。その上で、必要なハードウェアやソフトウェアを選定し、それらを組み合わせて最適なシステムを構築します。そして、システムが問題なく稼働するように運用・保守を行うことでビジネスの効率化や問題解決を支援します。
SESとSEと何が違う?
SE(システムエンジニア)は、顧客のニーズに基づいたシステムの設計や開発を行うエンジニアのことを指します。これに対してSES(システムエンジニアリングサービス)は、SEを顧客先に派遣し、その場でシステム開発等の業務を行うビジネスモデルを指します。SESは人材を提供する役割が強く、個々のエンジニアのスキルや経験が直接的にサービス価値となります。
SIerもまた、情報システムの企画・設計から開発、運用、保守を行いますが、これは企業全体としてシステム開発を行うことを指し、一貫したソリューションの提供に重きが置かれます。
SIerの4つの種類
各種類のSIerはその特性により、提供するサービスや取り組む案件、働くエンジニアのキャリアパスに違いがあります。ここでは、それぞれの特性と特徴を詳しく見ていきます。
メーカー系
メーカー系のSIerは、一般的に大手の電機メーカーやITメーカーが親会社となっている企業を指します。彼らは自社製品の販売を中心に活動し、その製品に関連したシステムの構築や保守を提供します。例えば、自社製のサーバーを活用したシステムの開発や、自社製品を活用したクラウドサービスの提供などがあります。そのため、エンジニアは親会社の製品について深い知識を持つ必要があります。
ユーザー系
ユーザー系のSIerは、特定のユーザー企業(例えば、大手の製造業や金融業など)が親会社となっています。これらの企業は、親会社やそのグループ会社の内部システムの開発・運用・保守を主に行います。エンジニアは親会社のビジネスに深く関わりながら、システム開発に取り組むため、ビジネス理解とシステム開発スキルの両方を高めることが求められます。
コンサル系
コンサル系のSIerは、企業の課題解決や業務改善を支援するための情報システムの企画・設計を行います。また、システムの導入に向けた支援や、ビジネスコンサルティングも行います。エンジニアは技術力だけでなく、コンサルティングスキルやコミュニケーション能力も必要とされます。
独立系
独立系のSIerは、特定のメーカーやユーザー企業に所属せず、自社の技術力により様々なシステム開発を行います。顧客の要望に応じたオーダーメイドのシステム開発が多く、高い技術力と幅広い知識が求められます。
外資系
外資系のSIerは、外国の大手IT企業が親会社で、グローバルスケールの案件を手がけることが多いです。そのため、国際的な視野を持つエンジニアや、多言語に対応できるエンジニアが求められます。また、親会社が持つグローバルなリソースを活用した大規模なプロジェクトに携わることもあります。
SIerの将来性はないと言われる5つの背景理由
近年、システムインテグレーター(SIer)が直面している課題と、それが生じる背景について深掘りします。業界全体の動向や、エンジニア個々のキャリアパスに影響を与えるこれらの要素について理解することで、将来性を見極める手がかりになるでしょう。
開発スキルを身につけにくい
SIerにおけるプロジェクトは多くがチームで行われ、各メンバーは特定の業務に集中します。これは大規模プロジェクトを効率よく進行させるための必要な構造ですが、その一方で、エンジニアがシステム開発の全体像を把握する機会が減少します。その結果、自分の担当部分だけを理解し、他の部分についての理解が深まらないという問題が生じることがあります。
年功序列制により若手が育たない・離職する
伝統的な年功序列制度は、若手エンジニアにとってはモチベーションを下げる可能性があります。特に、IT業界は技術の進歩が速く、新たな技術を習得しスキルをアップデートしていくことが求められます。しかし、年功序列制度の元では、スキルや成果よりも年数が評価の基準となるため、自身のスキルを活かせず、十分な報酬を得られないと感じるエンジニアが多く見られます。
重下請け構造による弊害
一つのプロジェクトに複数の企業が関与する重下請け構造は、コミュニケーションの混乱や情報のブロック化を生む可能性があります。プロジェクト全体を通じて情報が共有されず、各チームが最適な判断を下すことが難しくなることがあります。また、多くの下請け業者と収益を分けるため、各企業の収益率は低くなりがちです。
クラウドの普及
クラウド技術の進化と普及により、企業は自社のITインフラを保有する必要が低くなり、それに伴いSIerへの依存度も低下しています。特に、AWSやGoogle Cloudなどの大手クラウドサービスが提供する豊富なサービスを利用することで、企業は自身でシステムを構築・運用することが可能となってきています。
日本特有のビジネスでグローバル展開が見込めない
多くのSIerが国内特化型のビジネスを展開しており、そのサービス内容が他国で通用しないケースが多いです。たとえば、日本独自の業界規制やビジネス慣行に対応したシステムを提供しているSIerは、そのサービスを海外で提供する際には、新たな市場環境への適応が必要となり、そのためのコストや時間が大きくなります。また、言語の壁や文化の違いも、海外展開を難しくしています。
SIer自体の将来性は明るいと言われる理由とは
SIerが抱える課題について詳しく説明しましたが、それだけではシステムインテグレータの全体像を把握することはできません。業界の困難な状況を語る一方で、一部ではSIerの将来性は明るいという声も存在します。では、その明るさの源泉とは何なのでしょうか。ここでは、SIerの存在価値が続く理由と、その将来性を支える要素について深堀りしていきます。
DXの需要が拡大しており、案件が豊富
デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要の高まりに伴い、企業がITを活用してビジネスを改革するニーズが増えています。この流れは、SIerが新たなビジネスチャンスを掴む大きな機会を提供しています。例えば、AIやIoTを活用した新サービスの開発や、ビジネスプロセスの自動化など、高度なITスキルを必要とするプロジェクトが増えています。
大規模システムのクラウド化は難しく、SIer依存せざるを得ない
クラウドの普及は確かに進んでいますが、それでも全てをクラウドに移行するわけにはいかない企業も少なくありません。既存の大規模システムをクラウドに移行する際には、システムの特性を理解し、適切なクラウドサービスを選定し、移行計画を立てるなど、複雑な作業が必要です。これらの業務はSIerの役割となり、SIerへの依存度が高まります。
官公庁・金融機関など大型案件はなくならない
官公庁や金融機関などの大規模なITシステムを開発・運用する案件は、引き続きSIerの重要なビジネスとなります。これらの組織では、高いセキュリティや信頼性が求められるため、専門的な知識と経験を持つSIerが必要とされます。これらの案件は大規模で長期間にわたるため、安定した収益をSIerにもたらします。
SIer所属エンジニアが将来を見据えて取り組みたいこと
今のSIerの状況や将来性を考慮に入れると、SIerに所属するエンジニアが自身のキャリアをどのように設計し、何に取り組むべきかという問いは一層重要性を増してきます。以下に、SIerのエンジニアが将来を見据えて取り組みたいと考えるべき点を幾つか挙げてみましょう。
そもそも転職をする目的やキャリアプランを考える
自身のキャリアを進めていくにあたって、何を目指し、何を得たいのかを明確にすることが大切です。その上で、現在の職場で得られる経験やスキルが将来の目標にどのように寄与するのかを考えることで、自身のキャリアプランをより具体的に描くことができます。
ポートフォリオを作成する
自身の経験やスキルを整理し、それを可視化することは、自己理解と自己表現のための重要なステップです。具体的には、参加したプロジェクトや担当した役割、達成した成果などをまとめてポートフォリオとして整理することをおすすめします。
友人や他社エンジニアの話を聞く・イベントに参加する
自身の視野を広げるために、他のエンジニアの経験や知識を学ぶことも有効です。友人や他社のエンジニアと話をすること、さまざまな業界イベントに参加することで新たな視点や情報を得ることができます。
エージェントや転職サイトを活用して具体的な転職先を参照する
キャリアの選択肢を広げるためには、現在の市場状況や他社の求人情報をチェックすることも重要です。転職エージェントや転職サイトを活用して、自身のスキルや経験がどのような職場で求められているのか、どのようなキャリアパスが可能なのかを調査することをおすすめします。
SIer所属エンジニアが将来を見据えて習得しておきたいスキル
SIer所属のエンジニアがキャリアを進めていくためには、現在所持しているスキルだけでなく、将来的に必要となるスキルを予測し、それを習得していくことが重要です。これらのスキルは、転職や昇進、さらにはより多様なプロジェクトに参加するための基盤となります。では、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。以下にいくつかの重要なスキルを挙げていきます。
上流工程から下流までの開発経験
全体のシステム開発ライフサイクルを理解するためには、上流工程(要件定義や設計)から下流工程(実装やテスト、運用・保守)まで、幅広い工程での経験が求められます。これは、プロジェクト全体の視野を持つためにも必要なスキルで、より高度なポジションへの道を開きます。
仮想化対応
クラウド化が進む現在、仮想化技術を理解し、それに対応するスキルが求められます。具体的には、AWSやAzure、GCPなどの各種クラウドサービスを利用したシステム開発や運用ができる能力が必要となります。
AI、機械学習のスキル
AIや機械学習は現代のIT業界で非常に注目されており、これらのテクノロジーを活用した開発が行われる機会も増えています。この領域のスキルを習得することで、より先進的なプロジェクトに参画する機会が増えるでしょう。
データ基盤・分析スキル
データは現代ビジネスの原動力と言われています。そのため、データ基盤の構築やデータ分析のスキルも非常に重要となっています。これには、データベースの設計や運用、そしてデータ分析ツールの利用方法などが含まれます。
プロジェクトマネジメントスキル
エンジニアとしてだけでなく、プロジェクト全体を管理し、人を指導する能力も重要なスキルです。これは、スケジュール管理やリスク管理、チームメンバーとのコミュニケーションなど、プロジェクトを円滑に進めるためのスキルを含みます。
エンジニアがSIerを辞める際に検討したい職種とは
エンジニアがSIerを辞める場合、その後のキャリアパスは非常に広がりがあります。エンジニアが持っているスキルや経験、そして興味や目指すキャリアパスによって、最適な選択肢は大きく変わるかもしれません。ここでは、SIerを辞める際に検討したい幾つかの職種を紹介します。
Web系のエンジニア
Web系のエンジニアは、ウェブサイトやウェブアプリケーションの設計、開発、運用を行います。フロントエンド、バックエンド、フルスタックなど、専門分野により様々なポジションがあります。直接製品やサービスを開発する立場となり、自身のアウトプットが直接ユーザーに影響を与えることから、大きな達成感を得られます。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、システムの基盤となるサーバーやネットワークなどの設計、構築、運用を担当します。近年ではクラウド化が進み、AWSやAzureなどのクラウドサービスの専門知識を持つことが求められることが多いです。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、企業のIT戦略の立案やシステム導入の支援を行います。深いIT知識とビジネス理解が求められ、様々な業界や業務プロセスを理解する機会が多いため、幅広い視野を身につけることができます。
Webディレクター
Webディレクターは、ウェブサイトやウェブサービスの企画、制作、運用を行います。エンジニアリングのスキルだけでなく、デザインやマーケティングの知識も求められるため、多岐に渡るスキルを活かすことができます。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、ITプロジェクトの全体を管理し、進行する役割を担います。高い技術力だけでなく、プロジェクトを適切に進行させるためのマネジメント能力やコミュニケーションスキルが求められます。
セールスエンジニア
セールスエンジニアは、技術的な知識を元に製品の販売や顧客サポートを行います。エンジニアリングスキルと営業スキルを同時に活かすことができ、顧客と直接対話する機会が多いです。
社内SE
社内SEは、特定の企業内でITシステムの設計、開発、導入、運用等を担当します。一つの組織内での業務となるため、深く業務プロセスを理解し、ITでの改善提案等を行うことが求められます。
フリーランスエンジニア
フリーランスのエンジニアとして活動することで、自由な働き方や多様なプロジェクトへの参加が可能となります。一方で、自己管理能力や営業スキルも必要となるため、これらのスキルを磨くことも重要です。
まとめ
この記事では、システムインテグレーション(SIer)の現状、課題、そして将来性について探りました。SIerの課題としては、開発スキルの習得難度やグローバル展開の難しさが挙げられます。しかしながら、DXの需要増大や大型案件の存在など、SIerが必要とされる状況も多いです。これらを踏まえた上で、SIer所属エンジニアはキャリアプランの明確化、スキルアップ、そして可能ならば幅広い職種への展望を持つことが求められてくると言えるでしょう。
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